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はじまりは出かせぎ!田舎暮らしでする「8つのしごと」その①

1 カフェのしごと
2 はたけのしごと
3 田んぼのしごと
4 季節のしごと
5 金つぎのしごと
6 こどもキャンプのしごと
7 クリエイターのしごと
8 お金がするしごと(番外編)

山で暮らして4年ほどのあいだに、わたしのしごとは8つになりました。
まだ生まれたばかりのしごと・街で暮らしていたときから地味につづいているしごと・世界的な病が理由で一時的におやすみしているしごともありますが、これからさらに増えるかもしれないし、減るかもしれないしごと。

今回はそのきっかけとなった物語を綴ります。

「しごと」って何だろう?

街で暮らしていたころ、わたしはバスや電車をのりつぎ、片道1時間以上かけて通勤しながら、月曜から金曜まで(ときには休日も)事務系のしごとをしていました。

わたしにとって通勤は、しごとをする前と後に必ずついてくる〈つらいしごと〉でした。

いわゆる9時〜5時のしごとでしたが、終電まで残業つづきの時期があって、いねむりしては乗り過ごし、疲れ果ててタクシーで帰宅するという日々もありました。

数年ごとの異動がある度に、新しいしごとと人間関係にむきあいながら、ときには楽しい、ときには苦い経験をコツコツつみました。
気がつけば28年も。。。

わたしなりにがんばった!と自信をもって言えるひとつの時代です。

「しごと」=「お金」

そのころのわたしの中での「しごと」とは、決められた時間に行かなければならない場所へ行き、【生活するために必要なお金と労働を交換するための手段】でしかなかったと思います。

やってみたい好きなことをしごとにするのではなく、お給料や福利厚生などの条件で選んだのです。
しごととはそういうもの。
みんなそうやって生きている。
おとなってそういうものなんだ。。。
わたしのちいさな世界では、それがふつうでした。

ひとり親家庭で育った環境が、経済的にはやく自立しなければならない状況をつくったのは事実です。

なんだかおもしろそうという理由で、美大に進学したいと母に話したことがありました。
「うちにはそんなお金がないから行かせてあげられない。まずは働いてお金をためて、そのあと本当に行きたかったら自分でどうにかしてほしい。」と泣かれたのを今でも覚えています。

結果的に、そのときの選択のおかげでお金を手にいれ、多くのモノや経験と交換することができました。
じぶんをよろこばせ、ときには人をよろこばせることができるお金があるって、べんりでいいなぁと思いました。


「しごと」=「お金」ではない?

母が亡くなったことをきっかけに早期退職していたわたしは、長いあいだ憧れていた〈通勤しなくていい〉暮らしを満喫していました。

そんなある日、ふと見たスマホの画面にうつった文字が、わたしの心を踊らせたのです!

「400年の歴史がある幻のお茶をつくるしごとのお手伝いをしませんか?」

幻のお茶の名前は初めて聞いたし、屋外作業の経験はないし、夏の猛暑に耐える体力の自信はないし、知らない土地で知らない人と寮生活って不安しかない。。。。
行ったことはないけど、甥っ子がその村に住んでるから、なんとなく親近感があるようなないような。。。 

「でもやってみたい!」
「なんだかおもしろそう!」
「ここによばれている気がする!」

そんな自分の直感と、年齢・性別・経験不問という言葉を信じて。
応募したあとに1000円ほどの時給をいただけることに気づいて、お金を優先していなかった自分におどろきました!

わたしの中の「しごと」=「お金」が変わりはじめた瞬間でした。


なにもかもがはじめて

無事に採用されたわたしはうれしくてしかたなくて、興奮気味に(でもおそるおそる)友だちに報告していました。

「えっ!!!!!!
48歳を目前に、ひとり見知らぬ田舎へ出稼ぎにいく?肉体労働?寮生活?
えらい思い切ったことするね。。。
だいじょうぶ?」

「おもしろそうなことさせてもらえて、おまけにお金までいただける。まずは行ってみて、ムリだったら帰ってくればいい。(ほんとはダメだけど)たぶんだいじょうぶ!」

そう言って笑ってました。
人生初の出かせぎのしごと
何かがかわる予感とともに、その日をまちました。


↑南米のマテ茶〈しごと仲間の私物〉
しごとのあいまのいっぷく

はたして結果は。。。
だいじょうぶでした(笑)


国内・海外から集まった10人の個性豊かすぎる仲間とともに、幻のお茶づくり。

はじめて会う人たちと、はじめてのしごとをともにして、はじめての土地でともに暮らす。
新しくて清潔な個室が用意されていたので、快適にひとり時間を確保できたり、共有スペースで自炊しておかずをシェアしたり、自由に使っていい車1台を休みの日にシェアしながら出かけたり、落語好きな仲間に落語講座を開いてもらったり、想像以上に充実した日々をすごせました。

幻のお茶は、自然の力だけを使って2回発酵させる製法で、この作り方を見つけた昔の人はすごすぎる!とおどろくことばかりでした。栄養があって、個性的な味わい。完成するまでの工程が多くて時間もかかるので、高値で販売される理由が実感できました。

〈興味深い工程はこちら〉

茶畑で茶葉を枝ごと刈る
枝を集めてギューギューにつめこんだ重たい袋を作業場まで運ぶ(汗ダク)

全身ずぶぬれになって枝つきの葉を山水で洗う(びちょびちょ)

大木の丸太のような大きな鍋に投入(こちらもびちょびちょ)

鍋をクレーンでもちあげて大釜で蒸す(炎マックス激アツ)

蒸し上がったアッツアツのかたまりから枝や実などをとりのぞく葉の選別
(立ちのぼる湯気で顔と指が激アツ)

「むろ」とよばれる部屋(古民家の一室)に葉をつんでいく

部屋がいっぱいになるまでくりかえし
※1回目の発酵をまつ

〈さらに工程はつづき〉

「むろ」から出す
枝などをとりのぞく葉の選別2回目(においキツめ)

樽にギューギューにつめて密閉する
※2回目の発酵をまつ

樽から出す(におい強烈)
葉のかたまりを専用の道具で3センチ角に切る
樽に戻して保管する
※熟成をまつ

熟成がおわった真っ黒の葉のかたまりを少しずつ樽から出す(酸っぱい漬物みたいなにおい)
3センチ角✕厚み1センチ分を指でつまんで網にならべていく
(はてしないチマチマ作業)

昼は天日干し
雨がふってきたら急いで室内へ移動
夜は室内に移動して保管

裏も天日干しするため、ひとつずつ指でつまんでひっくり返す
(またもやチマチマ)

網からはずしてシートの上でさらに天日干し

袋づめして完成!
わたしたちはここまで。
各製品のパッケージは別作業

書き出すと長い!!!

天気と発酵の具合を見ながら、茶葉がとれるかぎり、すべてを手作業でくりかえす6〜9月の季節しごと。

そのうちの2ヶ月間、いちばん暑い時期に、最後までやりきれた経験は大きな自信になりました。

最初は知らない人だった仲間たちと、ゆったりとした時間の流れる雄大な自然のおかげです。

日々のしごとがおわって、ひぐらしが鳴く夕方に、空気が涼しくなって川霧がたちのぼる風景を見ながら、風にふかれる帰り道。

こんなきもちのいいしごとがあるんだなぁと、わたしの中に変化をもたらしてくれました。

そしてまかれた「たね」

滞在しているあいだにいくつかの素敵な出会いがあり、わたしの今につながる「たね」をまくことができたのです。

そのときは気づかなかった「たね」

その物語はまたこんど。。。

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