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「ダイヤモンド社での仕事」2年目

昨年に続き、2年目の仕事をまとめます。

まとめとかないと、「そのとき、どう考えたか」を忘れるからです。
作っているときの苦労は、喉元すぎたら熱さを忘れるように、消え去ります。
そして次の本に取り掛かり、同じような苦労を繰り返します…

ということで。作った本は下記の3冊。順番に振り返ります。

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1冊目 『1%の努力』 ひろゆき・著
・ブックデザイン:杉山健太郎
・撮影:榊智朗
・44万部 突破
・ひろゆきさんと『サードドア』の話をしていて、「そういえば、ひろゆきさんの原点ってなんでしたっけ?」という話になり、時系列で生い立ちから今をまとめることになった
・ファンが多いので一定層は売れる。なので、「できるだけ長く売れるにはどうすればいいのか」「今後、ひろゆきさんのことを知った人が1冊目に選ぶにはどうすべきか」を考えて編集した。時事ネタはすぐに古びるので、すべて削った
・「ラクして成功している人」というイメージがあるので、それを逆手にとって「1%の努力」と、ポジティブな言葉に言い換えた
・どうしても秋葉原の印象的な背景で写真を撮りたかったので、正月にゲリラ的に撮影をした
・本書の中で気に入っているのが、「エッグスタンドなんていらなくない?」「あなたにとって大きな岩は何か?」というエピソード。各章、印象的で普遍的なエピソードを1つ目立たせた。必ず1つの話が頭に残った状態で、次の章へと読み進められると思う

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2冊目 『ストレスフリー超大全』 樺沢紫苑・著
・ブックデザイン:tobufune
・イラスト:meppelestatt
・25万部 突破
・樺沢先生にとっては、『アウトプット大全』『インプット大全』という大ベストセラーを生んだ後の本。なので、そのシリーズを最大限リスペクトしつつ、「精神科医」という別の側面をメイン据えることにした
・「ストレスフリー」という言葉は、こちらから提案した。売れている類書はなかったが、日常会話でも聞くようになった言葉なので、「イケる」と踏んだ
・作っている最中、どうしても『アウトプット大全』の存在が頭によぎるので、イラストをゆるくしたり、判型を大きくしたり、文章のテンションを変えたり(キツい言い回しは削った)、帯コピーに共感性を持たせたりした。男女比が「4:6」なのは、樺沢先生の本には珍しい結果となったので、新しい読者にアプローチできたかもしれない
・「ストレス」というと、脳科学的に脳内で何が起こっているのかなど、難しい話から入りがち。でも、この本では、難しい解説はなくした。かなり敷居低く読み始められると思う
・「コロナ禍にちょうどいいテーマですね」と言われることが多いが、これは完全に運によるもの。企画のスタートは2018年なので、タイミングがよかったとしか言いようがない。(たまにこういうことが起こるので、出版はギャンブルと言われるんだろうか…)

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3冊目 『リーダーの仮面』 安藤広大・著
・ブックデザイン:山之口正和(OKIKATA)
・29万部 突破
・「識学」という組織マネジメントの解決法を知ったとき、まわりでよく聞いていたマネジャー1年目の悩みとが結びつき、企画がスタート
この面白さは、なんだろう。どう伝えれば広まるだろう。そう考えて、「仮面」というキーワードにたどり着いた。マネジャーとして悩んでいる人は、みんな優秀でいい人が多い。そこに「仮面」という解決法がうまく入り込むなと思った
・とはいえ、僕自身、マネジャー経験ゼロなので、編集にかなり時間がかかった。『ダークサイド・スキル』『「ついていきたい」と思われるリーダーになる51の考え方』『他者と働く』『1兆ドルコーチ』など、売れている類書をちゃんと読みながら、腑に落ちるポイントを探っていった
・マネジメントの話だけど、「道路交通法」「高い山」「マンモス狩り」「レストラン」など、たとえ話の妙を各章1つ入れ込んだのが大きなポイント

2年目を終えてみて…

この1年は、「ここ3〜4年間でうまくいったことの再現性を高めること」に重きを置いた。
タイトル、帯コピー、はじめに、目次、太字、図版、各章の書き出し、イラスト、各章のシメの言葉、おわりに、まで、すべてに「意図」を持たせた。

もちろん、「1%」「ストレスフリー」「仮面」という言葉のニュアンスがよいかどうかは、感覚によるのが大きい。でも、その感覚の部分は残しつつ、まわりに配置する言葉とか、全体のバランスは、できるだけ言葉で説明できて再現できるようにした。

あと、小さなこだわりは、「空白を作らないこと」。パッと開いたときに、白ページがあったり、文章が2〜3行で終わっているページがあると、なんとなく「手を抜いているのかな?」と思ってしまうので、ちゃんと文字で埋めるようにした。

類書の勘所についても、よく考えた。
売れている類書をイメージするときに、「今ちょうどベストセラーになっている本」は思考の邪魔になってくる。引っ張られすぎてしまうのだ。

おすすめは、5〜6年前に売れた本を意識すること。
それらの本は、ちょうど棚から消えたタイミングで、ぽっかり空いている。その空白が書店に行ったときに見えると、とても強みになる。

ということで…

社内からは、毎月ベストセラーが出ている。ロングセラーもたくさんあり、それらがコロナ禍を乗り切る土台になった。

そういう状況を目の当たりにしたのは、とても刺激になった。
目先のことを考えると、「発売1ヶ月だけファンに売れればいい」「売れ行きが落ちたら文庫にしてもう一度稼げばいい」と考えがちだけど、長期的な視点を持って編集しないと、いざ、環境の変化があったときに生き残れないなと思った。

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