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おばあちゃん家とアジール

『手づくりのアジール』 青木真兵 著

紹介したいのは、左の方

ちなみに右の本もすごかった。
たぶん非売品。図書館のみに存在する郷土愛のかたまりのような本。

『手づくりのアジール』は、
たこ八さんが、たまたま図書館で借りてきた本だった。

わが家は6人家族で、末っ子の図書カードこそつくっていないが、5人分一人10冊の本を選んで帰ってくると、なかなかな量である。

むすめたちは絵本


わたしとたこ八さんは、興味の対象がけっこう違う。
わたしは料理と児童文学、たこ八さんは、ノンフィクションが好きで、歴史から宗教、はたまた仁義なき戦いを彷彿とさせる真っ黒な表紙の本まで、この本、何コーナーにいったら出会えるんだ?という代物を選んでくる。
人が選ぶ本を眺めるというのもなかなか面白く、家に帰宅してから手提げ袋を開く時間は、まさに至福の時間である。

たこ八さんが、
「これ、おもしろかったよ。」
と勧めてくれる本は、たいてい読まない。
さっき言ったように、そもそもの興味対象が違うから。
でも、その本は読んでみようと思った。
聞き慣れない『アジール』という言葉に興味がわいた。
青木真兵さんと言う方も知らなかったし、人文学なんて、少しも今まで出会ったことのない分野だったけど、難しい言葉をゆっくり、わたしなりにかみ砕き、読んでみた。
難しくて、なかなか理解できないとこもあって、それはゆっくりまた冬に読み返したい。読んでいるうち、なぜか、たまらなく胸が苦しくなった。

『アジール』とは『避難場所』だ。
青木真兵さんと、奥さんは、山村に移住し、家をひらき、図書館を運営しながら研究をつづけている。
そこには、親戚やなんかのしがらみはないけど、深い土着がある。社会の輪という、ときどきひどく息のつまるようなものから逃げながら、人間としてのまっすぐな生きかたを太く濃く貫きたいと、手さぐりで探求していく強さを感じた。

山村に移住、うちと一緒だ。

わたしは、小さい頃から家出を繰り返していた。

https://note.com/tanehachi/n/n4f5ec02a066d

たまらなく、衝動的に今いる場所から逃げたくなり、苦しくて。
そんなとき、いつもおばあちゃんの家を思い浮かべていた。
小さな商売、自分の体で土と草と葛藤し野菜を育てていた。
でもその場所は、今はなく、わたしはぷらんと、なにか大事なものをなくしてしまった心地でいた。
そして、なぜかわからないままに、今までおばあちゃんの家をつくろうと奮闘してきた。
自分自身、どうしておばあちゃんの家をつくりたかったのか本当にわからなかった。
だってそれが完成したって、おばあちゃんもおじいちゃんも、もういないんだから。

でもこの本をよんで、今まで言葉にできなかった自分の気持ちを、あらためて知ることができた。
わたしにとって、おばあちゃんの家はアジールだったんだな。
そして、自分にとって必要なアジールを、自分自身でつくりたかったし、誰かにとっても避難場所になりえる場所を、ひらきたかったんだ。

今年、このタイミングで、この本に出会えて本当によかった。




#読書の秋2022


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