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作り置きが出来ない。

 先日、とあるブックカフェへ行き、一冊の本に出会った。
 阿古真理さんの"料理に対する「ねばならない」を捨てたら、うつの自分を受け入れられた"だ。
 途中までしか読んでいないのだけれど、これは自分を客観的に見る為の本だなぁ、と、とても興味深く読んだ。

 私は結婚してから、食費だけは自分で管理している。多いか少ないかは分からないけれど、一ヶ月二万五千円が我が家の食費だ。
 大体、数千円は余るのだけれど、それは次の月に繰り越している。

 これを読んで下さっている方は、晩御飯の献立をどの様に決めているだろうか?
 例えば、その日その日で献立を考え、買い物に行く人もいれば、数日分を考えて、まとめ買いをする人もいるだろう。
 私は後者で、金曜日辺りに一週間分の献立を考えて、土日でまとめて買い物をしている。
 私は機転を利かせる事が出来ないタイプだ。何事もキッチリ、カッチリ決まっていないと、混乱して何も手につかなくなる。だから、このやり方に決めた。

 とは言え、一週間分の献立を決めるのは、かなり頭を使う。この日は豚肉メインだから、次の日は違う肉を使わなきゃ、とか、この日は味が濃い物がメインだから副菜はさっぱりした物にしなければ、とか。考える事は山の様にある。

 でも、基本的には土井善晴先生の「一汁一菜」をお手本にしている。汁物に具材が沢山入っていれば、それはもうおかずとして成り立つ、と言う物。
 これを知ってから、二品作らなきゃ……!と言う強迫観念の様な物はなくなった。
 それでも、材料が中途半端に余って、且つ時間に余裕がある時は簡単に二品目を作って出す事もあるけれど。

 さて、ここでタイトルのお話をしようと思う。私は作り置きが出来ない。
 私は月に一回、実家近くの病院に通院していて、その日は実家に泊まる事にしている。そして帰る日も実家で夕飯を食べてから帰る。つまり二日分の食事を作っていかなければならないのだ。
 夫は自分で適当に何か作るよ、と言うけれど、仕事で疲れているのに何か作らせるなんて可哀想で、いたたまれない。
 だから二品だけ作る事にしているのだけれど、これは何度やっても慣れない。作り終わる頃には頭痛がしてくるのだ。
 今日食べる物を作りながら、明日、明後日食べる物を同時並行で作る。レシピアプリを見ながら、二口コンロをフルに使い、レンジも後ろでピーピー鳴ってる。私は上手く物事を考え、組み立てて作業するのが、うつ病になってから衰えたと思う。
 気付けば時計は二十一時半とかになっていて、お風呂に入ったら、もう自由時間なんてなく、お泊まりグッズを急いで鞄に詰めて、睡眠薬を飲んで、眠る。

 でも、唯一救われるのは、夫が何を出しても喜んで食べてくれると言う事だ。
 一時期話題になった「おかずの素を使った料理なんて料理じゃない」みたいな論争があったのはご存知だろうか。
 私はそれに関連するツイートや記事を読んで、とても気分を害した。
 専業主婦だから、時間があるから、一から作れと言うのも分からないでもない。でも、専業主婦が皆が皆、料理が好きでも、得意な訳でもない。それでも、必死に献立を考えて工夫している。
 それがある事によって料理を作ると言う行為が飛躍的に楽になるのなら、レパートリーが増えるのなら、私達の様な、料理別に好きじゃないマンは積極的に取り入れていくべきだと思う。じゃなきゃ、何も作れなくなって、それこそ食べる物がなくなる。
 それと、「レシピアプリを見ないと作れないのは作れた内に入らない」と言っていた専業主婦の方が私の身近にいたのだけれど、そもそもの考え方が違うなぁと思う。
 確かに頭の中にレシピがあって、それをスラスラ作れる人は凄いし、憧れる。でも、それって限界がありませんか?何種類覚えてますか?
 私は自分が食べる、と言う点においても、マンネリ化したくないので、レシピアプリをガンガン使っている。
 話は戻るが、夫の実家では、いつも煮物かコロッケばかりが出て来ていたそうで、「毎日違う物が食べられるのが嬉しい」と言っていた。なので、不器用な方法かも知れないけれど、私はこのやり方で暫く行きたいと思っている。

「ねばならない」って、自分だけが作り上げた物だけじゃなくて、自分の身近な人や、それこそネット上の無責任な記事や発言からも影響を受けているのだと思う。
 でも、キッチンは戦場だ。他人のネガティヴな言葉に惑わされている暇なんてない。
 私は目の前にいる人が美味しいと言ってくれる物を作る。例えそれが田舎臭い料理だったとしても。手が込んでいなくても。
 二人が美味しかったね、と言えればそれでいいのだ。
 まだまだ、「ねばならない」に右往左往している私がいるけれど、このご時世、料理に強い味方がいる事も確かだ。私はそれを上手く活用し、頼りながら、今日もご飯を作り、夫の帰りを待つ。

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