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幸運の鯨/『竜とそばかすの姫』を視聴して

先日、職場にも休みを融通してもらって立てた予定が、まさかの無くなるというなんともショッキングな出来事を経験しました。
しかも、その予定が無いと知らされたのは、当日。予定時刻10分前……。そんなことってあります?

もちろん、友人とルンルンで予定に合わせて車を走らせて、到着するところでした。

電話:「昨日の時点で中止にしていたのに、私の連絡ミスでお二人(私と友人)にだけ、連絡が行き届きませんでした」

え!?そんなことってあります?

脳の整理が追いつかず、思考停止状態。

でも、せっかく融通してもらってまでとった休みなんですよ。私は絶対に無駄にしてはいけない。
その使命感で振り絞って出した答えが、「そうだ、映画をみよう!」でした(笑)

このご時世、何も気にせずに出かけられるところといったら、美術館か映画館くらいしか、私には思い浮かびませんでした。

そして今回私たちが選んだのが、細田守監督の「竜とそばかすの姫」。ずっと気になってたんですよね。

お陰様で無事に映画を楽しみ「あっぶな〜い、私たちこの映画見逃すとこだったんだね〜、予定無くなってくれて良かったよね〜」負け惜しみにも似た本音を言い合いました。

不運も幸運も捉え方次第、ですよね!

今回はその感想を考察を交えてお伝えします。


「竜とそばかすの姫」あらすじ

女子高校生・内藤鈴(すず)は、母と一緒に歌うことが何よりも大好きだったが、母の死をきっかけに、歌うことができなくなっていた。
曲を作ることだけが生きる糧となっていたある日、親友に誘われ、全世界で50億人以上が集うインターネット上の仮想世界ユーに参加することに。歌えないはずのすずだったが、「ベル」と名付けたAsアズ(仮想世界の中の自分)としては自然と歌うことができた。ベルの歌は瞬く間に話題となり、歌姫として世界中の人気者になっていく。
現実世界の片隅に生きるすずの声は、たった一人の「誰か」に届くのか。
二つの世界がひとつになる時、奇跡が生まれる。
 (公式サイトより一部抜粋)

細田守監督作品と鯨について

歌姫ベルが冒頭から美声を響かせるシーンが私にはとても印象的でした。Uユウの、なんだこれは!?という世界観と、ベルの独特なテンポの歌に引き込まれずにはいられません。そのシーンで、ベルはスピーカーのついた鯨に乗って登場します。

ん?またくじら

と思ったの、私だけじゃないはず!

というのも、細田守監督作品には度々鯨が登場します。その中でも「バケモノの子」では、物語に鯨が深く絡んでいて印象的でした。

バケモノの子では、一郎彦(バケモノに育てられた人間の子供)が自分自身の闇に飲み込まれ、鯨に姿を変えて、人間界で暴れ回ります。しかもこれ、主人公の九太が熱心に読んでいた小説の「白鯨」はくげいが伏線になっているんです。その小説では、白い鯨が人間を襲ったことから"悪魔の化身"と称されます。妬み、恨み、寂しさ、恐怖。人間誰しもが抱える闇と、小説の中の人間を襲った白い鯨をリンクさせて表現されているようでした。

では、今回の鯨はどんな意味を持つのでしょうか?

私の記憶上、今回はすずの生きる現実世界で、鯨に関する伏線はありませんでした。ただ、鯨について調べてみると"幸運の使者"と呼ばれる白い鯨がいることがわかりました。
なんでもオーストラリアで発見されたその白い鯨は、見た目の珍しさから、その姿をみることができたら幸運だと言われているそうです。

うーん、同じ白い鯨でも一方は悪魔の化身で、一方は幸運の使者だなんて、なんだか皮肉なものですね。

今回の鯨はもしかしたら、この幸運の使者と重ね合わせているのでは……。深読みしすぎかもしれませんが、そんな風にも考えられますよね?

クジラは海の中で声を出していると言われていますし、人間と一緒でお腹の中で赤ちゃんを育てる哺乳類です。思わず目を奪われる迫力もあります。こんな魅力的な生き物を作品に入れ込む細田監督はさすがです。

真相はわかりませんが、「バケモノの子」では闇と重ね合わせた鯨を「竜とそばかすの姫」では、ベルのあふれるような自信と重ね合わせている。
そのことは間違いなさそうです。

こう考えると、バケモノの子すら伏線になっている気がしてきました……。

どんな人も自信の裏には、少なからず闇のような感情が潜んでいたりして、対局のように見えて紙一重ですよね。

もうひとつの現実。もうひとりの自分。

仮想世界のUユウは、もうひとつの現実。その中で生きるAsアズは、もうひとりの自分。ふたつの世界で、すずが巻き起こす奇跡に、最後は涙がとまりませんでした。

もうひとつの現実と聞いて、連想されるのがSNSですよね。SNS上の誹謗中傷。そこから発展した、悲しい事件に胸が痛んだことも思い出されます。

つい最近、友人のSNS上のアカウントが消えていて、別のツールで連絡しても返答がなく、私自身とっても焦ったんです。学生時代から何度も遊ぶ仲で、大切な友人です。ただ、その友人の電話番号すら知らないことに今さら気が付き、愕然としました。

その友人からは、時間が経ってから間抜けな返事がきて安堵しましたが。

大切に思っていたはずの相手との連絡手段は、すごく脆くて、相手から一方的に遮断されてしまえば、相手が生きているかどうかも分からない。そのことに助けられる一面もありますが、私にとってそれは虚しくて、恐怖にすら感じました。

SNS上のアカウントはいくつ作れても、連絡を取り合っているその相手はたったひとり。まさにその、“たったひとり”との繋がりについて考えさせられる作品でした。


幸運も不運も。自信も闇も。現実もSNSも。
すべて相反するように見えて紙一重で、どちらをどうやって手繰り寄せるかは、自分次第。

「竜とそばかすの姫」から、私はそんなことを思いました。
映画観た方は、ぜひ感想を教えてくださいね!観てない方も、反応頂けると喜びます!


最後まで読んで頂き、ありがとうございました(^^)



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