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映画「花束みたいな恋をした」今頃考察してみた~中編、後編

前回、主人公である「麦」と価値観の相違に
よりすれ違いが生じた「絹」の関係性を、
今衰退していきつつある業界と陽の目を
見ない役者との関連を
織り交ぜながら考察してみた。

はな恋は麦と絹がカルチャー作品を通じて
惹かれ合う(設定)
麦の就職により会社で働くという
外的葛藤と成長しなければ社会に
取り残されるという内的葛藤が生じ、
話が(展開)されていく。

就職により麦はカルチャーへの態度が一変
している。
映画の脚本としては非常に分かり易い展開
ではある。俳優を続けたいなら最低でも
この辺りはしっかり押さえて欲しい。

さて、麦の変化した価値観が分かるシーン
として「2017年夏ごろのシーン」の
麦の本棚に着目したい。
そこで登場する本をいくつか紹介する。

「20代のノートー失敗して、
恥をかいて、苦しみながら、つかみ取った
31の「成長法則」吉山勇樹
(WAVE出版、2011年)

「お客様に何を言われても切り返す
魔法の営業トーク100」小林一光
(KADOKAWA/中経出版、2012年)

「最強の働き方 世界中の上司に怒られ、
凄すぎる部下・同僚に学んだ
77の教訓」ムーギー・キム
(東洋経済新報社、2016年)

「超一流の雑談力」安田正
(文響社、2015年)

「20代で身につけるべき「本当の教養」
を教えよう。」千田琢哉
(学研プラス、2016年)

「「言葉にできる」は武器になる。」
梅田悟司(日本経済新聞出版、2016年)

これらの並びから読み取れるのは社会人として
一流の営業マンになるための
「焦燥感」である。エンタメの世界の
端くれにいる身としては心が痛む話だが、
現実はそうである。
20歳を超えて、エンタメと社会人として
生きていくための「教養」との区別が
できているかどうか。ここが
出来ていない奴がSNS上で跋扈する。
エンタメの世界でも映画俳優であれ、
アイドルであれ、舞台俳優であれ、
「金銭的対価」を得ていない人間、
それで光熱費や家賃や食費を払えない人間は
「就職」すべきだと私も思う。

敢えて払わない奴が多いのもエンタメの
世界ではいる事はいるが。

さて、上記の本の中から一つ注目する
文章があったのでいくつか取り上げて
おく。麦は明らかにカルチャーより
教養へとベクトルが向いているのは
書いた。その点を踏まえて見て欲しい。

「教養は若い頃に身につければ身につけるほど、将来のリターンが大きい。」

「緻密な計算に基づいて金融商品に投資する
よりも、教養に時間とお金を投資したほう
が儲かるくらいだ。」

と教養とビジネスの「親和性」を強調する。
一方でカルチャーについて

「美術や音楽は、関連の映画1本鑑賞しておく」
「1本の映画を鑑賞しておくだけで、
パーティー会場などで専門家に話を振られても、ひるまずに喰らいついていけるものだ」

就職前まで人生の生きがいとしてきた分野が
社会で会う人と話を合わせるだけの「ツール」
として取り扱われる現実世界に麦は
どう思ったのか?
併せてこの読者の中で
22歳を超えてまだ「自称俳優」として、
認知度もない人間は何を感じるのか?
自問自答してもいいのではないだろうか。
麦の気持ちになって。

ここからは後編に入る。
その後のシーンでは、クリスマスに絹と渋谷の
ミニシアターで「希望のかなた」を観るも
内容が全く頭に入らない様子が描かれている。

私は、
ビジネス書的な価値観を受け入れざるを
得なくなった麦は、フィンランド出身の監督
が難民問題をテーマにした映画を
「ビジネスに役に立たない」と判断したと
捉える。

以上いかがであろうか。繰り返しになるが、
大学を卒業する年齢で知名度も認知度もSNSの
フォロワーも万以上ないエンタメ系の人間は、
「就職」して安定した地位を得る事を勧める。
頑張ってますアピールや
SNSで承認欲求を満たす行為
(自撮り、役者募集系、WSなど)、
クラウドファンディングなどははっきりと言う、そこから食えるようになる事はまず、ない。
就職をして、貯金をし、堅実な生活こそ
心技体が充実する。
後は、もちろん身体を鍛える事に
注力すべきである。

説教臭くなったが最後にでは
結局「花束みたいな恋をした」は
どんな話なのか。3行にまとめて終わりとする。

「人生の糧であるカルチャーが好きだった麦が
社会に出て就職することでカルチャーより教養の方が大事だという現実を受け入れた物語。」

甘酸っぱい恋愛物語ではなく、
社会での生きづらさを描いた物語。
トムクルーズならともかく邦画を2時間観るのは
キツい時代に入った。

エンタメ業界は本当にこのまま
衰退していくのか?
就職した自分は側から見届けたい。




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