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男は若いのにウンチクばかりだった。いちばん得意なのはアメリカの昔の映画の話で、なんといっ…
大学に入ることができたカナタは高校の知り合いたち全員と離れることができ、大学で先輩とも出…
カナタが初めてブランコに乗ったのは3才の頃だったかしら、とアキラは思い出してみた。はしゃ…
不感症という言葉はアキラにプレッシャーを与えた。セックスに関するあらゆる言葉が、彼女には…
母のアキラと違って走るのが苦手だったカナタだが、50メートル走のスタートは好きだった。体育…
※※※ 14才の頃は、友だちのことを疑ってばかりだった。その疑いは結局、いつも自分に返送さ…
アキラはカナタを産んだ時、その初めての泣き声が、それまでのアキラの人生のすべてを許したような気になった。どんな本を読んでも、どんな人を愛しても、なかなか到達できなかった、それはおかしな気持ちだった。 だからこれもおかしな話なのだが、アキラは分娩台をそのまま降りて、病院の窓から飛び降りようかと思った。それはやりきったという気持ちでもなく、それまでの人生の贖罪でもなく、やけくそでもなく、赤ちゃんの、最初はか細いがやがて大きくなりアキラをつつみこんだ声がかたちづくった大きな手のよ
42才のアキラは、どの地点が自分の西暦ゼロ年だったのだろうとよく思う。やはり、娘を産んだ14…
カナタが先輩から聞いた言葉で今でも覚えているのは、「めんどくさいことにみんなは反発せず、…
永遠はやはり、ない。ということは母のアキラから時々聞かされていたものの、19才になったカナ…
カナタは戸籍上はかなたと書いた。アキラも戸籍上はあきらと書く。カナタを産んだ時、アキラと…