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台湾ひとり研究室:翻訳編「#07陳柔縉さん作品の翻訳家、中村加代子さんに会いました。」

台湾書籍《大港的女兒》 の翻訳者が、日本版の刊行前後の進捗をリポートしていくnote連載です。第7回となる今回は、翻訳家・中村加代子さんにご登場いただきます!

「翻訳出版には、5年っていう時間制限があるんですよね」

ギョッとするひと言で翻訳出版の厳しさを教えてくださったのは、翻訳家の中村加代子さんです。8月下旬、ご家族との台湾旅行でわざわざ時間を割いてくださり、お目にかかりました。というのも、中村さんは陳柔縉さんの日本語翻訳を手がけたおひとり。いわば陳柔縉シリーズの先輩です。

『台湾博覧会1935スタンプコレクション』(東京堂出版、2020)は、2018年に台湾で出された原書《一個木匠和他的台灣博覽會》の翻訳版。384ページという大作で、戦前の台湾の街と人を細やかに伝える1冊です。

日本による台湾統治40周年を記念して行われた博覧会は、かなり盛大な物だったようです。当時、楊雲源(1903-1996)さんというひとりの大工が博覧会の会期50日間で、会場内はもちろん、博覧会に合わせて作られた街中の商店や旅館のものまで、あわせて309もの記念スタンプを集めて回った。博覧会から数十年経ち、ひょんなことからそのスタンプノートに出会った陳さんがスタンプの主を調べ上げ、本の中に街を再現してみせた——80年の時を超えて完成した本書には、なんともドラマチックな物語がありました。

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勝手口から見た台湾の姿を、さまざまにお届けすべく活動しています。2023〜24年にかけては日本で刊行予定の翻訳作業が中心ですが、24年には同書の関連イベントを開催したいと考えています。応援団、サポーターとしてご協力いただけたらうれしいです。2023.8.15