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台湾ひとり研究室:翻訳編「#05陳柔縉さんの著作を振り返る『国際広報官 張超英』」

台湾書籍《大港的女兒》 の翻訳者が、日本版の刊行前後の進捗をリポートしていくnote連載です。第5回となる今回は、著者の作品として初めて日本で刊行された1冊をご紹介します。

こんなすごい人だったの!?——読んで度肝を抜かれたのが本書でした。

私が今、翻訳に取り組んでいる《大港的女兒》は著者である陳柔縉(チェン・ロウジン)さんの5冊目の日本版です。それまでノンフィクション作品が主だった著者が初めて手がけた小説で、1930年頃から2008年までを背景に、台湾の高雄で生まれた女性が力強く生き抜いていく物語です。

前回の記事では、過去の著作がどんな内容だったのかをざっと総ざらいしましたが、日本語で読める書籍を今後、折に触れてご紹介していきます。まず今回、『国際広報官 張超英』を取り上げます。

『国際広報官 張超英』の概要

2008年に日本で刊行された本書は、坂井臣之助さんを監訳として5人の翻訳者が分担して翻訳したもの。カラーの口絵付きでご本人と関連人物のカットに始まり、本文に訳注、資料編が付記され、全6章308ページという構成です。

張超英(1933-2007)さん。すでに鬼籍の方ですが、当時あった行政院新聞局で台湾政府の動きを駐在していたアメリカや日本に伝える広報官としての役割を担っておられた方です。

本書では、抗日運動家だった父親の下で育ち、のちに「台湾のため」という自身の信念を羅針盤に、広報官として政府要人やメディアに対してどのようにアプローチし、関係を築き、そして台湾の民主化を外部に向けて伝えていったかが、陳さんの文章を通じて、詳しく語られています。

奥付には「口述 張超英」「原稿執筆 陳柔縉」とあります。陳さんにはこの他にも原稿執筆を担当し、2016年に日本版として刊行された『台湾と日本のはざまを生きて 世界人、羅福全の回想』がありますので、本書は陳さんのブックライティング1冊目ということになります。

李登輝『台湾の主張』刊行の仕掛け人

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