見出し画像

台湾ひとり研究室:翻訳編「#04《大港的女兒》著者の陳柔縉さんと創作活動を見渡して見えてくること」

台湾書籍《大港的女兒》 の翻訳者が、日本版の刊行前後の進捗をリポートしていくnote連載です。第4回となる今回は、著者とその創作の変化についてご紹介していきます。

陳柔縉(チェン・ロウジン)さん。1964年雲林生まれ、2021年没。享年57歳——この享年というふた文字を使わなければならないのが、残念でなりません。原因は、後ろから追突してきたバイクによる交通事故でした。

私個人は、取材を通じて一度だけ、お目にかかったことがありました。その時は陳さんの仕事部屋にお邪魔して、創作の一端を垣間見せていただきました。仕事部屋に置かれた広々としているはずの机の上には、資料の束がどーんと載っていたのを覚えています。

日本で刊行されているのは、彼女の著作の一部でしかありません。そこでまずはその創作活動全体を振り返ってみます。ちょっとややこしくて恐縮ですが、以下で《 》を用いているのは、台湾版の書名です。読みづらくてすみませんが、やっぱり分けたほうがいいなと思ったので、ご容赦くださいね。

30年弱で書いた著作は14冊。

陳さんは、台湾大学を卒業した後、台湾の報道機関で記者を務め、最初の著作を1993年に刊行しました。その初めての著作は《私房政治》、続く《總統是我家親戚》と台湾政治に関連したテーマでしたが、それはもともと政治畑の記者だったこととかかわると思われます。

それが2000年代に入ると一転、日本統治時代の台湾を軸にした作品が多くなります。

ここから先は

1,743字 / 1画像
記事配信は毎週月曜日です。皆さんの購読料がこれからどんなふうに展開していくのか、本ができていく道のりを一緒に歩んでいく気持ちをお楽しみください。

台湾書籍、翻訳中!

¥500 / 月 初月無料

台湾書籍の翻訳者が毎週月曜日に、作品情報から翻訳の進捗、翻訳出版の裏側まで、幅広くお伝えしていきます。台湾旅行に行ったことのある方から翻訳…

勝手口から見た台湾の姿を、さまざまにお届けすべく活動しています。2023〜24年にかけては日本で刊行予定の翻訳作業が中心ですが、24年には同書の関連イベントを開催したいと考えています。応援団、サポーターとしてご協力いただけたらうれしいです。2023.8.15