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禁煙はある朝突然に

唐突に何かテーマに沿って書きたくなって、ちょうどタバコの害について考えていたので、こちらを書いてみた。

吸わなくなって、およそ3年。自分自身が意識しなくなったからかもしれないが、ニューヨークの至るところで見掛けた「No Smoking」というサインを最近はあまり目にすることがなくなった気がする。街中で見掛ける喫煙者もかなり減った印象もある。

そもそも、ニューヨーク市は喫煙者にとって厳しい場所。市はSmoke Free Air Actという取り組みをしていて、店舗内やレストラン、バーの屋内、公園を含む公共の場での喫煙は禁止されているし、住宅でもいろいろな規制がある。とにかくタバコを吸える場所が少ない。

値段も驚くほど高い。ニューヨークに初めて来た時、到着後、タバコを買おうとして言われた値段がべらぼうに高かったので、てっきりぼったくりだと思った。買わずに店を出て、別の店で聞いても同じ値段だったので、これが正規の値段なのだと驚いた。まだ吸っていた2018年ごろ、アメリカ銘柄1箱20本入りでだいたい13ドルから高いところで15ドルぐらい。それを1日1箱吸っていたのだから我ながら狂気の沙汰だと思う。

ただ、禁煙の理由はタバコ代の節約ではない。きっかけは、当時編集長を務めていたニューヨークの情報誌、NYジャピオンの巻頭で、禁煙をテーマにした特集を担当したこと。

だれの企画案だったか忘れたが、編集部内でたった一人の喫煙者である自分が担当になってしまった。担当になったからには全力を注ぐ。ただ、喫煙者が禁煙特集を担当するなんて、という気持ちが準備をしながらもたげてきた。読者には言わなければ分からないことだが、読者に申し訳ないという思い始めた。

そんなある朝突然に「自分が禁煙したらいいのか」と安直な、そして自分が苦しむアイデアに行き着く。

まず、かかりつけ医(*)に相談した。特集記事では自身の禁煙体験記、「禁煙挑戦中 編集長タナカ」という記事で、とっかかりの部分を書いた。以下、記事そのまま掲載する、

(*)加入している保険によって異なるが、アメリカでは一般的に、日頃の健康相談や定期検診、軽い症状の病気などの相談はまず、主治医/かかりつけ医(プライマリードクター)にかかり、そこから専門医を紹介してもらうという流れがある。

 嫌煙家の妻との結婚を機に本数は減ったものの1日10本は固く、外食したときやイライラが募ると本数が激増。ただ最近、喫煙本数が増えると、決まって生来弱い喉を害し、体調を崩すという悪循環が続いていた。

 ある朝、突然に「禁煙しよう」と思い立った。早速主治医に相談すると、計画的に禁煙するための薬「チャンティクス」を処方された。しかし、意気揚々と訪れた薬局で告げられた薬の値段は500ドル(スターターキット4週間分)。高っ! 第一歩でつまずくことに。

別の手を探す

 他に手はないか? と情報を集めたところ、ニューヨーク市が提供する禁煙者向けのウェブサイトが充実しているのを知る。ふむふむと読んでいくと、禁煙にはステップが重要とのこと。すぐに挫けないように、禁煙の理由を突き詰めること。タバコ、灰皿など身の回りの喫煙関連品を一切処分し、周囲に禁煙開始日を宣言し、背水の陣を敷く。スタートしたら喫煙欲求の引き金になる要素から遠ざかるように心掛けること。喫煙欲求は、ガムをかむ、歯をみがく、水を飲むなどしてしのぐ。

 ただ、急にニコチンを断つことは難しいと判断して、ニコチンガムを購入。これは禁煙によるイライラ、集中力の欠如を緩和する。ただしニコチンは血管を収縮させ、血流を阻害させるので、摂取量を減らす必要がある。「目覚めてから30分以内に喫煙する人」向けのニコチン含有量4mgを選んだが、口の中のチリチリした刺激に吐き気をもよおした。「これが使えないの?」と一瞬うろたえたが、2mgのトローチに変更したところ、すんなりいい感じだ。(リンク先は薬局のRite Aidのサイト)

アプリも使う

 さらに市が提供する禁煙支援スマホアプリ「Help me Quit」をダウンロード。情報を入力すると、禁煙日数、節約できた金額が分かる。アプリ内にコミュニティーがあり、禁煙挑戦者たちのコメントも見られる他、自分でもコメントを書き込める。

仲間がいるのは心強い。

 原稿執筆時で、禁煙11日目。タバコを吸いたくなる瞬間もあるが、我慢できている。トローチも当初の1日5個から3個にまで減らしたが、まだ先は長い。

「校了」、つまり記事を全て入稿し、印刷所にファイルを送り終える状態になると、それまでその特集に心を120%捧げていたのが、いきなり0になるのが基本。いつもならば、もう禁煙は終わりー、となりかねないところが、そうはならなかった。

取材した専門家の話、一般からのアンケートで募った禁煙成功者の体験は確かに参考にはなったも事実だが、なんというか、やめられたのは別の理由があった気がする。次はそのあたりをお伝えする。





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