「これ見よがし本」の効用を熱く語ってみる。
2020年春先まではオフィスに通勤し、自分の席というものもあった。その後、例の出来事により、テレワーク試験導入。完全にテレワークに移行してからは、オフィスも縮小したことで、フリーアドレスに。自分の席がなくなった。
自分の席があった頃の話である。
私は、読んでいる本やこれから読む本や読もうと思っているけどなかなか着手できそうもない重たそうな本などをよくデスクの片隅に積んでいた。
それも通路際のところに。もちろんカバーをかけずに。
これは、意図的なものだった。「私の今関心がある本のコレクションはこれだ」をプレゼンしているようなものである。
すると同僚たちが通りすがりにその本を眺め、「へぇ、この先生、新刊出したんですね」「あ、この本、買おうか迷っていたんですよ」「このテーマで本が出ているって知らなかった」など口々に感想を述べては、中身をぺらぺらめくって、そのうち、半数くらいは、「私も買おう!」といって去っていくようになった。
私のデスク上の積読は、こうして同僚たちへの知的刺激要素となり、社内では少なからず、学びの伝播に役立っていたと自負している。
同様のことをしているエンジニアがいた。
彼は最新テクノロジーの本を、私の比ではない数、10冊以上を積み上げて、机の上にそびえさせていた。
同じくエンジニアの同僚たちが、その本を通りすがりに眺めては、「あ、これ、俺も読まなきゃ」「●●さん、こういう本まで読んでいるのか、かなわないわー」などと口にして、やはり、刺激を受けていた。
私にとっては門外漢の最新テクノロジー本、随分長い期間(数か月という単位で)、置いてあったので、
「ねぇ、これ、いつ読むの?」
と当人に訊いたら、
「淳子さん、これ、時々入れ替わっているんですよ!」
と笑顔で答えが返ってきて、そうだったのか!?と知ることになった。
そうか、読んでない積読ではなく、読んでいる積読だったのだ。そして、しょっちゅう本のタワーの中身は入れ替わっていたのだ。
そんなわけで。
「積読は、他者の知的好奇心を刺激し、組織に学びのムーブメントを引き起こす」
ということを実感として知った。
こういう本のことを
「これ見よがし本」
と命名し、企業の研修にお邪魔する際、
「部下に何かを学んでほしいなと思ったら、そういう本をデスクに置いておくというのでも効果あることありますよ。これ見よがし本と言います!」
とよく紹介している。
まあ、もちろん、部下があまのじゃくであれば、
「これ、私に読め、という意味でわざと置いているのだろうな」
と思って逆効果になることも考えられるのだけれど。
そんな「これ見よがし本」についてお話したVoicyをどうぞ。
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ところで、テレワークって、こういう「他者に刺激を受ける学び」「五感に触れる学び」の機会、激減しますよね。これは、組織の学習において、結構なインパクトがあるような気がします。
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