小さな特許事務所

「特許は誰がやっても同じ」という手続きでありません 大量生産の工業製品と一品制作の工芸…

小さな特許事務所

「特許は誰がやっても同じ」という手続きでありません 大量生産の工業製品と一品制作の工芸品が違うように発明は一つとして同じものはありません 発明を特許発明に創り上げるために必要なのは弁理士個人の経験と能力 大規模事務所の組織力より一人の弁理士の匠 tanakapatent.com

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  • 著作権のはなし

    教科書では言わない著作権のはなしです 誰もが被害者になり加害者にもなる著作権は 法律のプロだけではなくすべての人が知らなければならない法律です

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日本で一番小さな特許事務所 TANAKA Law & Technologyはこんな事務所

はじめまして わたしは日本一小さな特許事務所のオーナー兼弁理士の田中智雄です なぜ日本一小さいかというと事務所員が一人だからです 一人未満の特許事務所は存在しないから事務所員一人の特許事務所は日本一の小さな事務所です 特許事務所を探していて、TANAKA Law & Technologyにも興味があるけど小さい事務所で大丈夫なのだろうか?と不安を抱いている方 もしあなたが大企業の知財部員なら大きい事務所に依頼する方が安心です 年間に数百件の出願件数を扱う大企業は事務所処

    • どんな士業に依頼すればいいですか?と相談されたら、価格で選ばないこと!と答えます

      公的な相談会で聞かれることが多い質問の一つに、どんな弁理士に依頼すればいいですか?というもの. これに対する答えは一つ. 値段で選ばないこと! 士業は人物で選ぶ!! 製品やサービスで差別化ができないときに価格を下げて同業と競争することを価格競争というらしい. この定義に従うと、専門サービスを提供する士業が価格を下げるということは、自ら提供する専門サービスの品質が悪いことを白状していることになります. 他の士業のことはよく分かりません. でもしかし、どうも特許事務所は、価格

      • 低料金より即レス、士業は組織化より個人にメリット大

        米国の弁護士に連絡を取るためにいくつかの事務所にメールを送っていました. ところが即レスをしてくるところが案外少ないのです. いまや即レスは当たり前の時代なのに、連絡が遅いというだけでその代理人とはもう仕事をしたくなくなります. いま自分が取引している代理人は、ほとんどの人が即レスばかりです. 即レスがない理由は組織志向か個人志向かの違いだと思います. 組織志向というのは、企業か個人かという形式的なものではなく、担当者が24時間対応する人かどうかという実質的なものです.

        • ルールとペナルティは表裏一体、ルールはペナルティがあって機能するものと心得よ

          競合相手の製品を買ってきてバラすのは良くても、ソフトウェアのリバースエンジニアリングは駄目、と思っている人は多いですね. 特許製品のリバースがOKで、著作物のリバースがNG、そんなわけはありません. なぜ、そんなことが起こるかというと、ソフトウェアの多くがライセンス契約を伴って配布されていて、その契約書はリバースエンジニアリングを禁止しているから. ただ契約の内容をよく見ると禁止としか書いていない. 禁止したことをやったらどうなるか、ということは全然書いていない. 契約

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        • 著作権のはなし
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          ウェブサイトを見ても士業のサービスは分からない

          先日、飛行機のなかで聞いたキーエンスの営業についての田尻望氏のトーク. キーエンスといえば圧倒的な利益率を誇ることで有名であることは知っていてもそれ以上のことはよく知りません. 1時間半のフライトで聞けた範囲なので断片的な内容ですが、耳に残ったのは、自分たちが作りたいから作った商品は何もない、ということ. プロダクトアウトではなく、全てがマーケットインというのがキーエンスをキーエンスたらしめる所以なんだそうです. マーケットインがどのように表れているかというと、セールスト

          ウェブサイトを見ても士業のサービスは分からない

          技術が進むとコモディティ化も進む

          レンタカーで割り当てられたのがトヨタのHVヤリスクロス. 100キロほどを走行して満タン返しのためにスタンドへ. ハイブリッドだから燃費がいいのは当たり前ですが、給油量わずか1.7リットル. セルフではなく、スタンドの人が操作したので、しっかり満タンになったはずです. いまの自動車の燃費がこんなにいいとは思いませんでした. 普段乗っているカングーの燃費が10キロ/リットル、しかもこちらはハイオクなので、その差、歴然です. 乗り心地を含め、燃費以外は圧倒的にカングーに軍配が

          技術が進むとコモディティ化も進む

          AIは発明者になれないけど、AIよりレベルの低い発明がこれから増えていく

          特許の世界の課題の典型的なものは軽薄短小. 軽薄短小を実現するために様々な手段を講じています. そして課題を解決するための手段に対して特許性を審査しています. (建前上、課題も評価することになっていても、課題がコモディティ化しているので、新規な課題というのは滅多にありません). 課題に対する答えをAIが考えてくれるようになると、人はAIと対峙していくことになります. 今はまだまだ人の方が有利でもそのうち人が思いつかない手段をAIが考えるようになります. AIを使って創作し

          AIは発明者になれないけど、AIよりレベルの低い発明がこれから増えていく

          正確なコンピュータがAIを使って正しい嘘をつく

          Google検索に代わって台頭してきたのがChatGPT. どの程度の精度かを、自分の専門分野で試してみました. 感想はどうかというと、はい、関心しました. AI凄い、と言いたいところですが、なんだか情報が薄っぺらい感じがしました. さっと調べる分にはいいかもしれないけど、ちょっと頼りないなあというのが感想でした. AIがどの情報を一次情報としているのかわかりません. 情報ソースを指定してエンジンを育てるのが人なら、指定した情報が正しくなければなりません. ネット上の情報

          正確なコンピュータがAIを使って正しい嘘をつく

          違法ではないかどうかの相談は悪魔の相談

          これは何か問題になることはないでしょうか. この手の相談が来ると内心「ヤバい」と思っています. 無いことの証明ができないように、違法でないことを証明することはできません. このような相談があっても、著作権法上は違法ではない、商標法上は違法ではない、としか言えないのです. 民法の特別法である著作権や商標法などの知的財産権法は、違法となる行為を細かく規定しています. 例えば、著作権法ならば、無断で他人の著作物を複製してはいけない、無断で他に人の著作物を公衆送信してはいけない、

          違法ではないかどうかの相談は悪魔の相談

          法人化するメリットは競合から会社を守るため

          税務上の理由から利益が800万円を超えたら法人化を考えた方がいいというのが教科書的な回答ですね. 税務のことは門外漢ですけど商号の相談はよく受けます. 同じような商号があるけど、これは問題ないですか? 同じような商号を考えているけど、これは問題ないですか? 商号を真似することのリスクや、似たような商号を何とかしたいという相談が結構あります. 類似商号を禁止するという縛りがなくなり、いまは商号を自由に決めるようになりました. 実際、巷には似たような商号が溢れています. さ

          法人化するメリットは競合から会社を守るため

          有名人の名前にタダ乗りしてはいけません

          有名人が書いた推薦文を帯にした本が乱立しています. こういう派手な本はあまり好きではなく、自分は逆に怪しさすら感じます. なぜ有名人に推薦文を書いてもらうのかといえば、有名人の商業的価値を利用して本を売るためです. 推薦文だから誰が書いてもいいと思うのですが、有名人以外の人が推薦文を書いても全く意味がありません. つまり推薦文の内容よりも、有名人の「名前」に価値があります. 勝手に有名人の名前で推薦文を書く人はいませんが、勝手に名前を借用する人はいます. さすがに有名人の

          有名人の名前にタダ乗りしてはいけません

          商標権もない著作権もないときの最後の砦は「不法行為」

          不正競争が認められるハードルはたかく、例えば、標章だったら、それが周知でないと保護されません. 多くの場合、周知にまで至ってないので不正競争を理由に相手の使用を止めさせることができません. 商標権も著作権もない、そして周知でもない、このような相談が実に多い. 例えば、似たようなウェブサイト. ドメインも似ている. この程度のウェブサイトは五万とあるので、もはや諦めてしまうことも多いのですが、何とかしたいと思ったら、不法行為(故意または過失によって、他人の権利または法律上

          商標権もない著作権もないときの最後の砦は「不法行為」

          人の顔に著作権があるかもしれない

          人の顔は著作権ではなく肖像権で保護される. そしてこの肖像権は有名人だけのものではなく一般人にも認められている. 肖像権は、日本国憲法第13条に規定される「生命、自由 及び幸福追求に対する国民の権利」の下に保護されている権利. 自分の知らない間に撮影された顔写真がインターネット上に公表されて嫌な気分を味わった. そんな場合は有名人と同じように肖像権の侵害を理由に写真の削除を求めることができる. 有名人の肖像権と一般人の肖像権の違い 肖像権には、財産権に基づいた側面

          人の顔に著作権があるかもしれない

          制度が変われば商標も取り直せる

          商標を取り直したいという相談が少なくない. 拒絶になったのなら、出願し直しても結果は同じだろう、と思いながら、出願履歴を見てみた. 無効取り消しになったということが分かった. むかしし

          制度が変われば商標も取り直せる

          全ての法域をカバーするAIが登場すれば弱者は救済される

          主観的に違法。 相手の行為を違法だと思って相談に来るので、はじまりは全て主観的な違法です。 主観的違法を客観的にも違法にするのが専門家の役割。 書けば簡単ですが実務は難しい。 何が難しいのかというと、自分が知っている法域だけでは処理できないこと。 弁理士は特許などの知的財産法は詳しい。 商標や著作権法で違法であると判断できるものはよいが、行為の全てを知的財産権法でカバーすることはできない。 依頼者の利益のために働くのが職業代理人だから、違法と思っている依頼者の立場にたって

          全ての法域をカバーするAIが登場すれば弱者は救済される

          勝てない商標、裁判は水物

          登録商標「子どもとママの歯医者さん」と、「香椎照葉こどもとママの歯科医院」を比べて、こればヤバいと思わない人はいないと思います. 商標のプロである弁理士からみても、この2つは似ていると思います. 反面、もし依頼者が非類似を主張して戦ってくれと言われれば、戦わなければならないのも弁理士です. 興味深いのは、被告が使用している「香椎照葉こどもとママの歯科医院」から「こどもとママの歯科医院」を分離して、登録商標と対比することが不適切であると判断していることです. 香椎照葉は、

          勝てない商標、裁判は水物