十を聞いて十一を知る

思いは言葉にしないと伝わらない。それは、伝える側の話。
想像力がないとすれ違う。これは受け取る側の話。

一を聞いて十を知る。
できる人であれば、とか、同じレベルの人であれば、とかに限定される。かつ、できる人でも、同じレベルの人でも、常に言葉少なく通じるわけではないと思う。
いつだってツーといえばカーなのは、何年も何十年も濃密な時間を一緒に過ごした同士でなければありえない。18年一緒に暮らした親子でも、30年連れ添った夫婦でも、意思の疎通ができてないと感じるときがあるはず。(だから親子の断絶やら、熟年離婚があるわけで)

特に、裏にある気持ちは言葉でなければ伝わらない。これは絶対といっていい。
どれほど相手を思いやっていても、どれほど相手と仲がよくても、裏側を読み取ることはできない。

今、あの人にはこれが必要だからこう言う。
でもあの人には「こう」しか届かない。
「あなたには、こうこうこうでこうだから、今、こうする必要があるのだよ」

別に伝わらなくてもいいし、くみ取れないならそれでいいのかもしれないし、そのくらいわかれよと思うかもしれない。
それで関係が微妙になってもいい。
伝わる相手に伝わればそれでいい。
でもね。
裏側の思いを知らないから「こう言われたからやる」になる。もちろん、それは受け取る側の問題も含んでいて、そこは下の方で論じるけれども。
やらされるだけになったらやる気がなくなる、ってこと。
そして、言葉にしなくても伝わるものもあるけれど、それは「どうしても伝えたい」という大いなる気持ちがあってこそ。
どうしてもこの人に伝わって欲しい、言葉にできないけれど。
そんな相手が数多くいるわけはない。結局、大半の人には言わないだけになってしまう。

面倒だし、わからないならいいや。
別に伝わらなくても「こう」やってくれればいいから。
それ、長期的に見ると非効率的ではないかしら。合理的かもしれないけど非効率的。
毎回ではなくとも、ときどき裏側を伝えることで相手をより動かすことができる。推進力を与える感じかな。
「この人は自分のことを見ていてくれる」
「自分のことを考えてくれてる」
「この人のためにもやらなきゃ」
人はこうして動く。と思う。これまでの人間観察によると。

私の場合、お金をもらう仕事であれば言外の意味を考えて行動する。言葉の裏、上下左右、周辺、見渡せる限り見渡して、作業の意味と及ぼす影響、そこから先を考える。
だって、毎回言われた範囲をするより先に準備しておいた方が早く進められるから。あと、抜けが出にくい。それと、求められるものにプラスαしたものを提出できる。
それは私が失敗するのが嫌だからやるだけ。自分が一番自分に期待しているから、その期待を裏切りたくないからやるだけ。

そもそも私は人の気持ちがわからない。
言葉の裏側にある人の気持ち、思いをいろいろ想像してみるけれど、本当はどうなのかわからない。ま、誰でもそうなのかもしれないけど。
でも想像は大事。大事だと思う。

私みたいに裏読みしすぎたり、裏の裏の裏の裏の…と堂々巡りみたいになったり、想像して一喜一憂したりするのはどうかと思う。
自分が苦しくなるほどは想像しなくていい。
ちょっとだけ、相手の言葉に想像をふくらませる。

自分の言葉が誤解を生む経験、誰でもあると思う。
「そんなつもりじゃなかったのに、なんでそうなるかなぁ」
「わかるじゃん、ちょっと考えれば」
そんなふうに思ったこともあるのではないかしら。

特に関係性が近いなら、自分の知る普段の相手と、今ここにある言葉とを一直線で結びつくかどうか、わかるはず。ズレがあるなら、そこに相手の気持ち、思い、考えがある。
小さな違和感を「なんでかな」と想像してみる。

この間、ちょっと言いすぎたのを気にしてるのかな。
もうちょっとして欲しいことがあるのかな。
別なことに気を取られてるのかな。
よりより方法があるとおしえてくれてるのかな。

自分も言葉ですべてを伝えていないでしょ。
ということは、相手も表層だけ言ってる可能性大じゃない?
自分も「ま、これは言わなくてもいっか」と言ってないこと、あるんじゃない?

伝える側が伝える言葉を準備するように、受け取る側も受け取る準備が必要ではないだろうか。
ドッジボールで準備してなければキャッチできずに弾いてしまう。
キャッチボールでグローブをはめていなければ怪我をしてしまう。(その前に取ることをあきらめる)

なんかさ、気持ちがわかる人って損してる気がする。
わかるから手抜きをするんじゃないかなぁ。
私、わからないから「好き」「嫌い」「こう思う」「だからこうして欲しい」って言う。相手が気持ちがわかる人だとしても、私みたいにわからないかもしれないから、言葉にして伝える。
わからないから想像して、言葉を補おうとする。ときに補い方を間違えるけど。
あと、わからないから「なんで?」「どうして?」と執拗に質問する。納得できないと理解したくなかったりもするから。(あ、ここの考察が足りてない…)

全部言葉にするのも面倒だし、毎回想像するのも面倒。
だから、ときどき言葉にして、ちょっとだけ想像する。
その少しの手間が、意思疎通の効率化には欠かせないのではないだろうか。


ネコ4匹のQOL向上に使用しますので、よろしくお願いしまーす