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映画『哀れなるものたち』感想 船で過ごす時間、本を渡す相手

 映画『哀れなるものたち』(2023)をイオンシネマ旭川駅前で鑑賞しました。『ロブスター』(2015)や『女王陛下のお気に入り』(2018)の時は劇場公開のタイミングを逃してしまったので、今回初めてヨルゴス・ランティモス監督の作品を見ることになりました。

 かなり好きな作品でした。人生のベスト映画トップ10に入るかもしれません。鑑賞中、ずっと(私じゃん???)と思って見ていました。見終わった後も、(私じゃん???)という気分が続いています。「ベラは私」であり、「女性は濃淡あれど全員ベラ」と思いました。舞台や年代がわざとぼかされていることもあって、“女の寓話”だと感じました。女の子たちの冒険譚です。わたくし、冒険、旅、成長、快楽、破壊の物語がだ〜い好き!

 やはり船のシーンが最も好きです。ダンスさえ制限するダンカンから離れて、友人・仲間を自分で探し出すのがいいなと思いました。夢中になった熱烈ジャンプも乗り越えて、あっという間にダンカンを置き去りにするのがよかったです。状況を把握できないまま、「愛らしいしゃべり方が失われてしまう」というダンカンの愚かさ加減にニコ…となりました。

 公式パンフレットのマーク・ラファロとウィリアム・デフォーのインタビューページには、「ベラの成長に合わせて進化できるか退化してしまうか道が分かれる」といったことが書いてあって、(親切なインタビュー記事〜!)と興奮しました。進化と退化。本当にそう。まあ進化って言ったってベラに伴走した男性は1人もいないわけですが…。

 ラストシーンはまあまあ解釈が分かれそうですね。個人的な不満は、町医者のマックスが庭にいることです。解せぬ。物語の冒頭に「何て美しい白痴だ」って言ってたじゃないですか。「あなたの体はあなたのもの」と言うたとて許せぬ。

 映画レビューを読んでみると、「伝統的なフェミニズムの範囲内にとどまってしまっている」「フェミニズムではなくヒューマニズムの話」など両極の意見を見かけました。しかしあれが現代のフェミニズムじゃなかったら何なんでしょう?

 劇場には、現代メディア研究会のメンバーと一緒に行きました。映画『バービー』(2023)を一緒に見に行った人たちです。「ベラ、頑張れ〜!って思いながら見ました」という感想と「えっそんな応援したいとは思わなかったです」という感想が出ました。素直。素直な感想を聞かせてもらえるのがありがたいです。

 異なる意見も出ていましたが、メンバーの感想に共通していたことは、船のパートに言及していた点です。「あそこで友だちができるのがいい!」「知性を獲得するのがいい!」と言うのです。感想を共有している間、(ああ、ここが船の上!)と思うなどしました。私だけではなく私の仲間もベラなのですね。時にはマーサのように「本」を渡してあげたいと思います。一緒に読んで、一緒に話をしたい。

写真について
 『哀れなるものたち』のメインビジュアルをイメージしたネイルにしてもらいました。かっこいいでしょう。旭川の雪と光とともに。

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