三毛猫ミーのクリスマス 第3話 三毛猫はメス猫の証!オス猫は普通いニャ
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影の出処《でどころ》をたどると、そこには、三色の丸々と太った大きなブチ猫が、ふんぞり返っていた。背後には、子分らしき十数匹のオス猫たちが控《ひか》えている。
その一群を見た黒猫クーは、あたしの後ろへサッと素早く隠れ、
「あいつ、嫌われ者の、ブチ猫ブーだよ」
と教えてくれた。
その声が聞こえたらしく、ブチ猫ブーはガラガラ声で、
「おい!黒猫クー。オレ様は、嫌われ者じゃねえぞ」
と、存在を誇張《こちょう》するように、一歩前へズイと踏み出した。
「大体、お前は、黒猫のくせに、生意気なんだよ!」
その支離滅裂《しりめつれつ》な論理展開《ろんりてんかい》に、あたしはプッと噴《ふ》き出した。
「あんた、バカ?」
ブチ猫ブーは、あたしを睥睨《へいげい》して、
「なんだあ?てめえ」
「バカか?って訊いてんの。黒猫のくせに生意気だなんて、黒猫が、生意気じゃ、ダメなの?」
「はあ?」
「生意気な黒猫だって、いるに決まってんじゃん、バーカ」
ブチ猫ブーは、あたしの白い足先から舐《な》めるように視線を上げ、両目を見据《みす》え、
「おい、てめえ、どこの鹿《しか》の骨だ?」
「それを言うなら、鹿じゃなくて、馬《うま》。馬の骨でしょ」
「うるせえ!馬だろうが、鹿だろうが、通じりゃいいんだよ!」
「馬を鹿だと言い張るのが馬鹿の語源《ごげん》なんだよ!バカ」
「ヘ理屈《りくつ》いうんじゃねえ!」
「理屈を言う屁《へ》なんて聞いたことないよ、バカ」
「理屈を言う屁《へ》だって、あるんだよ!」
「じゃあ、屁理屈 ついでに言わせてもらうけど、あたしは鹿でも馬でもなく、猫。見たら分かるでしょ、バカ」
背後《はいご》の子分たちが、クスリと笑った。
ブチ猫ブーは振り向き、笑った子分らを凄《すざ》まじい形相《ぎょうそう》で睨《にら》みつけ、その形相のまま、太い首を回して、あたしを睨みつけ、
「この三毛猫やろう!」
「とことんバカだね。あたしはメス猫だから、野郎《やろう》じゃなくて、女郎《めろう》。野郎はオスのこと。わかった?」
「なんだと!」
「それに、三毛はメスだけ。オスの三毛なんて、普通、有り得ないの。覚えときな、バカッ」
ブチ猫ブーの血管が怒りでブチブチ切れるような音がした。べっこう模様《もよう》の尻尾《しっぽ》が毛羽立《けばだ》ち、血走《ちばし》った目で後ろを振り向くと、
「おい!野郎ども!構《かま》やしねえ、叩《たた》きのめしてやれ!」
と叫んだ。
勝気なあたしは、舌なめずりして、
「かかってきな!」
と応じるが早いか、
「おばちゃん、おばちゃん」
と黒猫クーが、あたしの段だら縞《しま》の尻尾《しっぽ》をひっぱった。
あたしは大声で、
「おねえちゃんだっつーの!」
そう叫んだ自分自身の声に驚いて飛び起きた。黒猫クーが、心配そうな顔で覗《のぞ》き込み、
「いつも、そんな所で寝ているの?」
「は?」
「そんな所で寝ていたら、風邪《かぜ》ひくよ?おばちゃん」
辺《あた》りを見回すと、ブチ猫ブーも、子分たちも、いなかった。
どうやら、一発弾《いっぱつだん》の散弾《さんだん》銃が放ったドーンという爆音《ばくおん》を間近《まぢか》で聞き、しばらく、気絶《きぜつ》していた模様。《もよう》
夢だったの?
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