夜、猫に会おう
こんにちは。
僕は仕事柄、夜の10時以降に退勤することが多い。
だから、帰り道は、住宅地の真ん中を歩いていても静かだ。
街灯や夜ふかしさんの窓灯が、ポツポツと光っているだけ。
僕の帰路は、いつも静寂だ。
そんな帰り道で、ほんのちょっとだけ楽しみにしてることがある。
コンクリートの壁やごみ捨て場の影で、隠れてうずくまっているもの。
息を殺して、僕をじっと観察している相手。
夜の闇に上手に溶け込む、猫だ。
彼らは目がいい。
反対に、僕は彼らほど目がよくない。
人間の中でも、視力は弱い方だ。
だから、本当に近くまで寄ってからじゃないと、存在にも気づかない。
でも、彼らは僕を感じている。
数メートル離れていても、じっとこちらを警戒している。
時には、人懐っこいやつもいる。
そういうやつは、僕と一定の距離を保ちながら、ずっと着いてくる。
怖いんだか、気になるんだか、わからない。
そんなに好奇心が旺盛だと、痛い目を見ちゃうぞ。
君たちは、好奇心にやられちゃうんだろう。
とは言ったものの、最近は猫探しが密かなマイブームとなっている。
職場から自宅までほぼまっすぐの道、歩いて10分ほどの距離を、
立ち止まらず、だけど周囲をよく観察しながら、
「今日は隠れていないだろうか」
と探しながら帰るのだ。
暗い夜道だから、キョロキョロしながら帰るのは怪しい。
だからなるべく自然な歩行を装う。
わずかな目線の動きや、自然な頭の動きで猫を探すのだ。
彼らは端っこで丸くなっているか、突然隅っこから飛び出してくる。
飛び出してくるのは運なので、丸くなっているのを探す。
おっ。
それっぽい影を見つけたぞ。
しかし、慌ててはいけない。
急に立ち止まったり、近づいたりしたら、猫が警戒してしまう。
ここはあえて、歩調を緩めず、自然な振る舞いを保つのだ。
だんだんと距離が近づく。
丸くて、黒いボディが見えてきた。
夜道なので、目が黒い物体を捉えるのに時間がかかる。
もう少しで、その全貌が見える。
さて、今日の黒猫は...。
黒いビニール袋の土嚢だった。
ぱんぱんに膨らんだビニール袋と猫は見分けがつかない。
そんな知見を得たので、今日は良い日だ。
ちなみに今日は猫に会えなかった。
天気も悪かったし、どこかで雨宿りでもしているんだろう。
空を味方につけるところから始めねばならないのか...。
さようなら!
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