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【転載】 Vol.5 自然との向き合い方

2016年の夏、ここ新得町は豪雨に見舞われました。あまり見たことのない進路で進んできた台風10号の影響で、深夜に1時間あたり90mmという記録的な雨が降りました。被害は報道された通りです。川が反乱したり、山が崩れたり、etc…。水道水の取水施設も流されてしまいました。そのため、しばらく続いた水道の使えない生活。給水車へ通う毎日。ルールを作って励む節水。心のケアも忘れずに。そんな風に、悩むことなく淡々と節水生活を進められたのは、この節水生活が僕にとって初めてのことではなかったから。というのも、東日本大震災が起こった2011年のあの日、僕の住まいは仙台市にありました。そのときの経験のおかげで、大きく悩むこともなく、再び訪れた節水生活を無事に乗り切ることが出来ました。

町内の耕作地

備えあれば憂いなし。

思えば、自然の驚異に対する一番の備えは、『経験』だったのかもしれません。就農後は様々な自然の脅威に悩まされました。豪雨や暴風、そして豪雪。対応には手間と時間が掛かります。もちろん、お金も掛かります。けれども、ひとつひとつ問題を乗切り、3年も経てば対応も慣れたものに。変わらず手間と時間は掛かるけれども、淡々とルーチンをこなすように、悩むことなく自然の驚異を越えられるようになりました。それもすべて『経験』のおかげだったと思います。

でも、全ての脅威が『型』に嵌るほど自然は甘くありませんでした。その日の天気予報は大雪。降雪の時間帯は深夜。積雪予想は多くて50cmほど。それは、いつも通りの対応で済ませられるはずのもの。案の定、深夜も薪ストーブの火を絶やさないことで、栽培ハウスの上に積もる雪を落とし、ハウスの倒壊は防ぐことができました。けれども、この日の雪は湿って重たいもの。木の枝に積もった雪は、落ちることなく枝先を垂らします。あるものは地面につくほどに。折れてしまった木も多々ありました。そして、栽培ハウスのビニールを傷つけたものもありました。加えて、重たく積もった雪は、その後に固く凍ってしまい、しばらく除雪は行えず。あると思っていた備えも、実際は足りていませんでした。

冬の栽培ハウス

備えあっても憂いあり。

この言葉もまた真実だと思います。備えつつも過信しない。自然に対しては常に畏怖の念を抱き、少々の怯えを纏っているくらいが丁度良いと思います。そんなことも諭してくれるのが、十勝と呼ばれるこの地域。自然に対する姿勢に正しい答えはないけれど、これからも考え続けながら付き合っていきたいと。そう思えることは、もしかしたら、とても幸せなことなのかもしれません。

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