クリーム・シチューの究極レシピ

医療系の研究施設で働いている。僕は短期転勤族だ。今の事業所は8ヶ所目。異動3ヶ月で震災にあって大変だ。とはいえ地震から2ヶ月も経ち、だいぶ普段の生活も取り戻している。

友達が遊びに来ることになった。出身地のピンチに駆けつけるらしいのだが、そのついでに僕のところへも寄ってくれるらしい。彼とは草野球チームで知り合った。野球以外でもスキーや釣り、山登りなども共にした。僕が地元を離れるタイミングで疎遠となっていたので、久しぶりの再会である。

とはいえ彼のスケジュールは過密だ。夜行バスとの接続の合間の訪問になる。「とりあえずメシを食わせてくれ」。おそらくそれが真の目的であろう。望むところだ。僕の本気をぶつけてみせる。

来てすぐに食べられるもの。そう考えれば煮込み系の料理一択であった。クリーム・シチューを作ることにしたのである。本当は土地の物を入れたかったが、震災後ということで調達は難しく断念。そもそも彼の方がこの地には詳しい。無理に入れることもないのである。

水はできる限り入れない方がいい。それは料理の基本だろう。煮込み料理も例外ではない。水の代わりに酒やトマト、大根おろしを使った料理は美味しい。クリーム・シチューもそうだ。水は使わず牛乳100%で作った方が美味いのである。

メインの具材は鶏モモ。市販のルーは使わないので、食材の良し悪しが出やすい。故に国産のものの方がいいであろう。

人参は皮を剥く。その方が舌触りがいい。じゃがいもはメークイン系を選択。煮崩れしにくいからだ。切り方は適当に。3cm角ぐらいがベストだと思う。玉ねぎだけは"くし切り"がいい。

具材は炒めない。そのまま鍋に入れる。牛乳はひたひた。成分無調整がいい。そして火を着ける。コールドスタートだ。絶対に沸騰させてはならない。湯気が立つくらいでキープする。

今のうちにフライパンでバターを溶かそう。液体になったら薄力粉を加える。分量はバターと1:1だ。焦がさないように火を入れ続ければ、再び液体に戻るだろう。

そこに茹で汁という名のホットミルクを加えていくのだ。最初はお玉1杯。ヘラで合わせていく。さすれば個体になるだろう。ここらでフライパンの火は切ってもいい。再びホットミルクを追加する。ヘラで合わせる。均一にさせる。再びホットミルクを追加。これの繰り返しだ。3回目ぐらいからお玉2杯、3杯と増やしても大丈夫。だいぶゆるくなったら鍋に合流させる。よく混ぜ、火を入れれば、いい感じのとろみが付いてくる。

味付けは塩。プラスして顆粒の昆布出汁。味の元でもいいが、こっちの方が馴染みがいい。隠し味というものでもある。雑談のネタにもなるだろう。

美味しかった。彼の評価も上々である。話も弾んだ。時間もオーバーしてしまったのである。やはり料理は楽しい。

このレシピに辿りつくまで、そこそこ失敗した。調べて勉強すればいいことは分かっている。それをあえてキャンセルしてきた。時間は掛かるし効率よく上手くはならないが、こっちの方が楽しいのである。我流万歳。


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