仕事がつまらない

医療系の研究施設で働いている。僕は短期転勤族だ。今の事業所は8ヶ所目。赴任して早々に震災が起こり大変だった。仕事場では人事異動も余儀なくされ、僕は久しぶりの上司の手下となり、楽な生活を謳歌させてもらっている。

手下の出勤時間は早い。一番遠くに住んでいることもあり、いつも仕事場には一番乗りだ。だが、始業時間までぼーっとしている暇はない。お茶の準備がある。誰の役割でもない。気付いた誰かがやる。ここ最近は僕の仕事になっていた。

誰かの『めんどくさーい』を引き受けるのが僕の仕事。居室に送られてきた戴きものの果物を切るのも僕の仕事だ。料理好きな僕にとって、果物の皮剥きぐらいは大した仕事ではない。朝飯前である。だがパートのおばちゃんから得られる評価は高い。"手強い"とされていた彼女だが、なかなか仲良くなれたというわけだ。

施設でBBQが行われることになった。恒例の春の行事らしいのだが、震災で開催が延びていた。もちろん僕らも準備から参加する。ここでも僕は包丁を握ることになった。「野菜を切っといて〜」。うれしい指示である。新参者の僕にとっては恒例行事でも勝手が分からないので、仕事を与えてくれると本当に助かる。

それで本業の方はというと、僕はミスを連発していた。ミスというかサボり気味。正直に言うと満点は目指していなかった。ぎりぎりの合格点を目指すあまり、不合格なときもあったというわけだ。よくない。おそらく気持ちの問題なのだと思う。そもそも満点を狙っていないのがよくない。気が緩んでいるのだと思う。

どうしたものか。やはり仕事がつまらないのである。楽だが充たされない。以前も同じことで悩んだことがあった。そのときは上手く割り切れたが、今回は上手くいかない。僕には写真があるので生活は充実はしているが、その反動で仕事に対しては気が緩んでいる節もあると思う。立て直しは難しい。

震災で施設に起きたことを時系列にまとめてみた。その時々で困ったこと、必用だったもの、対策しておきたかったこと。ことこまかく記載してみた。おそらく別の施設では参考になると思う。実際に経験して分かったことも多いからだ。

まとめたものは本社に送っておいた。だが反応は薄かった。他の事業所では欲しい情報だと思うがそんなものである。僕の気の緩みを立て直すことはできなかった。

今は大人しくしておこう。1日1日を丁寧に過ごすことにする。ここの食べ物はおいしい。漁港の市場にも行ってみた。魚が本当に美味しいのである。なにも不満はない。今までが良すぎたのだ。

3ヶ所目の事業所から、僕は生き急いでいた気がする。ここらですこし落ち着いた方がいい。周りの人には悪いが、すこし気は緩んだままにしておこうと思う。

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