イベントに出展した

十勝の田舎町で暮らしている。僕はきのこ農家だ。仕事はひとりでまわしているので収穫量は少ない。つまり儲けも少ないというわけだ。けれども、所属している生産組合への出荷量は突出して1位。とりあえず組合の存続は安泰なのである。

正直に言うと、地域おこし協力隊のときの方が忙しかった。けれども今は土日祝日が無い。故に、相殺されて、今も忙しいと思える。そもそも忙しさの質が違う。今のそれは心地よい忙しさと言うわけだ。

「仲間がほしい」。僕が地域おこし協力隊になる前、親方さんは僕にそう告げた。ここにきて、その期待に応えたわけだ。地域おこし協力隊時代には就農研修と同時に、就農後に役立つであろう取り組みも行っていた。インターネットに慣れておくことを続けていたのである。

目標としていたTwitterのフォロワー1万人は達成した。試しに”乾燥きのこ”を販売してみたが、そこそこの人数の人が買ってくれたのである。インターネット戦略的には合格と言ってもいいだろう。

だが、インターネットだけでは駄目なことも知り得ていた。やはりリアルイベントでの対面販売の方が強力だ。こつこつと露出を増やして、すこしづつだが信用を積み重ねる必要がある。

おそらく、リアルイベントでの出店を主に置き、それを補完する形でインターネットを使うことが正解に近いのであろう。リアルイベントには年4回以上は参加したい。地元のマルシェからはじめて、都市のデパートで行われる『北海道物産展』を目指す。最終ゴールは東京は新宿伊勢丹。新宿3丁目を目標に頑張りたいのだ。

おそらく敵はウニ・カニ・イクラになるだろう。そこにスイーツも参戦してくる。華の無い”きのこ”では相手にならないと思う。そこへ挑むには敵も多すぎる。けれども”いかめし”には勝負を挑めそうだ。地味系の椅子はまだ空いている。どうだろう。

これはもう僕ひとりでは無理だ。チームを組んで戦う必要がある。僕は親方さんに相談した。戦略を細かく説明した。肝は失敗を恐れず諦めないこと。結果から言うとGOサインが出た。だが、2日後にはNGが出た。やはり無謀な挑戦はできないということだった。

僕は半分そうなることを予感していた。それはそうだろうと。ここで動き出せるのならば、今頃はとっくに走っているのである。そもそも、この状況で動き出そうとすることの方がおかしいのだ。故に僕はすんなりと受け入れた。次の一手も考えておいたからである。

僕がひとりでがんばる。そうすれば、親方さん達も途中で乗ってくるかもしれない。とにかく僕には『動かない』という選択肢はなかったのである。

てはじめに、イベントへ出店することにした。タイミングよく、生産組合に出店依頼が来ていたからだ。それを僕がまるまる請け負った。ブースを作って、出店して、売り上げを作ってきた。いろいろと失敗はした。けれども完売はしてきた。やればなんとかなるものである。

これからの農家として、やれることは多くある。僕はすべてに挑戦してみるつもりだ。そんなに大層なことではない。淡々と準備を進め、失敗を恐れずに黙々と進めばいいのである。僕の地域おこしはこれからが本番だ。


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