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【ためスモインタビューvol.7】富山の酒を盛り上げたいーー田尻本店店主・犬島唯司さん

富山県富山市岩瀬。日本海に面したこのまちは、かつて日本海で活躍した北前船の廻船問屋が立ち並んでいました。現在でも、石畳の道や歴史的建造物が残っており、かつての姿を想起させます。

現在岩瀬には、古民家や土蔵をリノベーションしたお店、そしてクラフト作家さんのアトリエなどが数多くあります。

今回は、土蔵をリノベーションし、巨大なワインセラーを有するこだわりの酒屋・田尻本店の店長・犬島唯司さんにお話を伺いました。

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◎土蔵を活用した酒屋

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ーー土蔵をリノベーションされた店内は、雰囲気があって素敵ですね。

この土蔵は、約160年前に北前船で栄えた廻船問屋「森家」の倉庫でした。北前船の時代が終わると、オーナーも何度か変わったようです。建物がボロボロになったので前オーナーのお米屋さんは、駐車場にしようとしていたそうなんですよ。

ーーしかし、酒屋として生まれ変わったのですね。

はい。ここをリノベーションして酒屋にしようとしたのが、岩瀬にある酒蔵・桝田酒造店の桝田隆一郎さんでした。

長年、岩瀬のまちの酒屋として愛されてきた「田尻酒店」は、コンビニの横にワインセラーを増設するなど面白い経営をしていました。そこで「この土蔵で酒屋を開かないか」と声がかかったのです。今から16年前のことです。

ーー店内には大きなワインセラーがありますが、その時の名残なのでしょうか。

はい。店の50坪のうち20坪がワインセラーになっています。先代が特にワインと日本酒にこだわっていたためです。温度は常に13度。ワインを長期間熟成させるのにちょうどいい温度と言われています。日本酒も同じように長期間貯蔵しようと思い、同じくワインセラーの中で保管しています。

ーーワインの保存には温度が大切だとよく耳にしますが、どんな点に気をつけたら良いのでしょうか。

温度を決めたらそれをキープするのが大切。富山の冬は寒いので、冬は外よりも温かい状態に保つようにしています。

ーー日本酒の長期熟成というのは、初めて聞きました。

日本酒の熟成に対する考えは、蔵元によってまちまちです。僕たちがメインに取り扱っている岩瀬の日本酒・満寿泉(ますいずみ)の大吟醸は20年〜30年寝かすとよいと言われています。熟成古酒に取り組んでいる蔵元さんの中には、常温でいいと言っておられるところもあれば、マイナス3度がよいと言われるところもありますし、そもそも熟成を想定していない蔵元もあります。

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▲店内にはお酒がズラリ。

ーーこちらには、特に富山県内の酒蔵やワイナリーのお酒が豊富に取り揃えられていますね。

はい。県内の酒蔵さんやワイナリーを訪問して、こだわりを直接聞き、取り扱うようにしています。

ラインナップのこだわりはとことん「美味しいもの」を取り揃えること。作り手と直接取引できて、信頼関係を築けるところから仕入れています。こだわりのあるメーカーさんとお付き合いしていきたいので。

ーー犬島さんにとって、「美味しい」とはなんだと思いますか。

美味しいお酒、美味しいコーヒー、美味しいジュースって、人によるんですよね。「これ」という正解がないからなかなか難しい。僕の好みだけを取り揃えていては酒のプロとしてイマイチだと思うので、「こういうお客さんにはこういう味」を提案できる状態にしています。

もちろん、自分の店なので自分の特色は出したいから、自分の好みのお酒は多く取り揃えていますけどね。

ーーぜひ私にもオススメのお酒を教えていただきたいのですが…。私は、富山の日本酒で言うと「羽根屋」が好きです。

香りが華やかなタイプがお好きってことですね。富美菊酒造さんの「羽根屋」は、香りの華やかさという長所をかなり伸ばしているお酒造りをされているので、同じタイプのお酒を後ほどご紹介しますよ。

ーー富山市内でオススメの飲食店さんを教えてください。

醸家さん、酒菜工房だいさん、酒菜ちゃぶ有さんでしょうか。いずれも日本酒に力を入れておられるお店で、オーナーさんご自身も日本酒について詳しいので、飲みながら日本酒について深く知ることができると思いますよ。

ーー居酒屋がきっかけで、日本酒の美味しさに気付き、酒屋に足を運ばれる方も多いのでしょうか。

はい。居酒屋が入り口というのはよくあるパターンです。居酒屋さんから「岩瀬に素敵な酒屋があるよ」ってお客さんに紹介してもらえたら嬉しいし、逆に観光客の方がうちに来られた時にオススメの居酒屋さんをご紹介するという関係ができたらいいですね。

◎僕も「よそ者」なんです

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ーー犬島さんは生まれも育ちも岩瀬なんですか。

実は、9年前にこの酒屋を継ぐ前までは岩瀬に縁もゆかりもありませんでした。生まれも育ちも富山市街地なので、県内移住したような感覚です。

9年前は正直、岩瀬というまちに馴染むのに必死でした。でも、当時世話をしてくれた方が地元の方をつなげてくれ、岩瀬は僕を受け入れてくれました。

ーー最初は「アウェイ」だった場所で、ご商売をされるというのは大変ではなかったですか。

正直、相当心細かったですね。地域に馴染むためにいろんなことを気にしましたよ。

先代からのお客さんの中には、取引がなくなってしまった方ももちろんいらっしゃいます。でもその分、新しいご縁にも恵まれました。新しいお客さんに出会うために、特別なことはしていません。シンプルに「美味しいお酒をオススメする」という姿勢でやってきました。

ーー具体的に、岩瀬のまちに馴染むために苦労されたことはなんですか。

例えばですが、岩瀬の曳山まつりの際にご祝儀をどれくらい包めばいいかもわからなかったし(笑)。そういう細かいことがたくさんありました。2〜3年経ってやっと1年間の流れが掴めるようになったかな。

◎「岩瀬」というまちの今とこれから

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▲廻船問屋「森家」は国指定重要文化財に指定されている

ーー岩瀬には近年、新しいレストランやゲストハウスがオープンしたり、クラフト作家さんが工房を構えたりと、注目が集まっていますね。

はい。この動きは、20年前ほど前から始まっていました。昔ながらの雰囲気を残そう、復元しようという流れがあって。その頃から、石畳にしたり、メインストリートから電柱をなくしたりしてきました。

今ではミシュランガイドで二つ星を獲得した「御料理ふじ居」、同じく一つ星を獲得した「カーヴ・ユノキ」、お寿司を中心とした富山の海の幸を楽しめる「GEJO」、東京の有名店で修行したシェフが開業した「ピアットスズキチンクエ」などが隣接しています。

ーーこれほどまでに有名飲食店が立ち並ぶ場所というのも珍しいですよね。

岩瀬の飲食店のレベルはかなり高く、東京の有名シェフが「富山の岩瀬はすごいよ」と言っておられたと聞きました。県外からもたくさんの方が食べに来られています。「岩瀬はアツいですよ」と声を大にして言いたいですね。

ーー田尻本店さんが今後富山でやっていきたいことは何でしょうか。

富山のお酒を盛り上げたいという気持ちがありますね。そして、酒屋は飲食店さんとの繋がりが強いから、飲食店さんと一緒に富山のお酒を盛り上げていきたい。特に昨今はコロナで大打撃を受けている飲食店さんも多いので、その想いが強くなりました。

◎富山ならではの1日を

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▲岩瀬浜

ーーためスモを利用する方に、富山でどんな時間を過ごしていただきたいですか。

朝から晩までお酒と食を楽しむもよし、山も海も近いので、自分で食べるものを採りに行って、それを調理して楽しむもよし。やはり富山にきたら食は欠かせません。富山のお酒なら、僕が詳しくご紹介します。

ーー犬島さんご自身は、どんな休日の過ごし方をされていますか。

僕はスキーが大好きで、冬になると休みの日は必ずスキーに行くんです。アルバム1枚聴いている間に、自宅からスキー場まで行けてしまうんですよ。東京だとありえませんよね。友人にそれを言ったら「東京だと練馬のインターまでも辿り着いてないよ」って言われました(笑)。

岩瀬だと歩いて海に行けますし、これほど海と山が身近なところは全国的にみても珍しいですよ。以前は、ジェットスキーにもハマっていたんですけど、海まで数時間かかるような場所に住んでいたら、あれほど高いもの買い物をしてまで趣味にできませんでした(笑)

マリンスポーツやウィンタースポーツ、登山などがお好きな方には絶好の場所です。

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ブリ料理

©︎とやま観光推進機構

海と山との近さが織りなす食の美味しさ、美しい風土が産むお酒の旨さ、そして古き良きものを守りながらも、新しい文化を作り出す人々の姿。

富山には、「よそ者」の背中を押してくれる存在があります。そして、心と身体を癒してくれる食と酒もあります。

豊かな食文化のもとで暮らしてみたいなら。
お酒が大好きなら。
アウトドアがお好きなら。

是非一度、富山へ足を運んでみてください。ためスモパートナーはあなたの滞在を全力でサポートします。

<今回ご紹介したためスモパートナー>
犬島唯司(いぬじま・ただし)
富山県富山市生まれ。大学卒業後、家業の酒屋を継ぐために神奈川県の酒屋で2年間修行。その後Uターンし家業を継ぐ。2012年、富山市岩瀬の土蔵をリノベーションした酒屋「田尻本店」の跡を継ぐ。ワインと日本酒のラインナップに力を入れており、酒蔵に足を運んで作り手のこだわりをじっくりと聴く。趣味はスキー。


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