シュレディンガーのクリスマスケーキ

今年もクリスマスケーキの情報が溢れる季節がやってきた。

私はクリスマスケーキが大好きだ。シュトーレンは大好物だし、当日に食べるブッシュ・ド・ノエルも、定番のホール・ショートケーキも、ダークチョコレートに金箔が美しいオペラとか、ラズベリーやブルーベリーがあしらわれたチョコレート・ケーキも最高だ。フルーツがふんだんに乗っていて中はカスタードクリームがたっぷり入ったホール・タルトも、宝箱のようでやはりクリスマスにぴったりだ。意外と、ラム酒がきいたティラミスとか、シンプルなレアチーズケーキも、大人な感じで素敵だ。とにかく、私はクリスマスケーキ…クリスマスにふさわしいケーキを探すことが大好きで、今年はこれがいいなあ、とサーチをするのが、秋の大きな楽しみだ。

でも毎年、そのどれも買わずに終わっている。だから、今年も入念に探しているけれど、今年も結局買わないかもしれない。後悔はしてこなかったけれど、せっかくだから今年は、私が注目しているクリスマスケーキを列挙しておこうと思う。

①ジェラート・ピケ「ブラウンベアの焦がしバターキャラメルケーキ」 4,309円

去年も、私のベストオブクリスマスケーキ5選に入っていたのがジェラート・ピケのクリスマスケーキだ。あまりにも可愛くて、一目惚れをした。見た瞬間、これがあるクリスマスは、なんて理想的なんだろうとテンションが上がった。真ん中にいるピケベアがなんとも言えない可愛さ。今年はバターキャラメル味ということで、ちょっと珍しくてそれも良い。私はこのケーキを見た時に、暖かい暖炉やストウブの近く、赤チェック柄のランチョンマットを敷いて、ダージリンティーや紅茶のリキュールのミルクティーを淹れる光景が浮かんだ。


②エシレ・メゾン デュ ブール「ブッシュ・ド・ノエル・エシレ」12,960円

とても、とても美味しいバターで有名なエシレ。バタークリームを贅沢に使ったこちらのバター・ブッシュ・ド・ノエルは、本当にリッチすぎる。まあ、クリスマスケーキの値段ではない気がするけれど(笑)、美しいし、間違いなく美味しい。コーヒーに合うだろうから、カルーア・ミルクやブラックコーヒーで乾杯もいいし、もちろん白ワインも合いそう。側には大きなクリスマスツリーがあって、赤い包装紙のプレゼントとキャンディやクッキーの入った水玉もようの靴下があって、窓の外では雪が降っていてくれたらいい。


③ピエール マルコリーニ(Pierre Marcolini)「ノエル ドゥ ピエール 2021」6,588円

この、フランボワーズの赤!うっとりするほど鮮やかで美しいケーキ。しかもショコラムースに、バニラブリュレやミルクチョコがけナッツを合わせているという、個人的に大好物のオンパレード…。甘ずっぱくて、大人な味だろうな。勝負ケーキみたいな感じだから、恋人と過ごす初めてのクリスマスや、プロポーズにもピッタリだろうな。このケーキとシャンパンと花束があれば、きっと二つ返事でOKだろう。たぶん。


④ジョエル・ロブション「ノエル ブランブラン」 3,780円

これ、すごくやさしい気分になるケーキ。ホワイトチョコレートムースにフランボワーズのジュレ。毎年人気のクリスマス限定ケーキ。雪の中で遊んでいるウサギのモチーフが素敵。ジョエル・ロブションからは、薔薇のテイストのロマンチックなクリスマスケーキも発表されていて、こちらは真っ赤で圧倒される美しさだけれど、今の私の気分はノエル・ブランブラン。しんしんと寒いクリスマスの夜、肌寒い家の隅で、ココアと一緒に沈黙のなかで食べたいケーキ。たぶん泣いてしまうだろう。


⑤SMILELABO(スマイルラボ)「シロクマ・キボリーヌ」
4,200円

こちらは木彫り風シロクマをモチーフにしたケーキ。ひたすら可愛すぎて、食べられない。クマはもちろんのこと、黄色い斧がまた可愛い。キボリーヌて、名前まで可愛いってどういうこと。もう、存在が可愛い。ミルキーなチーズケーキに、フランボワーズやアプリコット、パイナップルジュレが入っているそう。これ書いている時点で、もう完売してた。さすがですね…。争奪戦を勝ち抜いた方々、おめでとうございます。


・・・こうして並べると、今年の私の気分は、アニマルモチーフのものが多い。昔はまさにパーティ向けの、いちごがたくさん乗った大きな大きなクリスマスケーキに惹かれたけれど、最近、さりげなくかわいいクリスマスケーキもいいなと思う気分だ。こんな素敵なものを作り出せる人間は、本当にすごい。

これだけ「食べたい」とか「可愛い」などと語彙力のないコメントしておきながら、変な話だが…
私がこれだけクリスマスケーキに惹かれる理由は、美味しそうだからとか、綺麗だからとか、甘党だからとかいう理由だけではない。
実際、私はクリスマスそのものに大した感慨もない。思い入れも無いし、特別うきうきするイベントも予定していない。でも私はクリスマスケーキを見るたびに、そのケーキが内包する無数の夢想や願いや奇跡のことを思う。このケーキを買うに至る多くの生の存在と思考のことを思う。買うか、買わないかはさておき、ありえたすべてのクリスマスのことを思う。そのすべてが私にとって尊く特別なものだ。

私もそのうち、毎年見送っているクリスマスケーキを予約するのだろうか。そんな日が来たらいいと願う。いつか選び抜いたひとつのケーキを争奪戦に勝って、用意してクリスマスを迎えたい。それで夢想のひとつを叶えたい。それは今年ではないかもしれない、いつかはわからないし、この生のうちに来るのかもわからない。私にとって淡くも捨てがたいひとつの生きる理由になってくれている限り、私はクリスマスケーキを買わないのかもしれない。

だから私はクリスマスケーキがきっと一生大好きだ。

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