昨日の悩みを朝に持ち越す

ざあっと大勢の拍手の音の中、静かにそっとお辞儀をする。大きなステージの上に立っている私は、先ほど夢を巻き取るアンモナイトについての講演を終えたばかり。

緊張が解けたのか、ぶるっと身震いが起きる。ステージの上を舞台裏へと進みながら、お手洗いの位置を思い出そうとした。……夢から覚めた。

私の見る夢にはよくアンモナイトが出てくる。貝の殻をはんぶんに切り取って、ぐるぐるの断面が見えている形のアンモナイト。けっして、巻貝の形そのままでは出てこない。らせんの模様にゆがんだ四角がはまりこんでいる、あの断面が好ましく思えるのかもしれない。

そういえば、らせん階段の形も好きだ。平面の上では同じ位置をぐるぐるしているだけのようであるのに、確実に高さを変えていく通路。

自分の持っている思い悩みもらせん階段みたいに、ぐるぐるしてても階層は変わってあるといいな。平面的に見るとわかりづらいけれど、立体的に見たならば位置が動いている、そんな成長のありかた。

あまり私は成長してないな、まだ悩んでいる。朝になって目覚めた時に薄暗いと、頭の中は夜の続きが始まるようだ。思い悩みながら眠りについた昨夜の続き。それでも、どこかしら救いあるように思えるのは今が朝のじかんだから。

外は雨が降っている。今日はいちにち雨が降る。