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落ちこぼれシニアのリベンジ読書~『戦争と平和 第二部 第二編』トルストイ著~

ピエールがフリーメーソンに入会。
そのタイミングから何となく言動が変わってきたようだ。「世間知らずの、ボンボンの金持ち野郎」から「隣人愛を唱え、人間の使命を説く講釈タレ」へと様変わりした感がある。
特にアンドレイ公爵との再会・議論の場面(新潮文庫P195~237)は、ピエールの人間的成長という、人格の変化を感じた。いい意味で神と愛に強いこだわりを持つようになった。ただその分、自分の主張にも力が入る。
そんなピエールを見て、偏屈がかったアンドレイ公爵の父(老公爵)に気に入られたのは笑える話である。
(引用はじめ)
「おまえの友人は頼もしい男だよ。わしは好きになったぞ! わしをあおりおった。小賢しいことを言うやつはいるが、聞く気がせん、ところがこの男は言うことは嘘っぱちだが、この年寄りの胸に火をつけおったわ」(新潮文庫P235)
(引用終わり)
 
そもそもフリーメーソンとは?
入会することで、人間の思考や言動が一気に変わるような、思想的に大きな影響を与える組織なのか。
調べてみると、「謎の組織」「秘密結社」「陰謀論」などきな臭いものから、ロータリークラブやライオンズクラブに似たようなものなど、いろいろな記述がある。
理念は「自由」「平等」「友愛」「寛容」「人道」。フランス革命の理念に似ている。
宗教や人種の垣根を超えて、掲げた理念を積極的に遂行しようという組織のようだ。
 
そう言えば、トーマス・マン『魔の山』のセテムブリーニもフリーメーソンだった。
そもそも『戦争と平和』と『魔の山』と、ともに戦争を背景としており、大自然も登場する。そこにフリーメーソンという組織が関係してくることで、いよいよその類似性は大きくなる。
セテムブリーニは人文学者として、言動が理路整然としていたように思うが、ピエールはどうなのだろうか。その講釈は付け焼刃なのだろうか。
人間観察力の鋭い(と思われる)老公爵の言葉「この男の言うことは嘘っぱちだが、この年寄りの胸に火をつけおったわ」から考えるに、ピエールの今後が楽しみである。
果して「金持ちボンボン」体質から脱し、本当に人間的成長を示すことができたのだろうか。

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