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偏愛読書ページかじり

まえがきコッチョリーノ

#読書の秋2020  ということで、お気づきだろうか、今月はちょっと意識して連続で読書がらみの記事を仕立て上げている。課題図書とは関係ないが。食いしん坊だから、本もかじるかじる。文中に出てくると思うが、かじるだけでなくなめる。埃と泥まみれな工房で唯一できないのが読書なので、スキさえあれば、工房の横でちょっとかじる。食と文学、現代英文学につづいて今回は緻密イラストが要の本のこと。

「河童の覗いたシリーズ」


いきなりだが、妹尾河童の緻密イラスト本はすべて狂喜乱舞なわけで。

「河童のスケッチブック」(単行本・文庫本/文藝春秋)や「河童が覗いた仕事場」(文藝春秋)や、「河童が覗いたヨーロッパ」(河童が覗いたシリーズすべて好き/新潮社)などは、家宝ものだ。

余談だが、我が家は、壁一面の本棚に、中心から左右に分断してそれそれの本を所蔵している。右側は家人が在住していたベルギーのIKEAで買った本棚、左側はわたしが在住していたイタリアのIKEAで買ったものだが、ふたつとも同シリーズで色もおんなじ。なんともファニーな本棚ストーリーがある。

「築地市場 絵で見る魚市場の一日」

緻密なイラスト本に戻ろう。

そうそう、緻密イラストは、手描きがいい。
モリナガ・ヨウの技巧にも舌をまく。家人コレクションのプラモ迷宮日記」(大日本絵画)シリーズをはじめ、わたしはというと、数年前に出版された「築地市場 絵でみる魚市場の一日」(小峰書店)にやられたクチ。初版発売期、代官山の蔦屋書店でそれを見るなり、緻密イラスト好き+食いしん坊が二乗され、電気ショック走り、数冊を狂い買したほど。(※)

「図解絵本 東京スカイツリー」 (ポプラ社)もいいけれど、これから揚々と生きる建物より、築地市場という “ 消え去る東京 “(わたしたちの心の台所)を描き残してくれた感謝もあふれ、乱舞した。帯には「ありがとう築地」(小峰書店)なんて買いてあって、泣ける。

※来日したとき築地市場に興味を持ってくれたイタリア人に、後日お土産で持って行った。

「モノづくり断面図鑑」
「クロスセッション(断面図)」

海外ものにも、ぶるぶる震える魅力的な手描きの図解絵本などがたくさんあるので、渡航するたび大型から小さな本屋さんまでをよく漁る。

本棚から引っ張り出してきたのはイギリスの大判絵本(日本語版)。スティーブン・ビースティーの絵、リチャード・プラッの解説本「クロスセクション」(岩浪書店)と「モノづくり断面図鑑」(偕成社 ※残念ながら出版社サイトからは検出されない)あたり。自分も読みたいから、このあたりの乗り物や建物や人体関連本を、小さな息子にもいかがですかとすすめていたな。

「とこちゃんはどこ」


さて、これら細密イラストというか、図解本のとりこになったきっかけは、童心に夢中になった絵本にある。

ご存知であろう加古里子の絵本。中でも狂い読みしたのが、加古里子/松岡享子の「とこちゃんはどこ」(福音館書店)で、特にデパートでとこちゃんが迷子になるページが好きだった。とこちゃんがもうどこにいるか知ってるのに、一度目をつむってパッと開け「どーこだ?」なんて言いながら、なめるように絵を見ていた記憶がある。それはもうしつこく。鼻がページにつくほど世界に入り込んでいたので、紙の匂いも記憶に同化している。たしか幼稚園の絵本バッグに毎月配られた「こどものとも」「かがくのとも」の中の一冊だったんだと思う。年代的には初版だったはずだが、実家には残っておらず、大人になって買いなおした。

同著者の「からすのパンやさん」(偕成社)は、断面図的な絵面ではなかったが、パンの種類が細かく描かれているページが好きだった。

「ものがたりの家」

久しぶりに入手したのは、今年夏に発売された 吉田誠治「ものがたりの家 美術設定集」(PIE International)。上記に紹介したいくつかの本とちょっとちがうのは、ペンとインクを握るイラストレータではなく、同人誌からブレイクした背景グラフィッカーだから。

「カカオの木のツリーハウス」と「水車小屋のリンゴ酒」のページがお気に入り。こういうちょっとおいしそうなページをかじるのがすきなのだ。



最初は、ペンのブレが見えないことにジレンマのようなものが走ったが、そんな自分の取るに足らないトリビアルな感情は、かりっとかじって飲み込んだ。

時代は変わっても、魅力的なものがある。
偏愛を、もっとかじろうよ。

追記
偏愛のちっぽけなお礼として、
あえて出版社にハイパーリンクさせました。

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