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D・カーネギー「人を動かす」

読書記録2つめ。

D・カーネギー 著、山口博 訳
「人を動かす 文庫版」創元社 2016年

1938年にアメリカで初版発行、日本では1958年初版発行以来、ずっと読まれている歴史的ベストセラー(だそう)。

去年の夏、仕事がパンクしそうで周囲の人が楽しているように感じてイライラしていた時に、仕事帰りに立ち寄った本屋でたまたま見つけて購入。
特に当てがある訳では無く、何かヒントになる本があるはず、、と必死の思いで1時間くらい店内を彷徨した末にこれを見つけて「これだ!」と思った事を今でも覚えています。これと「道は開ける」を購入。

最近出た本には心理的安全、メモの魔術、などホッとなキーワードが並ぶけれどもそういう事じゃないんだ。もっと根本的で、原点に立ち戻れるようなものが欲しいんだ、という方にお勧め。


人を動かす、人に好かれる、人を説得する、人を変える
というテーマに分かれているが、全体を通じて書かれているのは

「相手を大事にしない限り、相手は動かないし、こちらを大事にしてくれない」

逆にいうと

「相手に動いて欲しかったり、大事にして欲しかったら、まず自分が相手を大事にすること」


ということ。

例に挙げると
・人は自分を認めてくれる、好きになってくれる人を好きになる
     →      相手に関心を寄せて相手の興味、関心のある事を話す 

・人は正論を言っても動かない。間違いを指摘しても反発するだけ
   → 真っ向から否定するのではなく「私は○○と思いますが、いかがですか?」など、相手に気づかせる     など




個人的に役に立ったのは
・「1.人を動かす三原則」の「人の立場に身を置く」
・「2.人に好かれる六原則」の「誠実な関心を寄せる」

の2点。

「人の立場に身を置く」では、ダメな事例として広告代理店の営業が、各地方放送局の局長宛に送った手紙が挙げられている。
手紙は局長宛に状況報告を依頼するものだが、広告代理店側の都合や望みが書かれ、送られた相手への配慮や相手へのメリットは一切ない。
端から見れば「これで快く人が動く訳ないよ…」と分かる内容だが、送った本人には相手を馬鹿にするつもりは無かったのかもしれない。ただ、真摯な(ただし自分だけにとっての)気持ちで依頼していたのかもしれない。
はっきり言って相手にとってはそんな事どうだって良い。相手にとっても大事なのは「自分」である。「自分」を蔑ろにされて喜んで動くはずもない。
当たり前の話だが、人はともすると自分のことですぐ頭がいっぱいになってしまう。周囲のことは意識的に考える癖を付けないと簡単に意識の外に行ってしまう。そして、一方的に依頼したり、怒ったりして相手の不況を買ってしまう。

そうなりたくなければ、相手の関心ごとに沿うような話や、相手にとってメリットのある依頼を持っていく必要がある。
(上記からすると「人に頼む」という行為は相手にメリットが無さそうに見えるが、相手の「誰かの役に立ちたい」という気持ちを満たす、というメリットがあるのである)


「誠実な関心を寄せる」も少し似ている。
ここでは相手に「私はあなたに興味がありますよ」というメッセージを伝える事の重要性と効果を挙げている。例としてアメリカ大統領、ルーズヴェルトが使用人の名前を覚え、親しみを込めて接しており、それが使用人にとって喜ばしい事だったと書かれている。(ルーズヴェルトと言われてもピンと来ないが、日本の首相や社長、など組織のトップの立ち振る舞いと考えると納得がいく)

誰かから「価値のある個人」として認識される事ほど、嬉しい事はない。
現代でも私を含めて沢山の人同じものを求めている。
であれば、あなたの周りにいる誰かも同じ。好きになって欲しければ、まずは関心を寄せること。あなたの凄さ、強みをPRすることより大事。


実はこの本を買った翌日、仕事の多すぎコノヤローMTGを上司も交えて開催予定で、その場で仕事の量や、引き継ぎのされなさ、フォロー体制についての不満をぶちまけないとやってられない精神状態になっていた。
この本を買った日の夜、上の2つの項目を読んで改めて周囲の人の立場や、周囲の人がしてくれていた点を思い返して心が落ち着き、翌日のMTGでも不満をぶちまける事無く友好的に済んだ。あのままイライラを相手にぶつけていたら、どうなっていたかを考えるとゾッとする。
(決して私が望んだフォロー内容では無かったが、フォローしてくれていたことに気づいた)


今でも定期的に読み返す良本。

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