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第一章 早春北帰行と帯広弾丸&四国フリー獲得旅(その4)

15 神戸港→高松→坂出

 帯広から帰阪して1週間、土曜深夜に降り立った駅は三ノ宮。姫路ゆき新快速も最終が出たこの時間に、数名の利用客を乗せた連絡バスが10分ほど走り、加藤汽船のジャンボフェリーのターミナルまで運んでくれる。今回の旅は瀬戸内海を夜のうちにフェリーで渡り、早朝から四国を駆け回るという、まさしく「乗り鉄」冥利に尽きる旅程となっている。
 今回のきっぷは先週、帯広駅で買い求めた「四国フリーきっぷ」である。JR四国全線の特急列車の普通車自由席、土佐くろしお鉄道線(窪川~若井間)の普通列車の普通車自由席及びJR四国バスの路線バス(高速バスを除く)が利用できるきっぷで、こちらは3日間有効。ねだんは16,140円だ。序章で「北海道フリーパス」について触れた内容と同様、四国での限定カードの受け取り条件が「(JR北海道の窓口で購入した)四国フリーきっぷ」の利用者であることなのだ。配布駅はこちらも5か所で、高松・坂出・松山・徳島・高知の鉄道案内所で、営業時間等の詳細はわからなかったものの、駅の改札口横にあることから、駅改札口に駅員がいる時間帯なら受け取りが可能と推察した。四国の4県庁所在地は高松―徳島間が70kmほど、他の3都市間も直線距離なら150kmほどの距離で位置しており、特急を使えば2時間見ておけば問題なく移動できると考えてよい。
 しかも、徳島―阿波池田間を除いて各県庁間には、特急列車の設定がほぼ1時間に1本あり、乗ってきた列車で再び来た道を戻るイメージでルートを思索する。高松→坂出→松山→高知と回り、徳島は列車の接続に応じて高松回り(南風+うずしお)にするか穴吹回り(南風+剣山)にするかを判断することにした。全線フリーで、自由席利用だからこそできる使い方といえよう。
 高松からは後続する「いしづち103号」を坂出からつかまえる段取りで、高松5時35分発の快速「マリンライナー4号」からスタート。駅改札口で早速、限定カードを受け取って四国行脚のスタートだ。高松駅の限定カードは開業当時の快速マリンライナー213系と現在の快速マリンライナー223系5000番台と5000系の写真を並べたものだ。瀬戸大橋開業当時は特急がJR四国のキハ181系と185系、快速がJR西日本の213系、普通が両社の111系や113・115系で乗り入れていたが、2020年現在で特急列車はJR四国の特急型気動車各系列、快速マリンライナーはグリーン車付き3両編成がJR四国の5000系と普通車のみの2両編成を組むJR西日本の223系5000番台がタッグを組むようになり、普通列車の直通はなくなった。
 坂出に到着後、改札口で限定カードの旨について尋ねると、こちらも難なく入手できた。坂出駅の限定カードは瀬戸大橋アンパンマントロッコと8000系のアンパンマン列車。車内の案内放送もアンパンマンの声によって流れる、こだわりの列車だ。

16 坂出→松山→高知


 坂出からは予定通り「いしづち103号」で松山をめざす。この列車は当時まだ本数が少なかった新鋭8600系電車によるもので、8000系の次代を担う車両として登場した。8000系が制御機能付き振子型車両であるのに対して、8600系は車体傾斜機能を活かして曲線を高速で走るようにした車両で、振子型車両よりも台車周辺の機構を単純化できるところに着目したものである。現行のダイヤであれば、大きなスピードダウンもなく導入できる目途がついたことから、この旅の頃から順次、増備が開始されている。
 松山駅に到着してすぐに鉄道案内所に向かい、限定カードについて尋ねると、ここでもすぐに用意してもらえた。松山駅では7時から21時と掲示があるのだが、他の駅では徳島で見かけたのみで、時間についてはよくわからないままとなってしまっている。松山駅の限定カードはデビュー当時の緑帯を纏ったキハ185系「しおかぜ」と先ほど乗ってきた8600系の2両編成が写ったもの。単線区間で白昼堂々と8600系の2連が単独で特急列車として走ることはほとんどなく、その意味ではちょっと珍しい写真といえるかもしれない。松山では乗り継ぎ時間を多めにとっておいたので、その間を活かして朝食の時間とした。
 松山からは多度津まで「しおかぜ・いしづち12号」に乗る。往路に続いて再び8600系だが、こちらは半室グリーン車を1号車に連結した7両編成での入線だ。この8600系はデビューが最近というだけあって、普通車にもすべての座席にコンセントが設置されており、その意味では他社の在来線特急車両群から一歩先を行っている。東海道・山陽新幹線にN700系が2007年から営業開始したことで、「車内でもコンセントが使える」ことが一気に標準化したといってもよいだろう。もちろん、その背景にはスマートフォンの普及をはじめとする、所持する電子機器や電化製品が多くなったということもあるかと思われる。
 多度津では35分の待ち合わせで高知ゆきの「南風7号」へ乗り換える。改札口の掲示ではわからないのだが、この列車も先ほど限定カードのところで述べた「アンパンマン列車」なのだ。ホームで列車の出入りをのんびり眺めているうちに賑やかなラッピングの列車が入線。先頭車1号車の車番は2030。高知県での乗り入れ先となる土佐くろしお鉄道の所有車両だが、検査も含めてJR四国の同型車と同じように運用されている。途中の大歩危では先行していた「四国まんなか物語」から下車してくる観光客をホーム越しに眺める。後日知ったことだが、ちょうどその列車に乗っていた知己がいたというのも、世間の狭さというか、偶然の奥ゆかしさをかみしめる旅の1ページといえようか。大歩危から高知へは1時間もかからずに到着した。

17 高知→徳島→神戸三宮

 
 高知でもそつなく限定カードを入手することに成功した。高知駅の限定カードは瀬戸大橋を快走する水色帯のキハ185系「南風」と現行の赤地のマークになってからの2000系「南風」のコンビ。世界初の制御機能付き振子型気動車としてデビューした2000系は、四国島内の鉄路の所要時間を異次元的なレベルで短縮した。前述した2時間程度の県都間所要時間は、この車両によってもたらされたと言っても過言ではない。実際にその技術は智頭急行のHOT7000系「スーパーはくと」やJR西日本のキハ187系、そしてJR北海道のキハ281・283系につながっており、現在は後継車種として2700系が登場し、順次土讃線の2000系を置き換えていくことになっている。
 高知では約30分の時間を確保してある……というより、乗ってきた列車の折り返し時分がそのまま待ち時間になっているといってよく、時間はそろそろ14時になろうとするところ。遅めの昼食となり、1つ残っていた地産地消の弁当を買い求めて、折り返し整備の終わったアンパンマン列車に再び乗りこむ。
 高知を出て、後免を過ぎた辺りから弁当を頬ばる。片付けた後に時刻表を引き出して、高松回りでいくか穴吹回り、つまり徳島線回りでいくかを検討する。高松回りだと宇多津と高松の2回乗り換えとなることに加えて、高松での接続も今ひとつとなるが、徳島線回りだと特急こそつながらないものの、ほどよい待ち合わせ時間で徳島ゆきの普通列車に乗ることができる。阿波池田―徳島間は普通列車で2時間ほどかかるのだが、それでも高松回りよりは充分早く着く。
 阿波池田からは1250形と1500形の2両編成。JR四国の一般型気動車は大型車体で高出力のエンジンを積んだ車両が主流となっており、着実に徳島県内でも勢力を拡大してきている。特急「剣山」が70分ほどかけて走る区間を、すれ違いのための停車時間を含めて2時間程度で走るというのは、案外健脚と言えるのではないだろうか。
 さて、ラストとなる徳島駅に到着。鉄道案内所の掲示によると、営業時間は17時30分まで。列車の到着は17時20分だったので、ある意味滑り込みセーフだった。ところが、ここの係員は限定カードの存在どころか、関連キャンペーンのことも知らず、リーフレットを見せたところで関係ないと素気ない。別の係員に求めるとすんなり出てきたのだが、最後が少し締まらない結果となった。徳島駅の限定カードはキハ185系の緑色「うずしお」とN2000系の赤地マークの「うずしお」。N2000系は高徳線の130km/h運転に対応した車両で、デザインがそれまでの2000系と異なっていることで違いがよくわかる。四国の現行の特急ヘッドマークは水色が予讃線系、赤色が土讃線系、緑色が高徳線、藍色が徳島線系などとなっている。徳島からは高速バスで一気に帰阪した。

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