東野珠実 TAMAMI TONO

雅楽演奏家/作曲家 伶楽舎所属 国立劇場雅楽声明専門委員会主査 https://sho…

東野珠実 TAMAMI TONO

雅楽演奏家/作曲家 伶楽舎所属 国立劇場雅楽声明専門委員会主査 https://shoroom.com/ https://hoshigatami.com/

最近の記事

星筐抄202302 (Hoshigatami Suits 202302) 初演にあたり

第35回現代邦楽作曲家連盟作品演奏会にて、正倉院復元楽器のための小品集「星筐抄230220」を中村かほるさん、中村華子さんとの共演で初演致しました。 正倉院復元楽器は雅楽のルーツということで、作曲にあたり、私は先達に倣って調絃や奏法等、現行雅楽の語法を起点に考えます。今回はそこから《絃のシルクロード》を遡ることをコンセプトに、唐由来の阮咸(げんかん)、中近東/インド由来の五絃琵琶の声に耳を傾けて、幻の吟遊詩人の歌を想い描きつつ、音楽の冒険に出ました。 国立劇場をはじめ、こ

    • 『Tapestry 〜織女〜』 楽曲解説

      Tapestry 〜織女〜 for Sho solo (1996)  笙という楽器は、大地に対し垂直に伸びた竹の姿をそのままに、手のひらで包み、かかげるようにして演奏される。そして、楽器の表面やその体内に平行に備えられた音穴をなでるように指を運ぶ。一方、地球上の音には上へ上へのびてゆこうとする性質があるという。そして笙に与えられる音高は平行な輪となって並んでいる。こうして縦糸と横糸が張られ、ここに響の織機(はた)はととのえられた。そして呼吸という色糸を走らせ、音楽をつむぎだ

      • 『景~Scenes of Spirits~』楽曲解説

        The Graham Ashton Brass Ensemble 委嘱 『景~Scenes of Spirits~』笙・尺八・箏とブラスアンサンブルのための 「ユーラシア大陸の東のはてに黄金の島が存在する。」マルコポーロの夢は文化という至宝として、厳然と日本に蓄えられている。それは、アジアを駈けた古代の人々の英知と日本の風土を結び、独自の美を探求し続けた創造の歴史につながる。 さて、もとより豊かな自然との親和性を重んじてきた日本独特の自然観を象徴する言葉に“花鳥風月”があ

        • 雅楽絵巻『鳥獣戯楽』 楽曲解説その2

          楽曲構成と演奏・鑑賞の手引き ◾️序 深山にて・ 竽:高山の峰を霧が上るように Ø 気流 ・ 笙:天上の鳥・迦陵頻伽の鳴き声。時に翻って宙を舞う Ø 鳥瞰の視点で物語の展開を誘導する。ときおり動物たちの戯れにフォーカスする (手塚治虫「火の鳥」は鳥獣戯画の視点か?) ◾️第一景 水遊 Mizuasobi横笛 排簫 箏 方響 ・ 箏:川の水源に近い岩場の渦巻く水流からはじまる。 Ø次第に下流に向かい流れが滑らかになる様子をアルペジオの変化で表す。 ・ 笛と排簫:川遊びする

        星筐抄202302 (Hoshigatami Suits 202302) 初演にあたり

          雅楽絵巻『鳥獣戯楽』 楽曲解説その1

          正倉院復元楽器のための 雅楽絵巻『鳥獣戯楽』(2017)の創作にあたり、楽曲解説として記したものです。楽章ごとの詳説はその2で。 伶楽舎委嘱作品 雅楽絵巻『鳥獣戯楽』-正倉院復元楽器のための-作曲:東野珠実  ご存知、鳥獣戯画(京都高山寺所蔵)は日本最古の漫画とも言われる異色の絵巻物です。描かれた時期は平安から鎌倉期(12 世紀から13 世紀)とされ、雅楽が醸成した時代と重なります。擬人化された動物たちの立居振舞いは、山水の遊びから宮中行事まで、中世日本の風俗を生きいきと

          雅楽絵巻『鳥獣戯楽』 楽曲解説その1