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『Tapestry 〜織女〜』 楽曲解説

Tapestry 〜織女〜 for Sho solo (1996)

 笙という楽器は、大地に対し垂直に伸びた竹の姿をそのままに、手のひらで包み、かかげるようにして演奏される。そして、楽器の表面やその体内に平行に備えられた音穴をなでるように指を運ぶ。一方、地球上の音には上へ上へのびてゆこうとする性質があるという。そして笙に与えられる音高は平行な輪となって並んでいる。こうして縦糸と横糸が張られ、ここに響の織機(はた)はととのえられた。そして呼吸という色糸を走らせ、音楽をつむぎだそう。(1996年初演時解説より)

 Tapestryは、笙という楽器の不思議にフォーカスして作曲した小品です。笛やピアノのように順序よく音の高低が並ぶ楽器とは対照的に、笙の17本の竹には、音高が不規則に配されています。その音列には何かしら根拠がありそうで、しかし謎とされている領域です。雅楽古典曲における笙の演奏には、「手移り」と呼ばれる一定の運指の法則が存在しますが、楽曲全体の中で、和音をつつがなく持続・移行するための技です。
 一方、この作品では、奏者は“あやとり”のように左右の指で楽器の一音一音を掬いとりつつ、笙に潜んだの音の文様を編み上げてゆきます。さらに運指の必然に適った方法で和音を重ね、リズムを加え、最終的には、美しく洗練された古典六重和音の響が星座のように浮かび上がります。

※ 尚、本作は、デュオ作品として、以下の連作を発表
『星筐V 〜二星〜』 (2017)
Hoshigatami V Jisei for Sho and Zephyros
世界初演:2017.8.19. 曽我部清典 & 東野珠実 duo concert 《真夏の夜の星筐》

『星筐VI 〜星合〜』(2020)
Hoshigatami VI Hoshiai for Sho and Oh Hichiriki
世界初演:2020.9.26 東京芸術劇場Born Creative Festival 2020


2022.1.14(金)  中村華子コンサート『はなみやび 弐』@杉並公会堂 小ホール
このたび、上記公演で再演されることとなりました。中村華子さん手のひらから織り出される響きの文様と色彩に、新たな輝きを期待して。

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はなみやび 弐


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