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「効率化」と聞くと思い出す本『モモ』(ミヒャエル・エンデ)【読書メモ】_10

時短、効率化、生産性アップ。働き方改革の大号令の中、これらの言葉を聞いたとき、ときどき感じる違和感。「それを実現できた社会は幸せなんだろうか?」

ミヒャエル・エンデの『モモ』(翻訳:大島かおり/岩波少年文庫)、読んだことある人どれぐらいいるだろう。1973年のドイツで刊行ということは、もう50年前の本になるのか(計算・雑)。映画化もされているので、あらすじぐらいは知っている人も多いかも?

小さな女の子モモと「時間どろぼう」の灰色の男たちの物語。おおらかにつつましく楽しく暮らしていた大人たちが、少しずつ心のゆとりをなくしていき「時間がない」が口癖になっていく。

以前とは比較にならないほど、お金は豊かになり、大人も子どももモノをたくさん手に入れる。でも、心はどんどん空っぽになっていく。そんな世界の物語です。

「『モモ』の世界で、時間どろぼうたちに時間を奪われた世界って、完全にオレンジ(達成型)の世界だよね」と思うのです。

オレンジ(達成型)=MBAやコンサルタントの方々が活躍する世界、だと思ってください。

オレンジの組織モデルが生まれたおかげで、世界には様々な技術革新やイノベーションが起きて、世界の食糧事情は急速によくなり、医療技術も格段に進歩して平均寿命は何十年も伸びています。

私自身、直近で西洋医学の進歩の恩恵を大きく受けました。
先日受けた手術は、2016年に保険適用になったばかりの最新技術。これ、誕生してなかったら、たぶん私の余命20年以上違った可能性がある

オレンジの世界の人たちの圧倒的な努力は、やっぱりすごいし尊敬するし、毎日おいしいごはんが食べられる世界をありがとう、と思う。

でも、そろそろ「十分成長はしたけれど、そろそろ次のステージに向けて、アップデートしたい・変革したい・脱皮したい」となるのは、自然な力学だと思うのです。だって、しあわせを感じられない人が増えてしまったんだもの。

『モモ』の時代には、まだ「じゃあ、どうすればいいのさ」には答えがなかったかもしれないけれど、今の時代にはグリーンだティールだと、答えが見えはじめている。

「効率化」、本当大事だし、私も読みたい本、書きたい記事が山のようにある。じっくり楽しむはずの小説だって、けっこう速読で読んだりする。そこまで速くは読めないけれど。

なんというか、「効率化」って2種類あるじゃないですか。
「いやな仕事を極力やりたくない」
「好きで好きで仕方がなくて、たくさんやりたい」

後者が増える人生は楽しいけれど、前者のための効率化なら、もう、思い切ってやめてしまうか、まったく違うやり方を摸索したほうがいいんじゃないか。だって、どうせなら人生しあわせに楽しく生きたいじゃないですか。

『モモ』、そんなことを考えたくなる本でした。
「忙しい」が口癖のビジネスパーソン、何のために生きているんだっけ、みたいに人生悩みだした人にオススメの一冊です。

君たちはどう生きるか』みたいに、過去の名作をマンガ化する動きが加速してくるなら、ぜひマンガにしてほしいな。

それにしても、ビジネス書で新しい組織マネジメントうんぬん、新しいハウツーや概念、本で読んでいても、さっくり忘れてしまうことも多いのに、こうやって20年以上前に読んだ本でも「ああ、あの本に書いていたっけ」と思い出せる物語の力ってすごいな。


*参考付録、『ティール組織』より。

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