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【読書感想文】三行で撃つ<善く、生きる>ための文章塾/近藤康太郎

暗闇の中を歩くようにTwitterを見ていた。文章を書きたい、もっと上手になりたいと思う中、新刊情報として『三行で撃つ』のタイトルに心打たれた。私が求めていた助けがそこにあったのである。

文章を書きたくて仕方がない。小説を書きたい。エッセイを書きたい。できれば文筆で生活ができるようになりたい。背中にベットリと張り付いた文章への欲望が荒ぶる中、私は道標を求めていた。

本書は7章で構成されており、文章の基本、禁じ手、ライターの心得、書くための4つの道具、読ませるための3感、自己管理の技術、文章を書くことの哲学が記されている。朝日新聞社で30年近く言葉の商売をしてこられた著者の信念を強く感じる内容だった。

冒頭から中盤までの文章のテクニックについては、確かにそうだと頭を何度も縦に振った。各章はホップとステップに内容が分かれていて、ホップは「ですます調」で、ステップは「である調」で書かれているのだが、違和感なく読み進められる。ステップでは各章ごとのテーマについて追撃の言葉が流れ込む。

終盤にかけては、物書きとして生きたいと悩み、行き詰まっている人を励まし、具体的な方法と共に勇気づけてくれる言葉が印象的だった。

自分のなかに、どうしても解決できない、しかし解決しないと前に進めない問いがある。その問いに答えようと試みるのが、究極的には、〈書く〉ということの本質だ。

なぜ文章を書くのか。なぜ書きたいという衝動に、胸が熱く燃えそうで、時に深海のうねりに巻き込まれるような息苦しさを覚えるのか。その答えが光として、目の前に差し出された本であった。

なぜ書くのか。自分が救われたいからだ。自分にしか書けない喜怒哀楽。それを表現するために書くのだ。

物語は、すべて語られてしまった。いまさら、なにを語るのか。いま、ものを書く意味はなにか。人に話し、心を動かすことができ、また自分も救われる。

本書に書かれたこの言葉に、自分が文章を書く意味を見つけた気がする。言葉を生業にして、なぜ文章を書き、いかにして善い文章を書くのかを問い続けた先人の悩みの果てが詰まっている。

俺もすごく悩んだんだよ。沢山考えたんだよ。という言葉が聞こえてくるような温かみのある文体で、孤独な背中を軽快に叩いてくれる。緊張する心を解放してくれるようなユーモアがあって、前向きにさせてくれる良書だった。

#読書感想文

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