センスは磨くより押し出す
みだれ髪を 京の島田にかえし朝 ふしてゐませの 君ゆりおこす
与謝野晶子が鉄幹と夜を初めて過ごした朝の歌。
乱れた髪を島田に結い直して、「朝まで寝ていてくださいね」と言った君を揺り起こす。
毎月鎌倉で行われている「文学と一花一葉講座」。
今月は与謝野晶子のみだれ髪がテーマでした。
みだれ髪の初版本(明治34年出版)は、上の画像のように細長く小ぶりです。これは袖珍本といって、袖に隠して読むスタイルの本。人前で大っぴらに読むのが憚られたから。
晶子の熱い思いが溢れたこの本を、当時の乙女たちは袖に隠しながら、こっそりと読んで胸を震わせたのでしょうね。
普通の感覚では、自分の恋愛体験を生々しく書き起こし、人様に読まれるなんてちょっと恥ずかしいと思うところ。「これが彼らのプレイスタイルなんでしょう」とズバリ言ったのは、30歳男子でした。
そうかそうかと、他の受講生の方々もうなずく。。
みなさん、それぞれのみだれ方が美しい。どれも違って、見ていて楽しい作品たち。
自由に表現するということは、圧倒的な個人でいること。その時ひとは「センスがないから…」と躊躇しがちではないでしょうか。
しかしながら、センスのない人はいません。ただ、弱いだけです。なぜって、好みは持ち合わせているのだから、それがその人の美学になる為には、強度を増せば良いのです。
なぜそれが好きなのか?その問いで自分をどんどん深めていくこと。広げるよりも深めることで強度は増します。
それがやがて光る個性となる。
100年読み継がれる名著とは、強度を増した感性を圧倒的に押し出して作られているから読者を離さない。
来月の「文学と一花一葉講座」は、宮沢賢治です。
さて、どんな花を選びましょうか。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?