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カンボジア人材の転換期

新聞報道によれば、2022年に新規入国した技能実習生は17万9千人と、コロナ前の95%程度まで回復したとされ、ようやく安定的に招聘できる環境が戻ってきたと見られている。

一方、外国人材を巡る様々な状況変化が表面化し、今後を懸念する声もあがっている。

顕著な例では、ベトナム実習生の「日本離れ」だ。

これまで半数以上を占める最大の派遣国であったが、希望者の減少が加速している。

人材確保に窮する監理団体は、次なる第三国への移行を模索しており、ベトナム隣国のカンボジアが注目を集めている。
カンボジア送出機関 NKパーソネルリンクの清野裕司さんによれば、特に今年に入ってから、監理団体からの視察が旺盛だという。

「一日で三組の見学を掛け持ちでご案内することもあります」と嬉しい悲鳴だ。技能実習・特定技能ともに様々な職種の引き合いが着々と増えているそうだ。

反面、候補者集めは以前に比べると難しくなってきているという。雇用者本位に安易な考えで求人をかけても有望な候補者を募ることは出来ない。

清野さんは監理団体と連携し、受入企業に丁寧に説明しながら、就業条件に見合った賃金や待遇を設定してもらうことに努めている。またSNSを駆使した独自のリクルーティング手法構築にも余念がない。

そして、これからは、人材募集力の弱い送出機関は淘汰されていくと断言する。その背景には、韓国との競合状況がある。
韓国では、EPS(Employment Permit System)という労働許可制を運用して外国人労働者を受け入れている。

不足している労働力を補うために、フィリピン、タイ、インドネシアなどのアジア諸国から労働者を招聘する制度として2004年に開始されたものだ。その後2018年に加わったカンボジアは、この五年余で大きく躍進した。

現在、カンボジア人3万3千人がEPSで韓国に在留し、今やネパール、ベトナムと肩を並べ、最大の派遣国になっているというのだ。

EPS人気の理由は、政府機関が職業を斡旋、転職サポートをすることや、渡航にあたっての経済的負担が少ないことが上げられる。日本の特定技能制度と類似している部分もあるが、資格要件の難易度は大きく異なる。

EPSは、韓国語を自力で習得し、「韓国語能力試験」に合格しさえすれば就業のチャンスが与えられる。

もしかしたら、第一希望:韓国(EPS)、滑り止め:日本(技能実習・特定技能)という選択が主流になりつつあるのかもしれない。

そして、カンボジア労働者のニーズは韓国にとどまらず、経済成長が著しいタイ、シンガポール等、近隣国においても高まっている。

まさに世界規模での人争奪戦である。

ここで競り勝っていくには、日本で働くことの価値や魅力の発信が鍵になることだろう。

(※このコラムは、ビル新聞2023年4月25日号掲載「カンボジア人材の転換期」Vol.47を加筆転載したものです。)

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