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【感想文】毛眼鏡の歌/川端康成

『私が作った毛眼鏡をご紹介します』

▼あらすじ:

ある男が元カノ・きみ子の抜け毛を集めてそれを輪っか状に二つ編んでそれらをヘアピンで繋いで「毛眼鏡けめがね」をこしらえて装着してみたらきみ子とかつて過ごした風景がたちまち彼女の幻に変化したり西方浄土に変化したりとそんな珍現象に興奮した男は「毛眼鏡よ 毛眼鏡よ~」とオリジナル毛眼鏡ソングを歌って終わる、的な話。

▼読書感想文:

キモッ!!

▼余談 ~ ぼくも毛眼鏡を作ったよ ~:

きみ子が男と別れることになった原因について、本書収録の『川端康成異相短編集』P.263~P.264を整理すると、

「きみ子は他の男に恋してしまったから」
だけでなく、
「かつてきみ子は疲れた彼女を静かに眠らせてくれるものと男を信じていた。なぜなら、きみ子の心の中には男の清らかな姿があったから。しかし、男は自らでその清らかな姿を濁してしまった。だから、彼女はこのまま生きるべきか死ぬべきか分からなくなった」
そのため男の元から去ったらしい。

と、これだけ聞いてもあまり要領を得ないが、要は「他に好きな男ができたし、オマエと居ると夜寝苦しくて死にたくなってくるから別れたい」ということだろう。これ、フラレタ男にしてみれば未練タラタラの半狂乱状態になってキモイ眼鏡を製作してもおかしくはないし心中お察しする……と言いたいところだが本書は不明瞭な表記が多すぎて、全体的にやっぱり意味不明なのが本音である。そこで今回、少しでも男の心境を把握して読解に役立てるべく、私も毛眼鏡を製作することにした。といっても、私は生まれてこのかた六十五年間に渡り恋人が居ないため、彼女なるものの髪の毛を採取することができない。あと、私はハゲているので私自身の髪の毛すらも採取できない。というわけで、仕方なく母親の寝室に侵入して枕に付いた髪の毛を採取して毛眼鏡をこしらえた。で、毛眼鏡をかけた状態で母愛用のコップを見たところ、母の幻なんて見える筈も無く相変わらずのコップが目に映った。母の愛車も、愛犬も、ハブラシも何ら変わることなくそのままの状態であった。それ即ち、本書に登場するイカレタ男と違って私は至って「正常」だからであろう。そんな私にしてみれば、川端康成はよくこんな珍妙な話を思い付くもんだなあと素直に感心したのである。

といったことを考えながら、この感想文を母親に見せたところ「キモッ!!」と言われた。

以上


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