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針と糸でもう少し縫わせて

小川糸さんのエッセイ『針と糸』を読んで印象に残っている事を、もう少し書いておきたくなったので書きます。


また銭湯に歩いて行きたくなっている

小川糸さんは日本にいる時は30分歩いて銭湯に通っていたらしい。銭湯への往復の道中で生まれた文章が沢山あるとも書かれていた。

歩くとリフレッシュにもなるし、アイデアも浮かんでくる。そして歩いた先には極上の癒しである銭湯が待ち構えてくれている。

僕も中野に住んでいた頃は高円寺の銭湯によく歩いて行っていた。その時の風景が瞬時に脳内に広がった。高架下にあるローカルなコンビニ。駅前に近づくにつれて増えてくる、チェーン店の光。居酒屋、日高屋、定食屋。

若さと愚かさの全てを賑やかさで包んでくれていた街だったな、と当時の記憶が蘇ってきました。

田舎に帰ってきてから散歩をしていない事にも気づきました。今年は銭湯でも何処でも良いので、何か目的の場所まで散歩してみようと思います。その道中を楽しみながら。

川に行きたくなっている

小川さんはその名にも組み入れる程に川が好きだそうだ。特に整備されていない自然なままの川が好きらしい。

そう言われて、ふと、自分が自然な川を訪れたのはいつだったか思い出したら、かなり昔の事だった。

川に行くのを目的として訪れたのは大学生の頃。親友と二人で親友が取れたての免許証を携えて川までドライブした。川のことよりその道中で食べた蕎麦のことの方がよく覚えている。あの時食べた蕎麦より美味しい蕎麦は中々見つからない。季節は春だったような気がするが、夏だったかもしれないし、秋だったかもしれない。とにかくそこの川は足首が浸る程あって、太陽の光を浴びて輝いていたのを覚えている。

今年はあの時の川のような川に行ってみたい。

衣食住のどれを特に大切にするのか

小川さんの印象ではイタリアは衣を、フランスは食を、ドイツは住を特に大切にしていると述べられていた。日本はきっと食だろう。僕も食を大切にしている。

食を大切にしている、と言いながら、一食一食に拘っているかと言うとそうでは無い。毎度の食事を全て栄養バランス満点のものにするのは難しいけれど、満点な日を増やしていくことは意識していきたい。

戦争の被害と加害

小川さんが長期滞在していたベルリンには「虐殺されたヨーロッパのユダヤ人のための記念碑」が建っているそうだ。

ベルリンは戦争の被害国であり加害国である。ベルリンはと言ったが日本だって戦争の被害国であり、加害国でもある。原爆によって日本が戦争の被害国であることは毎年思い出せるのだが、同時に加害国であったことも忘れないようにしていきたい。

旅をしたくなっている

小川さんはベルリン、ラトビア、モンゴルなど沢山の場所に訪れている。そしてそこで体験したことを文字にして伝えてくれた。

僕も行きたい場所に訪れて、その場所の魅力を自分の目で見て肌で感じたい。旅はいつでもできるよ、とも小川さんは教えてくれた。だから、いつでも気楽に旅に出てみようと思う。

新しい命を育む

小川さんにとって物語を書くことは、新しい命を育むことに近いと述べられている。自然に任せ、冬に集中して書き、春はそれを読み直し、夏には体を休め、秋に出版する。そういったリズムを心がけているそうだ。

素直に良いな、と思った。小川さんにとって書くきっかけは決して前向きなものではなかった。母からの日常的な暴力。それを小学生の頃、日記に書けるはずがなかった。だから日記には物語を書いた。それが小川さんの書くことの原点。そこから始まった、小川さんにとっての書くことが、今では命を育むことのように小川さんの身体に自然と馴染んでいる。

僕も気負わず、自然の流れに任せ、書くことを続けていきたいと思えた。

小川さんのエッセイは温かさと丁寧さの中にも強い意志や生命力がある。だからただ包まれるだけではなく、よし、僕も何かやってみようと、なる。

やりたい事がまた増えた。行きたい場所がまた増えた。そうやって、やりたい事が増えるのってかけがえのない幸せである。

終わり

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