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ただ、君との一日を繰り返したい。

あくまで凡人的な生活を送っている私ですが、稀にフィクションのような出来事もある。

ずっと友達だった年下の男の子とセックスした。(よければ前回記事もどうぞ!)普通の女の日常にも、こんなキラッとした瞬間があるんだな、世の中ってちょっと面白いかも。そう思ってもらえれば本望です!

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ここ2年くらいで一番多忙な日々を過ごしている。大学院進学を理由に会社を退職することも決まって、いろんな人から別れを惜しむ声をいただく。いつになく人付き合いが増える。有難いことだ!

どんなに賑やかな日々を過ごしていても、頭にはずっとバンビ君が占めるスペースがある。『会いたいなぁ』シンプルにそう思う。最近はバンビ君も忙しくしているようで、週末はすれ違うことが多い。

それでもバンビ君の顔が見たくて、
私は平日、夜の散歩に誘い出していた。

普段は近くの河川沿いがお決まりの散歩コースだけど、その日私たちはいつもとは違うエリアを散歩してみることにした。歩き出す地点までワープするのに、バンビ君は街のシェアリングキックボードで、私は自転車で向かうことになった。

バンビ君は勢いよくキックボードを漕ぎ出し、ダンッ!と音を立てて飛び乗る。赤いバックライトを放つボードを、ブーンというモーター音を出しながら進めていく。私は自転車で追いかける。ダボダボのパーカーにジーンズの後ろ姿が、やけにかっこよく見える。ずるい。

30分ほどライドして目的地で降りると、いつもとは違う風景が広がっている。同じ都内だけど、初めてみる風景にドキドキする。回送電車が窓の光を放ちながら、陸橋をわたっていく。スカイツリーが辺りを明るく照らしている。

『なんだかフィクションめいているな…』ただのノリでくりだした散歩なのに、その夜の光景はまるでSF映画のワンシーンのようで、鮮明にやきつく。

次の散歩では、更に遠くの街へ電車で出かけて、そこから歩き出してみる。いつもは見ない河川の上流。

散歩道は綺麗に舗装されていて真新しいのに、私たち以外の人影はなく、あたりは静まりかえっている。大きな鉄の構造物を潜って、横目に倉庫群を見ながら、河川をつたって歩く。なんだか東ドイツにでも来たようだ。いや、完全に個人的なイメージの話だけど。

横幅が20メートルはあろうかという広い散歩道にでる。相変わらず人影は無く、目の前に直線が伸びている。まるで陸上トラック。

「…はしる?」なんだか笑えてきて、問いかける。
「はしる〜?!」バンビ君もにやにやしている。

次の瞬間に私たちは走り出す。

「…それ疲れるやつー!!」
スタートダッシュを見せた私に、バンビ君が指摘する。

やっぱりすぐに息があがって、歩き出す。
楽しくて、ドキドキして、まともにバンビ君の顔がみれない。

『なんで君との日常は、こんなにフィクションめいているんだろう?』
心の中でそう思う。一つひとつの瞬間が閃光を放っていて、眩しい。目を細めたくなる。そして思う。

『ずっと続けばいいのに。』

帰りの電車の中。今日も別れの時間が近づいてきて寂しくなる。こんなとき一緒に住んでいたら、寂しい思いをせずにすむのに。でも一緒に暮らしていたら、会う時間がこんなに輝くことはない気がする。

本当に世の中って、こちらを立てればあちらが立たず的なシチュエーションが多い。その中でも、自分が本当に大切にしたいバランスを見つけ出すのは、かなり注意力と忍耐力が必要だ。

「お別れの時間がきちゃったね〜」
ふざけた口調でバンビ君が言う。

「ばいば〜い」
と返しながら、私は恨めしげな目線を投げる。

週末の朝、ひっそりとした部屋でSIRUPさんのLOOPを聴く。
大好きな歌の歌詞に、ひとり浸る。

『なんでもない毎日を、バンビ君と過ごせたら。』
そう妄想してしまう。

朝目覚めて、ベッドの中でくっついたり
寝ぼけた顔でカフェへ散歩したり
コーヒーとカフェラテを飲んだり
日が暮れるころにスーパーへ買い物にいって
ゆっくり料理をしたり
夜ワインを飲みながら映画をみたり

ただ、君との一日を繰り返したい。
それだけを心底望むなんて、随分プラトニックな心境になったものだ。

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今日はここまで!拙い文章を読んでくださった皆さま、ありがとうございました。気に入ってもらえたらスキ・シェアしていただけたら嬉しいです!

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