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記憶のかけら日記2:公衆トイレのビニール傘


2023年11月27日(月) よろしゅうございますか

オレンジジュースから始まる朝。パリッと糊づけされた、真っ白なテーブルクロスを眺めながら、学生時代に「こちらのお席でよろしゅうございますか」と言うレストランでアルバイトをしていたのを思い出す。埃を立てずにテーブルクロスを変えたり、お皿を一度に5枚運んだりするテクニック、「六義園」は「りくぎえん」と読むということ、ロータリークラブの歌、ぜんぶこのアルバイトで覚えた。

2023年11月28日(火) 悩みながら楽しくもがいているわたしたち

同業者の友だちと、モロッコスタイルの朝ごはんを食べながらおしゃべり。
「もう、人生で大切にできる人たちとは出会い尽くしている」「誰もが水面化で必死でもがいてがんばっている、それは当然のこと」
今日聞いた、忘れたくない言葉。

2023年11月29日(水) これ哲学じゃないの

「できたことは、やったことでできている」という、当たり前のことに気がついた。
できるもできないも、ぜんぶ、やった先にある。

2023年11月30日(木) 公衆トイレのビニール傘

映画館のトイレに入ったら、ドア裏にビニール傘があった。よく晴れた今日の忘れ物だとしたら、旅行者だろうか。
そんなことを考えながらトイレットペーパーに手をのばすと、きれいに三角に折り畳まれていて、おお、と思う。こういうの、ひさしぶりだ。終演後、もう一度トイレに入ったら、やっぱり折り畳まれていたので、前の人のやさしさではなく掃除方針らしい。映画は「回廊とデコイ」。

2023年12月1日(金) 師走

「ここからあっという間に年末だから!」というようなことがSNSに書かれているのを、汗ばみながら眺めていたはずなのに、ほんとうに、あっという間に年末になってしまった。

2023年12月2日(土) ドロシーはふたりいる

息子の学芸会。ふたりのドロシー、ふたりのかかし、ふたりのブリキの木こり。ダブル主演ではなく、すべてを分身の術状態で演じる学芸会にもすっかり慣れた。
子どもたちの合唱「ちいさなせかい」の歌詞と、世界の現状とがあまりにかけ離れていて、ぼろぼろ泣いてしまう。平和に歌い上げるこの瞬間も、同じ子どもたちが、海の向こうで不条理な現実にさらされている。どの子も、ちゃんと元気に大人になってほしい。やりたいことに、自分の意志で手を伸ばせる世の中であってほしい。

2023年12月3日(日) 恋愛と結婚のちがい

ふたりでひとつになるのが結婚だと思っていたけれど、いまは、ひとりとひとりが共に暮らすのが結婚だと思う。
相手の好きなものを好きになるのが恋愛で、相手の好きなものと自分の好きなもの、どちらも大切にしたくなるのが結婚なのかもしれない。

写真:日帰り出張先の那須で食べたチャーシュー麺ネギ増し。キリッと冷えた日の胃袋に、熱いスープが沁みた。

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