マガジンのカバー画像

WebMagazineタマガ

32
多摩美術大学芸術学科フィールドワーク設計ゼミが発行しているウェブマガジンです。芸術関連のニュース、展覧会評、書評、美術館探訪記、美術家のインタビューなどアートにかかわる様々な記事…
運営しているクリエイター

#アート

人間ラブドールと本物のラブドールが並んだユニークなイベント「人間ラブドール生展示」に潜入 @大道芸術館(東京・墨田区)

 2024年5月3日、東京・墨田区の大道芸術館で「人間ラブドール生展示」というイベントが行われた。主催は、人間ラブドール製造所(大阪府東大阪市)。「人間ラブドール」すなわちラブドールに扮した人間が本物のラブドールと一緒に展示されるという驚きの展示だった。この怪しげなイベントの実態を探るべく、会場に潜入した。 「人間ラブドール生展示」 展示は2階と3階で行われた。大道芸術館には常時ラブドールやマネキンが展示されているのだが、今回はそこに人間ラブドールたちが紛れ込んでいた。微動

眠れないホテル、MANGA ART HOTEL,TOKYOに宿泊してみた!

 MANGA ART HOTEL,TOKYOは地下鉄神保町駅から7分ほど歩いた、地上9階建ての商業ビルの4階と5階にある。4階が女性専用フロア、5階が男性専用フロアとなっている。チェックインは5階で行うが、それ以外にフロアの行き来はできない。  チェックインを済ませ、4階の鍵番号を入力してドアを開けると、”MANGA ROOM"と書かれた扉が目の前に現れた。扉を開けた先には今年漫画大賞を受賞した漫画が1位から順に並べられている。さらに奥へ入っていくと、所狭しと漫画が並んだ空間

未来を望む! 新たな国際アートフェア「Tokyo Gendai」を訪ねて

 フェア初日の7月7日は、日本や中国で毎年行われる伝統行事「七夕」である。会場中央では、そのイメージを表現に取り入れたという彫刻家・大平龍一のインスタレーション作品《The Circuit》が展示された。今回のアートフェアのために制作されたものという。たくさんの彫刻が立つ中に、レース場のような「サーキット」が敷かれている。伝統的な美意識や文化の多様性を問うコンセプトと、ダイナミックな展示方法が印象的だった。 アートの未来のあり方を感じる展示  Tokyo Gendaiは、

異才は出会うべくして出会ったに違いないと思わせる、青木繁と坂本繁二郎の2人展

東京・京橋のアーティゾン美術館で開催中の「生誕140年 ふたつの旅 青木繁×坂本繁二郎」展(10月16日まで)、素晴らしく充実した内容でした。青木繁(1882〜1911年)と坂本繁二郎(1882〜1969年)の2人はともに福岡県久留米市出身、地元の高等小学校で同級生でした。よくもまあ、この名だたる異才2人が地方の高等小学校で同級生だったなあとも思いますが、展覧会を見渡すと、出会うことは運命だったとも思える内容でした。 ここでは、簡単に比べながら見ていきたいと思います。 洋

珠玉の藤田嗣治コレクション! 軽井沢安東美術館がまもなく開館

10月2日に開かれた軽井沢安東美術館開館記念展のプレス内覧会に参加した。(開館は10月8日13:00) 藤田嗣治(レオナール・フジタ)の作品ばかり150点を展示。珠玉のコレクションとはこのことではないだろうか。個人コレクションなので小ぶりな作品が多いが、逆に親しみが湧く。「自宅にお招きするような空間に!」というのがコンセプト。代表理事の安東泰志さんによると、さまざまに旅を重ねながらも戦後はフランスに帰化せざるをえなくなった藤田の紆余曲折の人生を自らの人生に重ね合わせて共感し

ミニチュアで黄ばみやかみ跡まで表現

INTERVIEW/しばたたかひろ(アニメーション/映像作家)  鍵盤ハーモニカ、冷凍うどん、鉛筆の削りかす——。誰もが目にしたことがある、日常に存在するさまざまな「モノ」。実はこの記事の写真で紹介しているモノは、樹脂やこむぎねんどで作られたミニチュア作品だ。制作しているのは、アニメーション/映像作家のしばたたかひろさん。写真を見ただけだと本物と見紛うばかりのこれらの作品は、どのように作られているのか。そもそも、ミニチュア作品の魅力はどこにあるのか。SNSやメディアを通して

シリーズ「村田朋泰の世界」File.01 アニメーションから生まれたインスタレーション

昨秋、多摩美術大学八王子キャンパスのアートテーク棟の前を通ったときに、ガラス越しに見える赤と白のコントラストに目を留めた学生は多かったのではないだろうか。そこで開催されていたのは、本学芸術学科の展覧会設計ゼミ(担当:家村珠代教授)が企画し、毎年1回学生と作家が協働で作り上げていく『家村ゼミ展』だった。2021年は人形アニメーション作家の村田朋泰氏を迎え、10月4日から19日まで『家村ゼミ展2021「今年は、村田朋泰。―ほし 星 ホシ―」』というタイトルで開催した。美術館でも街

もっと身近に、お守りのように

INTERVIEW / 菅 風子(ガラス作家)  生活に身近な素材、ガラス。その透明性や美しい質感に魅せられた工芸作家の菅風子さんは、日常や旅先のこと、曖昧な記憶を形にする。菅さんはガラスで目に見えないものへ思いを馳せる。  「透明だけど、輪郭がある。確かにそこにあるんです」   ガラスを中心に扱う作家、菅風子さんはそう話す。一見、触れることもできないような透明な輪郭。「そこにある」という言葉にはっとする。  菅さんは多摩美術大学工芸学科のガラス専攻を卒業後、都内の展示に

奥行きを味わうーペンタブから絵の世界へ

INTERVIEW/NIERIKA(イラストレーター)  「直接的な表現より、示唆的な表現が好きです」こう話すNIERIKAさんの、独特な世界観を探る。  NIERIKAさんは、ホラー要素を含む味わい深い作品を制作している。イラストを描き始めたきっかけは、小学5年生のころにペンタブレットを親に買ってもらったことだった。インターネットでさまざまな作品や講座を見て勉強し、絵の世界に引き込まれていった。その情熱は成長するにつれて大きくなり、もっと美術について学びたいという思いか

カードゲーム『PLAY!たぐコレ』で 「現代アート」と遊んでみた

 「アート」の表現や解釈に正解はない。表現する側も、鑑賞して受け取る側も、さまざまな感情や感想を持つものだ。そこには当たりも外れもなく、自由な解釈が出来るのが面白いところである。だからこそ、作品を鑑賞して「よくわからない」と思ってしまうのはもったいない。そこで、今回は現代アートをもっと直観的に、感覚的に、遊ぶように鑑賞をすることができる『PLAY!たぐコレ』というカードゲームを紹介したい。まずは、実際に遊んでみることにした。  木々の葉の色が深まっていく11月中旬。多摩美術

コロナ禍で変わる「ばえる」概念

美術館に「ばえる」という概念は何をもたらしているのか。オンラインメディアに造詣が深いキュレーターの四方幸子氏(キュレーター、批評家/多摩美術大学・東京造形大学客員教授)に聞いた。 本記事は、多摩美術大学芸術学科フィールドワーク設計ゼミが発行しているアート誌『Whooops!』Vol.29(2021年10月21日発行予定)P.10に掲載される同タイトルの記事のフルヴァージョンです。Whooops!誌からの問いに対して四方氏が答えるQA形式で記事を構成しております。 はじめに

朴訥とした語りが宗教とは何かを考えさせる石原海の映像作品/資生堂ギャラリー

東京・銀座の資生堂ギャラリーで開催されている『「第15回 shiseido art egg」石原 海 展』を訪れた。出品作の中でメインとなる《重力の光》は、30分ほどの映像作品。「最後の晩餐」と思われる場面など聖書に題材を取り、石原が監督を務めたものだ。 石原海《重力の光》(2021 HDヴィデオ 30分)より 会場風景 出演者へのインタビューも途中に交えて、一つの作品としている。 通常の映画と異なるのは、撮影現場が基本的に実在の教会を主としており、10人の出演者が実際に