忘れん坊の税金,愚か者の罰金,延滞金。

 また延滞金を払ったのだった。久しぶりに払った。心が深く傷ついた。延滞金がこの世で一番払いたくないお金だ。忘れん坊の税金。愚か者の罰金。延滞金。
DVDなんて借りなければいいのに、どうしても見たくなって借りてしまう。延滞金のリスクは承知で借りて延滞しているのだから愚の骨頂だ。
また借りた映画の種類によっては腹立ちもひとしお、ということになる。
クソつまらない映画を延滞してしまった時にはこの世を恨んで資本主義打倒の革命の旗を一人掲げそうになる。包丁一本さらしに巻いて革命起こしてやろうか、という気持ちになる。
そんなことをしては内乱罪で逮捕最悪死刑となるので、怖いからやめておくのだが。

 今回は『もののけ姫』『マルサの女2』『レザボアドッグス』と面白映画三昧だったので、革命の旗は掲げることはなかったが、野党のプラカードぐらいは掲げたくなった。
「忘れん坊からの搾取反対」「忘れん坊は大体貧乏」「愚者から金を巻き上げるシステム打破」等々。
全国ウン万の延滞金に苦しむ諸君と共に政党を作ってやろうかな「延滞金から国民を守る党」みたいな。ワンイシューで。延滞金制度の廃止を掲げて。

 延滞金を廃止するとなると、皆が延滞をするのでは、という懸念もあるかもしれないけれど、延滞をした日数分、あるいは延滞をした日数分×3くらいは貸し出しをできない、ということにすればいいのだ。それでいいじゃないかそれで。

 大体延滞金を払った直後からDVDを借りることができるのが我々延滞金サバイバーにとっては難関なのだ。ついつい借りてしまうのだ。せっかくレンタルショップに来たから、と。そしてまたDVDを借りて、またまた延滞をするということもままある。こうなってくると延滞金無間地獄だ。
大学の頃に通っていたレンタルショップなんてひどくて、延滞金を払ったら「本日中にレンタルすればDVD1本無料券」みたいなやつを渡してくるのだ。
そうなると借りてしまうけど、その券で無料で借りたDVDもちゃんと延滞をすると延滞金が課せられるのである。これで実際に延滞金を払った時の「カタにはめられた感」の悔しさは僕は一生経っても、どんなにたくさんの人を出し抜いても、あるいは一敗地に塗れて何もかも失った人生を送ることになったとしても覚えているだろう。
愚かなものは損をする、という実体験として心に深く刻まれている。

 延滞金を払うと、延滞金に関する思い出も一気に思い出されるので、傷つきが半端ではない。積み重ねた悪行が僕を苛む。今まで無駄にしてきたお金。自分の愚かさの証明。搾取される側なんだという悲しさ。本当の罰は記憶に下されるのである。
延滞金が人格に与える作用は記憶にこそあり。だ。
 
 延滞金を払ってしまう人と連帯をして、それぞれ知恵と憤懣を交換しあったりしたいが、どうも延滞金を払ってしまうような人たちとあんまり仲良くしたくもないかもなあ。という直感も確かに働いてはいる。

 僕たちが連帯したら、いわば「延滞力」みたいなパワーが大きく結集して、酷いことが起こるような気もするのだ。オリンピックとかももう1年先延ばしにできるかも。莫大な延滞金を払って、だけど。
僕たち会わないほうが幸福かもしれない。

 確固独自の戦いで、延滞金と戦っていくほかない。というのが今日の結論。

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