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日常ブログ #20台風






季節の変わり目となり、台風の発生も増えてきた。
つい最近も関東では台風の接近による大雨があった。

皆様、近頃はいかがお過ごしでしょうか。
どうか最新情報をチェックしながら、安全を確保してお過ごしくださいませ。
いざとなった時の備えも忘れずに。


と、こんな道徳じみたことを言うのも、私が過去に大変な思いをしそうになった経験があるからである。


数年前の秋。ちょうど今頃の季節だった。
当時私は高校生で、学校は期末テストの真っ際中だった。
台風が関東地方に直撃するというその日、下校時刻の昼過ぎごろには既に大雨が降っていた。予報では数時間後にさらに雨風共に強くなるとのことだった。
電車通学者の多いクラス内では、同級生たちが帰りの電車を必死に調べたり、迎えを呼ぶか相談し合ったり、ダメ元で大雨の中駅まで歩こうかと逡巡していたり、皆不安げな顔をしていたのを覚えている。

一方私は家から数百メートルの高校に自転車で通っていたので、何食わぬ顔でカッパを着て自転車を飛ばし爆速で帰宅した。
その早さといえばカップラーメンが出来上がらない程であった。
その日はテスト初日で最も厄介な曲者・数学が終わったのでとてもウキウキした気分だったのだ。
前日に文字通り一夜漬けを試みてだいぶ遅くまで起きていたので、とにかく早く寝たくて仕方がなかった。
その上、高校生の頃の私は真面目とは程遠い生徒だったので、テスト=部活が休みで直帰できる日かつ早く帰って家で寝られる日と認識していた。
数学を終えた今、もう不安なものは何もない。気兼ねなく夜まで寝れる。唯一の不安は数学の結果のみである。
そういう心持ちだった。
JKだった私にとっては、大型台風情報より部活と数学のテストの方が深刻な問題だったのである。

数年前のことなのに感覚にとても若さを感じる。


そういった経緯から、家に帰って即寝た。
ベランダの屋根にうちつける雨音は凄まじかったが、気にせず寝た。
この後雨がさらに強くなるという情報は聞いていたが、気にせず寝た。
私の地元は昔からよく川の氾濫で洪水被害が多発する地域で今回もかなり危ないと言われていたが、気にせず寝た。
しばらくしたら避難指示のサイレンみたいなのが鳴ったが、自分が住んでいる地域が該当しなかったので気にせず寝た。
さすがに気になって一度だけ外の様子を確認してみたが、その時点で家の前に水が溜まっている様子もなかったので気にせず寝た。
眠りを妨げられたくなかったのでスマホの着信音を切っていたが、気にせずそのまま寝た。

そして目が覚めた時、もうとっくに日が沈んでいて外は真っ暗だった。
起きた時は、そこまで強い雨ではなかったと記憶している。
台風が過ぎたんだな、それにしてもよく寝たな、まだ眠いな、などと呑気なことを考えていた。
ちなみに次の日もテストだがこれから勉強を始める気はない。

とりあえずスマホを手に取ると、何やらものすごい数の連絡が来ていた。
両親、上京している姉、祖母、友達、とにかくいろんな人から連絡が来ていた。私が寝ている間に来たものである。
何事かと思いざっと目を通すと、どれも大丈夫かとか、無事なのかとか、そういった内容の連絡だった。
心配してくれるなんて皆心が細やかで優しいんだなと思いつつ、何気なくテレビをつけると、ニュースで見覚えのある町の様子が報じられていた。
あれ?これってもしや、地元である。
見覚えのある交差点。見覚えのある市役所。見覚えのある河川敷。めっちゃ地元である。
すごい。地元が全国ネットにでている。一体何事だ。
報道の内容はこう。地元の大洪水。
平家の家が水にのまれ、市役所の一階部分が完全に水没し、地元民は避難所に避難し、電車も車も通れず帰宅困難者が続出し、水に囲まれてしまって今もなお救助を待っている人がいるという。
それを上空からヘリで撮影した地元の映像が流れる。
しかも昼間の映像である。

私は目を疑った。
寝ている間に別の時空に飛ばされたかと思った。
ここは異世界だろうか。
異世界の地元に迷い込んでしまったのか。
それともまだ寝ぼけているのだろうか。
本気でそう考えるほど驚いた。

まさか自分が寝ている間に世の中がこれほど大きく動いているとは夢にも思わなかったのである。夢も見ないくらいぐっすり熟睡したのだが。
少なくとも、私が家に帰ってきて眠りについた時はこんなことになっていなかったはずである。
いや、わからない。だって寝てたから。
やっとの思いでようやく家に帰ってこられた母から家の周りはどんな様子だったのか、昼間の雨の様子はどうだったのか、水はどこまで来ているのか、めちゃくちゃ質問されたが、わからない。だって寝てたから。
大丈夫だったかと聞かれても、奇跡的に家の周りは大丈夫だったのか、大丈夫じゃないけど気づいてないだけなのか、そもそも大丈夫とは何なのか、もう何もわからない。だって寝てただけなんだから。
最も激しい雨の時間帯に大洪水に見舞われた町の中にいながら昼寝をぶちかまして誰よりも状況を把握していない不届き者、それが私だった。
家から数百メートルしか離れていない学校もだいぶ浸水したようで、しばらく休校になった。
休校明け、自分はあの日こう過ごした、自分の家はこんな被害にあった、家に帰れなくなって学校に泊まりこんな目にあったなど、それぞれがそれぞれの行動を話している時、話をふられませんようにと縮こまっているのは私だけだった。
皆が避難している時私は家で昼寝していて運良く助かりました。運が悪ければ今頃ここにはいません。とは、とてもじゃないが言えなかった。

その後、ななり長い間町のいたるところに流されてきた泥やゴミがちらばっていた。
それを見るたびに、己の危機管理能力の低さを思い知らされる日々を過ごしたのだ。


身の安全を確保し、命も私財も何事もないことが最も望ましいのは当然である。
しかし皆様には、危険な状況に晒されているのに無関心と油断が原因で危険な目に遭うなんてことが起きないでほしいと思う。
私は奇跡的に無事でいられたが、すぐそこで大洪水が起きているのに寝過ごしたなんて自慢にもならない。
シンプルに恥ずかしい。
めちゃくちゃ呆れられるし情けない気持ちになる。
その状況を実際に経験した私が言うのだから間違いない。


なので、少しでも危ないかもしれないと思ったらすぐに情報収集をして、早め早めに行動し少し大袈裟すぎるくらいの備えと心構えをしましょう。

私も防災いっぱい頑張ります。


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