マガジンのカバー画像

「決算書」の読み方と「経営分析」のポイント

42
「5つの箱」で理解する! 貸借対照表、損益計算書の読み方とキャッシュフロー経営の実践、そして採算管理の基本までをマスター。生産性の高い企業であり続けるために大切なこと、経営分析の…
運営しているクリエイター

#損益計算書

第1章 決算書を読みこなすためのコツ

3.決算書は「5つの箱」で作られる 「5つの箱」の中身が増減する  決算書は、会社で起こるすべての会計的な「取引」を、記録集計することで作成されます。   会計的な取引とは、「5つの箱」(資産・負債・純資産・収益・費用)の中身(勘定科目)が、金額的に増減する出来事をいいます。  会計的な取引には、必ず「原因」と「結果」の両面があります。  すべての取引を、原因と結果の両面(複式)で捉えて記録するので、1つの取引について、必ず、2つ以上の勘定科目が同時に増減します。  こ

第1章 決算書を読みこなすためのコツ

4.「5つの箱」に表れる理想的な経営 お金の使い方と集め方の両面で捉える  会社の経営活動を記録集計する「5つの箱」は、ビジネスに不可欠である「お金の集め方」と「お金の使い方」の縮図でもあります。  「5つの箱」の左側(資産、費用)を見ればお金の使い方にムダがないかどうか、右側(負債、純資産、収益)を見ればお金の集め方にムリがないか見えてきます。  左側の「資産」と「費用」はお金の使い方です。  資産は価値のあるプラスの財産ですが、定期預金をするのも、ツケ売りで回収を待

第1章 決算書を読みこなすためのコツ

7.「損益計算書」の基本的なしくみ 損益計算書の役割  損益計算書は、1事業年度中の利益を報告する経営成績表です。  損益計算書の利益(経営成果)は、稼ぎ方(収益)から、収益を得るために要した工夫や犠牲のコスト(費用)を差し引くことで計算します。  損益計算書の収益および費用は「発生主義」の原則により、それらの事実の発生に基づき、その発生した期間の計算に含めます。企業会計は、現金の出入りで記録する現金主義ではなく発生主義を原則としているのです。  そのため売上代金の回

第3章 「収益力」の高さはここに表れる

1.損益計算書を3つの視点で読みこなす 損益計算書は一番上と一番下を見る  損益計算書(Profit & Loss Statement、略してP/L)は、最初に「一番上の数字(Top Line)」の売上高を、続いて「一番下の数字(Bottom Line)」の当期純利益を見ます。  1事業年度中に実現した売上高は経営規模を表わします。しかし同時に、当期純利益も計上していなければ収益力の高い会社といえません。  すべての原価、費用、損失、そして法人税等を負担した後の最終の当期

第3章 「収益力」の高さはここに表れる

2.「売上総利益」は利益の大本! 商品力の高さは「売上総利益」に表れる  「売上総利益」は、売上高から売上原価を差し引くことで計算する「利益の大本」です。   売上総利益は、さまざまな諸経費を差し引く前の粗っぽい利益でもあり、通称として、「粗利(あらり)」とも呼ばれています。  売上総利益の金額の大きさと、売上総利益率(=売上総利益÷売上高)の高さから、製品やサービスの力を判断できます。売上総利益率は「粗利率」ともいいます。  取扱製品や商品、サービスの質が良く、人気が高

第3章 「収益力」の高さはここに表れる

3.売れた分だけ「売上原価」に計上! 卸小売業での「売上原価」  売上総利益の計算では、「商品を仕入れて売る」という商取引の流れと、「売上原価」の理解がポイントとなります。  卸小売業では、当期中に売上計上した商品の仕入原価を当期の費用として計上します。これを、売上原価と呼びます。会計上の収益である売上高と、費用である売上原価は直接的に対応させる必要があるのです。  売上原価を確定させるための会計処理には、2つの方法があります。  まず1つめは、商品を仕入れたときには「

第3章 「収益力」の高さはここに表れる

4.会社の「本業力」と「実力」を見る 本業力は「営業利益」でチェック  「営業利益」は1事業年度の企業経営における「本業力」を表わす利益であり、売上総利益から販売費及び一般管理費を差し引くことで計算します。  たとえ、付加価値が高く儲かる製品を取り扱っている会社でも、販売管理費の管理が甘く販売促進費などにムダ遣いが多かったり、本社を管理する費用の負担額が大きいと営業利益を残せません。  利益体質である会社は、付加価値が高く優れた製品を取り扱うとともに、できる限りコスト削減

第5章 採算管理と損益分岐点分析

2.損益計算書の利益では採算を捉えられない  「いちご大福」の損益計算は正しいか?  「いちご大福」を1個100円で売っている「いちご大福屋🍓」を事例に、まずは損益計算書での利益を見ておきましょう。  「いちご大福」を作るための苺(いちご)や餡(あん)など原材料費は、1個当たり30円です。  いちご大福作りの職人さんの給料は300円で、電気・ガス・水道代などは200円かかりますが、10個作るまでは残業代や追加のコストは増えません。  「いちご大福屋」では、美味しい「いち