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第3章 「収益力」の高さはここに表れる


1.損益計算書を3つの視点で読みこなす



損益計算書は一番上と一番下を見る

 損益計算書(Profit & Loss Statement、略してP/L)は、最初に「一番上の数字(Top Line)」の売上高を、続いて「一番下の数字(Bottom Line)」の当期純利益を見ます。
 1事業年度中に実現した売上高は経営規模を表わします。しかし同時に、当期純利益も計上していなければ収益力の高い会社といえません。
 すべての原価、費用、損失、そして法人税等を負担した後の最終の当期純利益の金額が少ない、または赤字である場合には、当期については経営成果が出なかったということになります。

 たとえば、売上高1兆円の大企業だとしても、当期純利益が△1,000億円であれば、1年間の経営活動に対する評価は低くなります。
 それよりも、売上高は10億円でも当期純利益が1億円である企業の方が、確実に利益を残している会社だと評価できます。
 このように損益計算書は、売上高の大きさだけではなく、最終の儲けである当期純利益の金額をチェックします。

 そのうえで経営活動の各段階における利益で経営力を評価します。
 損益計算書には、性質の異なる「売上総利益」「営業利益」「経常利益」「当期純利益」という4種類の「利益」が表示されます。

損益計算書では性質の異なる4種類の利益が計上される


 このように損益計算書に計上される利益には性質の違いがあります。
「儲かっている会社」であっても、経営活動のどの段階で利益を残しているかで会社の評価も変わってきます。
 損益計算書を見ることで、どのような経営活動で収益を稼ぎ出し、どの程度の費用を負担しているのかが分かります。


 続いて、損益計算書を①分解、②百分率、③単位当たり、の3つの視点でチェックしてみましょう。

損益計算書の数字は 「分解」して見る!

 損益計算書の数字は、全体から個別に分解することで「強み」と「弱み」が明らかになり、弱い点を改善するための糸口を見つけることができます。
 たとえば売上高は、製品別、得意先別、事業所別のほかに、単価と数量に分解します。
 売上高=価格(Price)×数量(Quantities)に分解できますから、売上高がダウンした場合でも、価格が下がったことによる売上減少0と、数量の減少による売上減少では、打つべき対策も違ってきます。
 価格が下がった場合には、戦略的特売セールの結果なのか、単なる値引き販売のしわ寄せなのか、その原因を調べます。数量については、受注件数、得意先の数、イベント数、商品の販売数などの視点で細かく展開して増減の原因を探る必要があります。

 「売上高=価格×数量」の算式どおり、売上高をアップさせるためには、「価格を下げない、値引きせずに売る努力、値段を通す力」と「リピート客の確保、新規開拓」の両方を心掛けることが、基本の戦略となります。


損益計算書の数字は「百分率」で見る!

 損益計算書は、売上高を分母(100)として利益と費用の両方をそれぞれ「百分率」で見ます。百分率とは、全体に占める割合(%)を見ることで、バランスが崩れていないか、儲ける力があるか、負担率が重すぎないかどうかをチェックする視点です。
 売上高を100として利益額の占める割合である利益率(=利益÷売上高)を見れば、「儲ける力」が分かります。
 利益率とは、「商品を100円で売って何円儲けたか」という視点なので、利益率が高いほど収益力の高い会社となります。

 たとえば、「当社の経常利益は1億円です」と言われても、経常利益の金額の大きさだけでは、経営状況が良いのか悪いのか判断できません。
 もしも、売上高が10億円の会社で経常利益が1億円であれば、経常利益率(=経常利益÷売上高)は10%です。ところが売上高が20億円の会社で経常利益が同じく1億円の会社であれば経常利益率は5%になります。経常利益の金額が同じ会社であっても実力も同じとは限りません。

 経常利益の大きさだけでは収益力を判断できないので、利益額に加えて、売上高に占める利益の割合である「利益率」のチェックが重要です。利益率を見るならば、経営規模の違う会社どおしを同じ尺度で比較できます。

 また、利益率だけではなく、売上高に対する費用の比率も見ます。
 売上高に対する各費用科目の比率(=費用÷売上高)をチェックすれば、費用のムダ遣いがないかを確かめることができます。
 費用の比率は「100円稼ぐために費用が何円生じたか」という意味です。売上高に対する費用の負担率が低いほど、ムダを省いて効率的な経営に努力した会社といえます。利益率と費用率は裏返しの関係なので、利益率を高めるには、費用の負担率を下げる経営努力が求められます。

損益計算書の数字は「単位当たり」で見る!

 売上高や経営規模の違いがある会社でも、「1人当たり」「時間当たり」「㎡当たり」という単位当たりの数字ならば同じ土俵で比較できます。
 たとえば、「1人当たり売上高」「1人当たり利益」「1人当たり付加価値額」などの計算結果で、人的生産性を評価することができます。

 利益額が同じ2億円の会社であっても、従業員数50人のA社と、従業員数100人のB社では生産性の高さが違います。1人当たり利益で見ると、A社の400万円に対して、B社は200万円と半分の結果になってしまいます。
 A社の方が少数精鋭で成果の出ている会社といえます。


 会社の現状を把握し経営改善に生かすために損益計算書を見るときには、①分解、②百分率、③単位当たり、の3つの視点でチェックしてください。


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