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「決算書」の読み方と「経営分析」のポイント

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「5つの箱」で理解する! 貸借対照表、損益計算書の読み方とキャッシュフロー経営の実践、そして採算管理の基本までをマスター。生産性の高い企業であり続けるために大切なこと、経営分析の… もっと読む
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第1章 決算書を読みこなすためのコツ

1.「決算書」と「計算書類」と「財務諸表」 会社経営と「決算書」  会社とは、営利(=儲けること)を目的として作られた社団(=人の集まり)です。もちろん、単に儲けることだけを目的とするのではなく、社会に貢献する仕事をとおして「付加価値」の提供が求められます。  設立手続きを行うことにより法人格が与えられた後は、基本的に、会社は「永遠の命」を持った継続企業体(Going concern)として、終わりのない経営活動を続けていきます。  景気の波に揉まれながらも、社会貢献を

第1章 決算書を読みこなすためのコツ

2.「5つの箱」で決算書を理解する  決算書の大本は「5つの箱」です  決算書を読みこなすために、1枚の図形「5つの箱」を覚えましょう。    会社規模の大小、業種、業態、社歴に関係なく、経理の視点で会社経営を語るときのキーワードは「5つの箱」です。  「5つの箱」は、「資産」「負債」「純資産」「収益」「費用」という5つの要素から構成されます。  会社が所有しているもの、会社が借りているもの、会社で起こる出来事、すべて資産・負債・純資産・収益・費用という5つの要素のいず

第1章 決算書を読みこなすためのコツ

3.決算書は「5つの箱」で作られる 「5つの箱」の中身が増減する  決算書は、会社で起こるすべての会計的な「取引」を、記録集計することで作成されます。   会計的な取引とは、「5つの箱」(資産・負債・純資産・収益・費用)の中身(勘定科目)が、金額的に増減する出来事をいいます。  会計的な取引には、必ず「原因」と「結果」の両面があります。  すべての取引を、原因と結果の両面(複式)で捉えて記録するので、1つの取引について、必ず、2つ以上の勘定科目が同時に増減します。  こ

第1章 決算書を読みこなすためのコツ

4.「5つの箱」に表れる理想的な経営 お金の使い方と集め方の両面で捉える  会社の経営活動を記録集計する「5つの箱」は、ビジネスに不可欠である「お金の集め方」と「お金の使い方」の縮図でもあります。  「5つの箱」の左側(資産、費用)を見ればお金の使い方にムダがないかどうか、右側(負債、純資産、収益)を見ればお金の集め方にムリがないか見えてきます。  左側の「資産」と「費用」はお金の使い方です。  資産は価値のあるプラスの財産ですが、定期預金をするのも、ツケ売りで回収を待

第1章 決算書を読みこなすためのコツ   

5.「貸借対照表」の基本的なしくみ 「貸借対照表」で財産状況を報告する日とは?  「貸借対照表」は「資産」「負債」「純資産」の3つの項目で構成される会社の財産表です。  一定の日における「財政状態」を表わす書類です。  貸借対照表での一定の日とは、基本的には、事業年度の末日である決算日をいいます。  ただし、四半期決算や中間決算など事業年度の途中において貸借対照表を作成する場合は、その計算期間の末日における財政状態を表わします。このように、財産状況を集計して報告する日を「

第1章 決算書を読みこなすためのコツ

6.「株主資本等変動計算書」は純資産の増減明細書 「株主資本等変動計算書」は貸借対照表のチビ  「株主資本等変動計算書」とは、貸借対照表の「純資産の部」の変動明細書です。純資産の当期首残高および当期末残高、そして当期中の変動額を報告する計算書類です。  つまり株主資本等変動計算書は、前期末と当期末の貸借対照表の純資産をつなぐ書類です。  株主資本等変動計算書に記載される純資産合計の当期首残高は、貸借対照表の純資産の前期末合計額と同額です。純資産合計の当期末残高は、貸借対照

第1章 決算書を読みこなすためのコツ

7.「損益計算書」の基本的なしくみ 損益計算書の役割  損益計算書は、1事業年度中の利益を報告する経営成績表です。  損益計算書の利益(経営成果)は、稼ぎ方(収益)から、収益を得るために要した工夫や犠牲のコスト(費用)を差し引くことで計算します。  損益計算書の収益および費用は「発生主義」の原則により、それらの事実の発生に基づき、その発生した期間の計算に含めます。企業会計は、現金の出入りで記録する現金主義ではなく発生主義を原則としているのです。  そのため売上代金の回

第1章 決算書を読みこなすためのコツ

  8.投資家は「注記表」にも注目しよう 「注記」すべき項目は21個!  会社法では「注記表」を計算書類として位置づけており、以下の21個の注記すべき項目を定めています。  え~、21個も? という感じですね。  しかし投資家にとって有益な情報もあります。概要を見ておきましょう。  会社法は、「大会社」であるか、「株式譲渡制限会社」または「公開会社」であるか、「会計監査人」の設置の有無によって、注記すべき内容に差を付けています。  会社法での大会社とは、「最終事業年

第1章 決算書を読みこなすためのコツ

9.「キャッシュフロー計算書」ではお金を色分け キャッシュフローとは「キャッシュ」の収支  「キャッシュフロー計算書」とは、貸借対照表と損益計算書に続く第三の財務諸表です。金融商品取引法の開示規制を受ける上場会社などに作成が義務づけられています。  中小企業には、キャッシュフロー計算書の作成義務はありません。  キャッシュフロー(Cash Flow)とは、キャッシュ(資金)の流れ(Flow)、つまり、資金収支を意味します。  キャッシュフロー計算書では、1事業年度中のキ

第2章 会社の「安全性」を見るポイント

1.「貸借対照表」を読みこなすステップ 貸借対照表を構成する5つのグループ  貸借対照表(Balance Sheet、B/S)は、財産を報告する日(=貸借対照表日)の資産・負債・純資産を一覧にした財産の残高(Balance)表であり、つねに貸借が一致(Balance)するお金の貸し借りの明細書でもあります。  さらに、資産と負債を流動グループと固定グループに区分表示するので、貸借対照表は「流動資産」「固定資産」「流動負債」「固定負債」「純資産」の5つのグループで構成されま

第2章 会社の「安全性」を見るポイント

2.1年以内の資金繰りは破たんしないか? 流動資産で流動負債を返済できるか?  先に見たとおり、貸借対照表は、「流動資産」「固定資産」「流動負債」「固定負債」「純資産」の5つの要素に区分して報告されます。  流動資産は、正常な営業活動循環内にある受取手形、売掛金、棚卸資産、1年以内に資金化される予定の資産です。  一方、流動負債は正常な営業活動循環内にある支払手形および買掛金と、1年以内に返済しなければならない負債です。  そこで、流動資産と流動負債の金額バランスを比

第2章 会社の「安全性」を見るポイント

3.社長にはちょっと酸っぱい「当座比率」 当座資産で流動負債を返済できるか?  流動比率をより厳しく補完する指標として「当座比率」があります。  当座比率とは、「当座資産で流動負債を耳を揃えて返済できるか」という視点で会社の当座の支払能力を見る指標です。当座資産が流動負債を超えているかどうかを左右のバランスでチェックします。  当座比率は「Acid-Test Ratio」(酸性比率)とも呼ばれ、あたかも「リトマス試験紙」のように当座の資金繰り状況を表わす比率です。  経

第2章 会社の「安全性」を見るポイント

4.「固定比率」は資産の中身が大切! 低いほど良い「固定比率」  会社の固定資産投資に無理がないかどうかは、「固定資産」と「純資産」(自己資本)の金額を比較する「固定比率」をチェックします。  固定資産は1年を超えて長期に利用される資産であり、貸借対照表では「有形固定資産」「無形固定資産」「投資その他の資産」の3つに区分して表示されます。  これらの固定資産へ投資した資金は長期間回収できないため、固定資金の運用と調達のバランスが悪いと長期的な資金繰りに悪影響を与えます。

第2章 会社の「安全性」を見るポイント

5.「固定長期適合率」は流動比率の裏返し 固定は固定どおし、長期は長期どおしで  長期的な投資は返済不要の自己資本の範囲内で行うのが経営の理想です。 先に見た固定比率は100%以下であるべきです。  固定比率が100%を超えている会社は、自己資本を超えた固定資産投資、身の丈を超える設備投資を行っている可能性があります。  しかしそれだけで、財政状態が不健全だと決めつけるのは早計です。  通常、自己資本を超える設備投資を行う場合は、長期借入金や社債などの長期返済による資金