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全ての始まりは、首ちょんぱ。

これはまだ、僕が小さかった頃のお話です。


確か小学1〜2年生の頃だったと記憶していますが、当時住んでいた僕の家は随分古く、年号が平成に変わっているというのに、未だBT……すなわち汲み取り式のトイレだったと言えばどのくらい古い家だったのか想像がつくでしょうか。

ついでに言えば浴槽は木製の桶でした。
ええ、もう、兎にも角にもそんな古いお家に住んでいたのです。


1階は茶の間や仏間、食卓と祖父母の部屋があって、両親と僕ら兄妹の寝室は2階にあったのですが、その寝室にテレビがありました。当然ですが
ブラウン管です。

ある夜、お風呂から上がって2階の寝室へと駆け上がった僕は、テレビのスイッチをぐっと押し込みました。
確か、何か観たいテレビがあったのだと記憶していますが、意気揚々とテレビのスイッチを押したその瞬間

人の生首がポロリと、胴体から転げ落ちたのです。


僕はビックリして咄嗟にテレビのスイッチを切り、しばし呆然としてから、布団の中へと転がり込みました。
小さな心臓がどんどんと鳴り響き、目を閉じても開いてもあの光景がフラッシュバックしてしまって、しばらくテレビのチャンネルをおっかなびっくり回すようになりました。


あの恐怖を克服しつつあったある日、また同じような時間帯に僕がテレビを点けると、今度はウサギの着ぐるみが女の人に刃物を突き立て、女の人の胸から夥しい量の血がさながら噴水やプリニー式噴火の如き勢いで吹き出している映像が映し出されていたのです。


もしかしたら、このシーンを覚えている人も多いかも知れません。
ええ、そうです。
それは、堂本剛主演『金田一少年の事件簿』の本放送だったのです。



子供の頃の僕は、非常に臆病な子供だったと思います。
ウルトラマンレオの17〜19話、すなわちウルフ星人、バット星人、ボーズ星人の回を観て以来、随分後まであのエピソードに似た内容の悪夢に悩まされましたし、1999年に恐怖の大王がやってくるなんて話も本気にしていました。
1999年はずっと内心そわそわしていたような記憶があります。


少々話は逸れますが、紛争地域に住む子供達は戦闘に巻き込まれたりそれによって親を殺されたような子であっても、戦争ごっこで遊んだりするらしいです。
ショッキングな事やトラウマを『遊び』によって克服しようとする、ある種の防衛反応のようなモノだと、何かで読んだ事があります。

それは僕にとって、非常に身に覚えのあるお話でした。


不意急襲的な金田一テロを2度も喰らった僕はテレビを観るのをやめたのか、はたまたホラーやミステリー、それに類するモノを毛嫌いするようになったのかというとそれは全くの真逆。

別の日、性懲りも無くテレビを点けた僕の目に飛び込んで来たのは、森の木々にへばりつく肉片と多量の血痕、金田一少年のファンにはお馴染みですね、『墓場島殺人事件』のアレです。


それを観てしまった時の僕の反応はどうだったのかと言うと


わっ!やべえ!これあのこわいテレビだ!!おかーさーん!こわいテレビ!こわいテレビやってるよ!!


と、騒ぎまわっておりました。
子供ってのはよく分からんもんですね。


今にして思えば当時のテレビ番組は凄かったなと思います。
今より断然ホラー・オカルト系の番組は多かったですし、『名探偵コナン』と『金田一少年の事件簿』が一緒に放映されていて、毎週誰かが殺されていた事を覚えてらっしゃる方も多いと思います。

僕も『奇跡体験アンビリバボー』のホラー・オカルト回は毎度観ていましたし、日曜8時は『笑う犬』を観るか『特命リサーチ200X』を観るか毎週頭を悩ませていました。
ちなみにコナンくんと一ちゃんでは断然一ちゃん派です。

そう、幼少期の僕はいつの間にか、「こわい」事を「面白い」と感じるようになっていたのです。

そんなビビりたければいくらでもビビり散らせる環境で幼少期を過ごした僕は、中学に上がると朝読書の時間に江戸川乱歩やらエドガー・アラン・ポーを読んでみたり、高校に上がると友達と一緒にホラー映画を観たりするようになりました。
社会人になり、自衛隊に入ってからは、何かのキッカケで読んだ京極夏彦作品にドハマり。
気づけば、あの日衝撃を受けたホラー・オカルト・ミステリーが自分の核にになっていたのです。

時は移ろい2017年、三十路を目前に控えた僕は今村昌弘先生の『屍人荘の殺人』に出逢います。

https://www.amazon.co.jp/gp/aw/d/4488025552/ref=tmm_hrd_swatch_0?ie=UTF8&qid=1633084831&sr=8-3

男女ペア、山奥のクローズドサークル、そしてオカルト(あとラブコメ的要素)

自分が好きだった要素が全部詰まった、素晴らしいと言うよりもまるで自分のためにあつらえたような作風に思わずガッツポーズをしてしまいました。

調べてみれば今村先生は僕よりも少し歳上の方。
恐らく先生も、僕が見てきたものと同じようなモノを見てきたんだろうな、と思うと何だかより『屍人荘の殺人』が愛おしくなってしまいますね。比留子かわいいよ比留子


皆さんにもきっと、初めはネガティブな感情を持っていたけどいつの間にか好きになっていたモノってあると思います。

そして案外そういうものほど、自分の魂に深く食い込んでいたりするから面白いですよね。

そんなただの、無駄話。















大人になった今でも、「放課後の魔術師」を見ると「ひえっ」てなる。

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