<新>科学(医学、薬学、心理学)から見た経済:格安PCR(2020年12月27日号)
(1)PCR検査の原価
2020年8月24日 (月)より、自宅で唾液を自己採取する新型コロナウイルスのセルフPCR検査 (保険適用外・全国対象)を提供を開始したテレビCMで有名な某美容系クリニック。
同クリニックはPCR検査申込件数が最初の9日で1000件(平均約110件/日)を達成し12月21日には20万件(平均通算約1650件/日)に達したそうです。このクリニックは渋谷と銀座に実クリニックでは検体の受付はしておらず、郵便のみの受付です。
ここは経営上は賢い判断で高所得の患者の美容系(自由診療)は土地代(又はテナント料)は高いが地名ブランド力のある都心で付加価値を付けていますが、ブランド力の要らないPCR検査はの自院では受付しておらず固定費を抑えています。
ここからは原価の推定ですが、かなり大雑把な計算になりますがご容赦願います。
可能性として、検査担当職員は交代制で24時間稼働させ、仮に全自動PCR検査機のメーカーはプレシジョン・システム・サイエンス(株)のものを(最大12検体向け、参考価格1250万円)を使っていたとして、1日1台、最大5回転(60検体)ですね。
この測定器を使っていたとして、現在の1日平均測定数約1650件に今後増えるだろう需要を加味して2400程度を想定して、このPCR測定器で同件数を処理する為、に必要な台数は2400/60=400台(!?)。ボリュームディスカウントは無視すると機械の初期投資は50億円。
一方、国境なき医師団の調査によると、セフィエド社の類似する結核用検査用カートリッジの原材料費、製造費、間接費などの諸経費を合わせても製品原価3USドル(邦貨300円ちょっと)。
1.PCRキット:20万件で6000万円。
2.人件費:8時間交代で1台2人の検査員(想定時間給与2000円)×3交代×121日稼働×1.4の人事管理費倍率≒1600万円
3.PCR機器の減価償却費:一般に5年償却なので121/365×5×50億円≒3.3億円
4.検査場所の土地代又テナント代:1PCR機器あたり、2平米占有×400×2.5(余力スペース)2000平米×1平米月1000円程度(テナントの場合)/月×3≒600万円
5.CM代金:テレビCMは先日のコメダ珈琲社長の発言より、時間帯を選べば、1日複数局で100万円程度。CM日数100日で1億円、電車中吊りは1社1ヶ250万円(2200枚)×3か月×10路線≒7500万円
6.CM製作費:あのクラスの俳優(失礼!)で制作依頼+中吊り広告制作費用は多くても3000万円程度
7.1~6合計、おおよそ5億6千万円程度(⇒かなり荒い計算)
(2)PCR検査売上
売上は1回あたり9000円、12000円、15000円・・。
平均で12000円×20万件=24億円!
そうすると粗利でおおよそ3か月18億円(月6億円!)ですね。
もう笑いが止まらないレベルです。
(3)競合の出現
しかしながら、1回あたり1980円~2980円という格安でターミナル駅前のお手軽PCRが12月に入り次々開業しました。これらのPCR検査会社については、まだ開業後短いことから、かなり荒い計算も出来ない状況です。
しかしながら、1980円程度で簡便な設備とはいえ、ターミナル駅前のテナント(但し、今、需要が少ない貸会議室などを流用しているようなので相場より大幅に安い)で、原価から計算しても充分利益が出ることは確かなようですね。
また格安ということでメディアがニュース等で度々取り上げてくれるので、CM代わりになりますし。
またPCR機器もコストダウンが図られています。
(4)先発検査会社の競合検査機関への優位性アピール
予想されたとは言え、老舗(と言いましても3か月なので先発ですが)のお気軽PCR検査会社は意外と早く、少しは慌てたのではないでしょうか?
そこで、先発検査会社は元々の成り立ち(医療機関ベース)を利用して、医師の診断を含めての医学判断を含めた陰性証明書(使用対象国こそ限られるが、出国前の正式書類としても使用可)が出せることをアピールを始めました(但し、高額な別料金制)。
ただ、ここで1つ問題があります。
現在の日本の制度では、医師免許さえ持っていれば「麻酔科」と「歯科」以外の科目は標榜できます。麻酔科は麻酔科標榜医の資格を取らなければなりません。
極端な例では、眼科の医師が婦人科を標榜することも可能です。
従って、法律的には呼吸器感染症関連を標榜できても医療レベルとして実態が伴わない場合があります。
(5)PCR検査固有の事情とまとめ
通常の健康診断等の検査とは違うPCRの特徴は、世間の不安を煽れば煽るほど、リピーター(同一人物)が高い頻度で訪れることです。
そして中には最初に行った検査所を一番信用し、常連さんになる事さえあります(途中で価格は安くても他に変えられない人もいます)。
しかしながら、一般的には、このような価格競争が始まると、原価ギリギリの底値まで下がるのが普通です。
会社としての生き残りは価格で勝負するか、特別な価値観を見出すしかありません。前者は会社発展時に価格競争に走り、破綻した昔のダイエーを想起させますね。
いずれにしても、まず利用者が何の為にPCR検査が必要か今一度、見直して冷静に考えることが必要ですね。
この記事は引用とは別に
金儲けのレシピ(著者:事業家bot)Amazon audibeleの内容を参考にしています。
引用:
1.にしたんクリニックHP
2.プレシジョン・システム・サイエンス株式会社
3.国境なき医師団声明
4.交通広告ナビ
5.医院開業時の標榜科目|医院開業のよくある質問|医院開業 クリニック開業 医師開業はFPサービス
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