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育休の振り返り(4)

さて,一応この記事が育休の振り返りの最後の記事となります。とはいっても,これは育休の経験それ自体を振り返るというよりも,育休を取った結果考えたことを書く,ということになろうかと思います。

過去の3つの記事はこちら。


名畑目さんの記事の中で引用されていたnote記事

私と同業者である名畑目さんの記事の中で,下記のnote記事が引用されていました。男性の育休について調べていて実際に読んだ,ということだけが書かれているので,名畑目さん自身はこの記事に対してなにか特に述べているわけではありませんが,私自身はこれを読んで色々考えたのでそのことをここに書いておこうと思いました。

私の中では,記事の中に書かれている内容について同意できる部分はあるものの,男性は仕事から降りれないから3日間のワンオペだという結論には同意できないなと思いました。

制度、理解、キャリアダウン・キャリア空白にならない仕組みと実績がないと、男性の育休取得率は女性の10分の1以下に止まり続けるでしょう。(女性約80%、男性約6%)

https://note.com/taishokugaku/n/nbff52c740339?sub_rt=share_sb

女性は育休を取らないという選択肢がほとんどない状況にずっと置かれています。つまり,有無を言わさず仕事から降ろされているわけです。そういう状況で,男は仕事降りるのは無理だよね,制度も整ってないし,文化も醸成されてないし,すぐには変わらないから,みたいには私はどうしても考えることができません。最初から諦めの態度だったら一生変わらないでしょう。私はそもそもそういう構造自体が問題だから,構造を変えるように働きかけるほうがよいと思っています。男性が育休を実際に取ることでしか周りの理解も生まれないし,そういう経験を経た人がいるからこそ次の世代の育休取得も促せるわけです(そういう経験を経ていなくても当然次の世代の育休取得は促せます。私の職場にはそういう方々が多くいるので私は育休が取れました)。私がこうしてnote記事を書いているのも,少しでも男性で育児休業を取る人が増えてほしい,迷っている人の背中を押したい,という思いからです。私に社会全体を変えるほどの力はないですが,自分の職場で男性が育休を取ることを推進していくことはできるでしょうし,同じ業界で男性の育休取得を取りたいと思っている人の相談に乗ったりすることはできると思っているので,そういうことがあれば自分は積極的に行動を起こしたいと思っています。

「育休で育児の大変さを学ぶ」ではない

もう一つは,育休を取るのは,「大変な思いを経験するため」ではないのでは?ということです。私が育休を経験して思ったことは,育休を二人でとって協力して家事・育児をすることによって,誰かが過度に大変な思いをしないようにすることが育休のメリットであるということです。よって,大変な思いを男性も味わえ,というスタンスで男性の育児参画を促すのって方向性として悪手なのではと思います。そしてもう一つ,それより大事なのは,二人で家事育児に臨むことによってできる時間的・精神的・肉体的な余裕でもって,子どもとたくさん触れ合うことだと思うのです。一人で全部やらないといけないのだとしたら,子どもと接するのは最低限のお世話だけにならざるを得ません。ずっと子どもに接していたら家事も仕事もできないからです。そこを二人でやることで,夫婦どちらも,純粋に子どもと遊ぶとか子どもと触れ合う時間を作ることができます。3日間の家事・育児ワンオペにプラスして仕事もする,という生活のなかで,どれだけ子どもと遊んだり触れ合ったりすることができるのか,そしてその時間を尊いものだと噛みしめることができるのだろうかと思います。

家族愛

育児が大変すぎて子どもが可愛いと思えるまでに時間がかかった(最初はそうは思えなかった)みたいなお母さん談を聞いたことがあります。それって,残念すぎるというか,そうじゃないほうが幸せなのでは?と私は思うのです(個人の感想ですけど)。私がもともとそういう性格(子どもが好き)だっただけなのかもしれませんが。男性にとってもそれは同じなのではないかとも思います。次節でも書きますが,フルタイムで働いていたら,そりゃやっぱりそこに上乗せで別のことにも全力投球するっていうのはそんなに簡単にできることじゃないし,それができないと子育てできない,みたいな風潮があったら,余計に子ども作りたいと思う人が減ってしまうんじゃないかなと。

余裕があっていいじゃん,というか,余裕があることが幸せなんじゃないか?とも思ったりするわけです。私がもし仕事しながらの育児をしていたとして,今と同じように子どもに愛情を注げていたかと言われたらあまり自信はないです。私は自分自身のキャパがそこまで広くないからです。今は本当に,ああ家族に対する"I love you"ってこういう気持ちなんだなってひしひし感じるんですよね。自分の家族(とくに両親や姉)にももちろん特別な感情があって,自分にとってとても大事な存在であることは間違いないです。それが"I love you"なのかって言われると,どうかな〜と思うわけですが,自分の息子に対する気持ちっていうのは,これは確信をもって,この気持ちは"I love you"だって思うのです。

仕事に復帰してみて

育休が7月に終わって,8月から仕事復帰しました。ただ,8月は学期中ではないので,基本的には家で仕事ができます。その中で,8月8日から3日間,神戸市外国語大学大学院で非常勤講師として集中講義を担当しました。授業時間は昼休憩と午後の10分休憩を含んで9時から17時半まででした。家を出るのは朝7時で帰宅は夜7時でした。こうなると,帰宅してお風呂に入れて寝かしつけをする,くらいしか育児には貢献できませんでした。そして,普通に毎日フルタイムで働いている人って,こういう感じで仕事するんだよな〜と思ったのです。2ヶ月半の育休を終えた私がこういう働き方をして思ったのは,「まじでなにもやってないな」でした。これが正直な感想です。「風呂入れて寝かしつけしただけで育児やった気になるなよ」という女性がいれば,そういう感情になる気持ちも理解できると思う一方で,「いやしかしやりたくてもできないよな」,とも思いました。と同時に,いま自分が持っているような,子どもに対する愛情というか,この大きくて深くてなんともいえないこの感情を抱くのはなかなか難しいなと思いました。育休をとらなければ愛情は生まれないと言っているのではありません,為念。繰り返しになりますが,余裕が大事,ということです。

おわりに

この記事では,男性の育休というのは,夫婦に余裕を作り出して,その余裕から生まれる気持ちを子どもに対して向けてあげるというそういう役割があるのではないかなということを書きました。全部で4本書いた育休についての話も一旦ここでおしまいです。子育てに関してなにか書きたいと思うことができたら,また記事を書くかもしれません。

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