シン・ダ・フリ

薄眼を開けてシン・ダ・フリ。 昔書いていた薄暗い短編小説を発掘して載せたり、新作を書い…

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薄眼を開けてシン・ダ・フリ。 昔書いていた薄暗い短編小説を発掘して載せたり、新作を書いたりするかもしれない。

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『月に吠えらんねえ』3~5巻の見どころ 第1回

 現在、漫画アプリ「パルシィ」で『月に吠えらんねえ』が5巻まで実質無料で公開されている(毎日最低8枚は供給される”チケット”で一話ずつ読める設定になっている)。10月27日までの予定。  過去にもkindleなどで2巻まで無料版が公開されたことはあるが、5巻まで実質無料というのは正直破格。  なので、3~5巻にある見どころ・読みどころを月に吠えらんねえ公式Twitterを引用しつつ紹介し、未読者あるいは最初のほうだけは読んだけど、そういえば続けては読んでなかったな……という

    • 『月に吠えらんねえ』3~5巻の見どころ・読みどころ 第3回

       漫画アプリ「パルシィ」で『月に吠えらんねえ』が5巻まで実質無料で公開されている(毎日最低8枚は供給される”チケット”で一話ずつ読める設定になっている)。10月27日までの予定。  本記事では5巻の見どころ・読みどころをアピールする。 5巻には見どころしかない 全体の物語が大きく動く巻なので、ストーリー上の見どころしかないので、どこを取り上げるか悩んでしまう、そんな巻。  擬人化モノとしては、詩人の作品概念の擬人化に加えて国家を擬人化した人物が登場して、日本の近代について語

      • 『月に吠えらんねえ』3~5巻の見どころ・読みどころ 第2回

         漫画アプリ「パルシィ」で『月に吠えらんねえ』が5巻まで実質無料で公開されている(毎日最低8枚は供給される”チケット”で一話ずつ読める設定になっている)。10月27日までの予定。  本記事では4巻の見どころ・読みどころをアピールする。 4巻のみどころ:第17話「あどけない話」チエコとコタロー 『月に吠えらんねえ』に登場する人物は基本的に詩人とその作品の印象から生まれた存在である。□街に住んでいるのは皆、詩人・歌人・俳人である。  しかし、少年の姿で登場する高村光太郎作品由来

        • 断片集【白骨】

           アルミサッシのレールの隙間に小さな白い骨を見つけた。  それは本当に小さな骨で、一筋の背骨に沿って細やかな肋骨が並んでいる様子から、辛うじてそれが動物の遺骨であることがわかるのだった。  思い出されるのは、去年の秋、風が冷たくなってきたあの頃。  どこから入ってきたのか知れない、小さな雨蛙が、そこで動きを止めたこと。  私は蛙の、あのヌメリとした、ヒヤリとした肌が苦手で(そう、心の底から)動かなくなった彼をどうすることも出来ず、ただ黙って見下ろしていただけだった(そして忘

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        『月に吠えらんねえ』3~5巻の見どころ 第1回

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          断片集【没頭】

           Rey Camoyの描いたある酔っぱらいの絵が、まるで首つりの様に見えることについて考えながら小雨降りしきる道を歩いていた。  彼の酔っぱらいの、俯いた顔と脱力した爪先、そして体の両脇に垂れた二本の腕。首に縄さえ描かれていないのに、その肉体は灰色の背景にだらりとぶら下がっている。  それは、とても理想的な首つりのイメージ。  ふと、顔を上げると男とすれ違うところだった。出くわすたびに私の過去を引っ掻いていく男だった。  しかし、私の心は首つりのイメージに優しく包まれていた

          断片集【没頭】

          断片集【私が墜落しない理由】

           例えば、視界いっぱいに広がる青空をぼんやり眺めながら、背中からダイヴする幻想を弄んでいる時。  私が墜死して、果たして彼はどんな反応を示すだろうか? などと考えていたら、もう駄目なのである。  純粋なる死の希求は一瞬にして濁り、絶対的な私の死は、ただの道具へと堕落する。  そう、運が良ければ、彼は少しは泣くかも知れない。  何日間かは、私の事を考え続けるかも知れない。  しかし、時が過ぎれば彼は日常へと復帰する。  そして私のことは二度と思い出さない。  たった一度きり

          断片集【私が墜落しない理由】

          断片集【私の前世】

           イヌイットの漁の記録ビデオを見ていたら、不意に私の前世が銛で突かれて死んだ大きな鮭であったことを思い出した。  画面の中の男は、銛の先で暴れる鮭のエラに、鯨の骨で作った刃を差し込んだ。私は酷く息苦しくなった。  陸に投げ出された鮭は、別の男の手で腹を切り開かれて内臓を出された。私は思わず腹を押さえた。  そしてイヌイットの男達は鮭を、その場で捌いて生で食べ始めた。私は、せめて醤油を、と思った。  その瞬間、私は私の前世が鮭であったことを忘れた。

          断片集【私の前世】