断片集【没頭】

 Rey Camoyの描いたある酔っぱらいの絵が、まるで首つりの様に見えることについて考えながら小雨降りしきる道を歩いていた。
 彼の酔っぱらいの、俯いた顔と脱力した爪先、そして体の両脇に垂れた二本の腕。首に縄さえ描かれていないのに、その肉体は灰色の背景にだらりとぶら下がっている。
 それは、とても理想的な首つりのイメージ。


 ふと、顔を上げると男とすれ違うところだった。出くわすたびに私の過去を引っ掻いていく男だった。
 しかし、私の心は首つりのイメージに優しく包まれていたので、何も傷つくことはなかった。

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