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古典を読む 〜世界一硬派なコワーキング

こんにちは。超まちづくり会社MoSAKUの柳澤です。
ワークテラス佐久を拠点に今年始めたことがいくつかあるのですが、今日はその中でも「Sakk Biblio(サックビブリオ)」という古典読書会について書こうと思います。

読書会をはじめる

今年の初め頃から「ワークテラス佐久で読書会やりたいなー」と思っていたのですが、どんな読書会にしようかなという部分で結構悩みました。

どんな人をターゲットにするのか。どんなテーマの本を読んでいくのか。どんな形式で読み進めるのか。集客はどうするのか。夜と土日は家庭のことをやりたいから平日昼間の開催になるが、集まらなかったらどうしよう。。。

など色々と悩んだ結果、、、
嫌になっちゃいました笑

で、佐久に来て学んだ大切なことに立ち戻りました。
「誰かのためではなく、自分の内なる声に従い、一回限りの人生で本当にやりたいことをやる。」という原点に戻って、たとえ一人も来なくても僕が読み進めたいから読みたい本を月に1冊ずつ読み進める、という企画になりました。1年で12冊、10年で120冊。30年で360冊。これなら、自分が死ぬまでに読みたい本を全部読めそうだ。

果たして、これはイベント企画と言えるのか。。。しかも開催は平日の午前中。一体、誰が来るのでしょうか。ま、誰も来なくても良いや笑
ということで始まりました。

全ての人のための読書会であり、誰のためでもない読書会。

「読んで生きるか、読まずに死ぬか」を合言葉に、Sakk Biblio(サックビブリオ)が始まります。

数時間どころか数分でフィードに埋もれて流れていってしまう記事が溢れている世界。1ヶ月前にスマホで読んだ記事で、今、何か心に残っているものはありますか?

数十年〜数千年、埋もれていない古典にはきっと理由があります。それはまるで絵画や楽譜のように、読む人、読む時、読む場所によって、何度でも違うものが浮かび上がってきます。一度きり、限りある人生の時間の少しを割いて、古典に向き合い、月に1冊ずつ読み進めてみませんか?

Sakk Biblio 告知文

この告知文は、ニーチェの「ツァラトゥストラはこういった」の副題「全ての人のための書であり、誰のためでもない書」からのインスピレーションです。
このツァラトゥストラの副題の謎かけの意味は、私もよく分からないのですが、冒頭の読書会を企画して悩んでいた時の僕と同じように、「全ての人のため」にやろうとするのであれば、逆に「誰のためでもない」=自分の内なる衝動に従うことをやるべき、ということ。二つは決して矛盾しないということなのではないかと、都合良く解釈しております。
ニーチェはそのためには超人を目指せ(なれないならその身を超人に捧げろ)と言っていて、そのあたりは昨年の記事にも少し関連することを書かせていただきました。

どんな本を読むか

ということで、選書についてもあまりテーマを固定せずに、私の内なる声に従って、本を読み終わった後、次に読みたい本をその都度チョイスして読み繋いでいっています。

今年は8回開催し、読んだ本はこんな感じの8冊になりました。この選書で、開催は平日の日中。良く毎回人が集まってくれるなーと思います笑

中には読み進めるのが大変な本もありますが、仲間と一緒に乗り越えてそれを共有する時間が、僕にとってかけがえのない大切な時間になっています。

なぜ古典を読むのか〜命をかけて世に問う書

辛くなったらすぐ辞めようと考えていた読書会ですが、8回やってみて、この古典読書会は、私のライフワークとして続けていくべきと確信しました。

名著というものは、書かれた時代の100年以上(プラトンの場合2000年以上。。。)先を行くような思想や発見が書かれています。そしてそこには、人類史がある限り通じるような、普遍的な真理が含まれています。

今でこそ言論の自由というものが認められていますが、その時代に時代を超えた思想を述べるというのは、命懸けの行為になることもしばしばあります。また、たとえ言論の自由があったとしても、世の中の空気を読まないとバッシングに遭う可能性もあります。

たとえば、ルソーの社会契約論(1762)は絶対王政下のフランスで書かれていますが、「封建制は最悪。主権は人々にあり、その自由を保障するために、国家を設立したと考えるべき」とか言っちゃっているわけです。発表後、即国外追放されます。

ソクラテスは、真の知を探求し、より善く生きるために、その思想の是非をプラトンを経由して後世に委ねます。そのために市民社会の裁きによる死刑を受け入れます。

みんな、命を懸けて世に問うています。血の通った本ですし、ある意味、血を流しながら書いた本です。ハッキリ申し上げて、私たちSNS時代の、スマホでポチッと共感イイね!をもらおうなどという生優しい世界、その延長上にある商業書籍とは、全く次元が異なるものだと、私は考えています。

思考の革命が生まれるエネルギーを味わう

ところで、考え方や思想を知るのであれば、なにも難しい古典をそのまま読むのではなく、「これ1冊でわかる!哲学の全て」みたいな解説本を読めば良いのでは、という方もいるかも知れません。私も大学時代はどちらかというと、思想の歴史や哲学者の人生や思考を俯瞰してまとめたような新書を読むのが好きでした。

しかし、そうした解説本を読むのは、例えるならばサッカーの試合の結果だけ見るようなもので、その思考のプロセスを全体として味合わなければ、そしてその思考が誕生した現場に向き合わなければ、その本質的なエネルギーが伝わらない、というのが私の実感です。

「ルソーは主権在民をベースにして、国家が社会契約により成立していると考えるべきことを説いた」という解説を読んでも、その本質的な思考やエネルギーは伝わってきません。絶対王政のルイ15世がいる中で、時代を代表する天才であるが故に気づいてしまった真理。それを後世に伝えたくて、死ぬ気で1冊書いた。天才でもない凡庸な我々は、それをまるまる読まなければ、やはりエネルギーを伴った本質的な思考を過去の偉人から受け取ることはできません。
小説はもちろんのこと、ロジックを積み重ねる本においても、そこには流れるエネルギーがあります。論理が通っているのは当たり前なのですが、決して論理だけではないのです。

同じ趣旨で、本の一部を分担して読んでいく輪読形式の読書会にも、僕はあまり興味がありません。死ぬ気で書いた本は、本一冊まるまるで、一つの生命のようになっている。それを全体として受け入れないと、やはり感じられないエネルギーがあるものがあると思っています。

キーストーンを探す

本なんて一人で読めば良いじゃないか、という考え方もありますし、僕もどちらかというとそう思っている人間でした。
しかし、読書会をやってみてわかったのは、古典を読んで対話をすることによって一人では気づけなかった色々な気づきがあったり、重要なテーマ(キーストーン)を発見できるということです。

たとえば第8回で読んだオルダス・ハクスリーの「すばらしい新世界」。この本は、西暦2540年のディストピア世界を描いた小説です。生まれる前から条件付けされ、家族も宗教も失った世界で幸せに暮らす「文明人」たち。。。

一人で読んだときは、1930年段階での未来想像としてはスゴイと思いつつ、正直、なんか小説としては面白みがなかったなーというのが感想でした。自分で選んでおきながらすみません笑

ところが、読書会で5人で話していたときに、対話の最後にハッとするすごくシンプルで重要なことが浮かび上がってきたんです。それは「自由と幸福は必ずしも両立しない」という一つの真理。そして「その酷い現実の前に僕らはどう選択をし、アクションをしていくのか」ということです。僕の場合、子供の教育も含めて重要な視点だと思いました。

ハクスリーのこの小説が現在にも読み継がれているのは、単に「2540年の世界をたくましい想像力で描写した」からでは決してない。「自由と幸福は必ずしも両立しない」という人類の普遍的なテーマを、科学技術の発展や倫理などを複雑に交えながら提示しているからなんだと、5人の対話の中で気づくことができました。

あ、対話といいますが、ほぼ雑談しているだけなんです。でも色々浮かび上がってくるの不思議だなー、と思っていたら、気がづきました。これは本をめぐる一つのコワーキングなんだと。

世界一硬派なコワーキング!

読み継がれている古典には、先に書いたような大切なテーマ提示、キーストーンがたくさん隠されています。そのキーストーンを探しに行くのが古典の醍醐味なわけですが、それを参加者のみんなの対話で行う。つまり、みんなでキーストーンを探しに行くのが古典読書会「Sakk Biblio」の真髄なのだと確信しました。

そして、参加者のこれまでの人生や知見、仕事・家庭のことで日頃感じていること。それが一つの本をめぐる対話の中でごちゃごちゃと合わさって、キーストーンに近づいていく。これは世界一硬派なコワーキングなんだ!ということにも気づきました。

さらに面白いのは、またいつか読み直したら別のキーストーンを見つけられるだろうということです。読む時、読む人、読む場所によって。
だから一度読んだ本を再読する会も、いつかやってみたいと思っています。

ちなみに、キーストーン。見つからないこともあります笑。
難しい本、頑張って読んだのに。。。チーン。

ということで、ここまで読んでくれたみなさんの力を必要としているかもしれません!一緒にキーストーンを探す旅に出ましょう。

みなさん、新年の抱負はきまりましたか?来年2023年も毎月1冊ずつ読み続けていきます。いつでもご参加お待ちしています。
【次回はコチラです!】
https://fb.me/e/5946Tlrt0

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